第249話「おぅふ……」





 第二百四十九話『おぅふ……』





「うなーっ!!」



 魔界産ハイブリッド巨大甲蟲をイズアルナーギ様にお渡しした時の第一声がこれだった。


 イズアルナーギ様は非常に興奮したご様子で、俺の頭の上に転移して『んっ!! んんっ!!』と大喜びでポコポコ叩かれた。死ぬかと思った。


 この甲蟲のお名前は? と聞かれたが、新種なので名が御座いませんと伝え、イズアルナーギ様が命名して下さいと言うと、『んまーっ!!』と仰りながら頭をポコポコ叩かれた。死ぬかと思った。


 ご機嫌なイズアルナーギ様は大森林の上空に顕現し、『んっ!!』と仰って俺の眷属に加護を授けて下さった。興奮した状態の不可触神が力加減を考えずに下界へ顕現したので、大森林が異界化した。死ぬかと思った。


 イズアルナーギ様は大森林上空に顕現したまま右手で天を指差し、『んっ』と仰せになり超巨大航宙要塞母艦『です☆すた』をカンダハルの遥か上空に転移させた。何か重力のバランスが狂った気がした。死ぬかと思った。


 大気圏外で静止衛星のように大森林を見下ろす『です☆すた』に、イズアルナーギ様は『ん~、んゅ?』と仰って魔改造を施して下さった。その時お使いになられた権能で、大森林は尋常ならざる神気嵐に襲われた。死ぬかと思った。


 イズアルナーギ様は『んっ(キリッ)』と俺に頷いてお帰り遊ばした。死ぬかと思った。


 俺の眷属達は荒ぶる不可触神に恐れおののき、イズアルナーギ様を熱心にまつった。イズアルナーギ様の神格が上がった。死ぬかと思った。


 イザーク教大神殿の建立こんりゅうが迅速に進められた。イザーク教徒も増え、オルダーナ経由でイザーク教の神官も多く派遣してもらった。


 その際、イズアルナーギ様の御母堂(改造第一号)も参られた。死ぬかと思った。


 ついでに、イズアルナーギ様の第一妃様にもお会いした。


 なんと、お妃様はユースアネイジア大陸出身の吸血鬼だった。って言うか魔皇帝のお母様だった。カッコいい女性だった、カスガに似た雰囲気で好感を持ったら軽勃起をきたした。トモエが軽勃起に気付いていた。死んだ。



『慌ただしい一週間でしたね』



 そうだな、最終日の夜が一番キツかったな。トモエの『三イク年』と言う意味不明なセックス期間が一番キツかったな。時間にして三年分の絶頂を賠償させられるのはキツかったな。



『あの子のヤキモチは可愛いですね、【貫壊】さえなければ』



 絶頂の時に【貫壊】が発動する事が有るので少し怖いです。


 蟲腹でヤる時に【貫壊】が乗った針が飛び出たらと思うと……



『針を出す穴は別ですので【先端から串刺し】にはなりませんよ?』



 それはそれで怖いんですが?

 内から貫かれるか外から貫かれるかの違い的な?



『うふふ、冗談です。蟲腹に挿入中は針が出ないようになっていますので、安心して可愛がってあげて下さい』



 それは半年前に聞きたかったかな……



『あら御免なさい、以後気を付けます。さて、『です☆すた』のダンジョン化が完了しましたね、指令室コアルームに参りましょうか』



 はいよー。


 俺は『です☆すた』の中心地区に建てられたアートマン大神殿でのお祈りとダンジョン化作業を切り上げ、お母ちゃんの神像に一礼して指令室に転移した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




『です☆すた』はデカい、クソデカい。


 ただでさえデカいのに、イズアルナーギ様の権能で空間拡張された艦内が広すぎて困る。


 ダンジョン化したので更なる拡張も可能。

 実質無限の空間を持つ宇宙要塞。ワケが解らない。


 譲って貰えたのは嬉しいが、これと言って使い道が無い。


 魔界トンネルから放出される瘴気と、俺や嫁さんズから漏れる神気が外に漏れないのは利点だな。悪神や悪魔達にとっては心地良い環境だし、生粋の悪神が顕現するのもリスクが少ない。


 しばらくは大魔王さんが言う『真なるエデン』の軍用版として使ってもらうのもいいな。


 そんな事を考えながら、指令室に置かれたゴリラ専用椅子に腰掛け、巨大な神気マルチディスプレイに映る青い惑星を眺める。


 綺麗ですねぇ。


 サタナエルとヘル以外の嫁さんズは全員連れて来たし、子供達も連れて来た。皆はキャッキャ言いながら大森林が在る青い星を見ている。


 平和だなぁ~。



『ラージャ、面白い物を発見しました』


「ん~、何だ?」


『恐らく偵察衛星です』


「ほぅ……そいつぁまた、で、幾つ有った?」


『ここから確認出来たのは四つですね。撃ち落としますか?』


鹵獲ろかくしろ。どうせ二皇か四帝の持ちモンだろ」


『畏まりま――』



≪プルピエル、サイコメンタルMk弐、出るっ!!≫



 おぅふ……



『プルピエルが出撃、プルピー親衛隊【アクメズ】の十四名が【ザコⅢ改】での出撃許可を求めています』


「行って良し」


『アクメズ出撃、プルピエルが【サイコ5】を展開』


「サイコ5とは……」


『あの子の姉妹が入った瘴気砲搭載機です』


「そう……」


『目標2並びに3がサイコメンタルMk弐へミサイル攻撃、サイコ5が迎撃、破壊に成功……目標1と目標4から小型戦闘機と思しき機体が七機ずつ出撃、アクメズと交戦状態に入りました』


「マルチディスプレイに映してクレメンス」



 マルチ大画面に映し出される多角的な戦闘映像。


 うむむ、大迫力ですっ!!


 おや、あの小型戦闘機、地球産がモデルじゃねぇな……


 偵察衛星や宇宙を飛ぶ戦闘機の知恵はどこで手に入れた?

 二皇四帝に付いた悪神の故郷が知識の基かな?


 イズアルナーギ様はコレ知ってたっぽい?

 宇宙戦艦やら何やら大量に造ってるらしいが……


 いや、二皇四帝如きの為に用意はせんな。

 宇宙艦隊はイズアルナーギ様の趣味だろう。


 つまり、未来兵器での戦いを経験する事も世界さんの意志か?



『プルピエルが目標3と4を鹵獲。アクメズは敵を殲滅、目標1と2の鹵獲へ向かいます』


「お疲れさん。プルピーは帰還後指令室へ。ゲンコツだ」


≪えぇ~、そんなぁ~≫


「まったく、困った妹だぜ」




 やれやれ、面白くなって参りましたーーっ!!


 あ、『です☆すた』のコアっ子は誰にしようかな?

 居ないかな? 居ないな? 居ないか~。


 あ、もしもしオマン? 今から行くから。

 え、お化粧? 分かった待つよ。

 今日はいつもより激しくして良いかな?


 凄い罵詈雑言だね、怒ったぞ~!!

 え、早く来い? 行く行く。




『何でしょうか、この不倫された感』








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