第239話「トロフィーはゴリラです」





 第二百三十九話『トロフィーはゴリラです』





 四月七日、朝、大森林は快晴。


 そう言えば、俺がこの世界で生まれて初めて迎える春だ。


 特に感慨深いと言う事は無いが、興味深い事象は有る。


 急激に増える魔族の婚活やセクロスだ。


 正確に言うと、重めの発情期だな。

 男女共にフェチモンの分泌量が増加する。


 獣人も同じようだが、獣系魔族や蟲系魔族は分泌量が桁違い。


 そうなりますと、まぁ、イケてるゴリラはもうアレですわ、えらい事ですわ。


 北方問題が片付いた辺りから侍女や厠番の目付きがヤバい。


 普段は嫁さんズに遠慮して我慢しているようだが、仕事上どうしても俺と肌を合わせる必要がある場合は、怒涛の攻めを見せる。


 厠番に至ってはもう『え、そこに出すの?』と、エロ魔神の俺が真顔で聞いてしまうほど攻めて来る。


 今朝けさのトイレでは思わず『朝シャンかな?』と呟いてしまった。何故頭から浴びる必要があったのか、理解に苦しむ。


 こんな感じで、俺のフェチモンはいつも以上に垂れ流しだ。


 そして、俺の息子や娘も尋常ではない量のフェチモンを放出する。なるほどイモ息子がモテるのも頷ける。



『あの子はそれ以前の問題かと』



 うむ、僕もそう思う、知ってた。

 成長したら蟲系の魔族をゴッソリ魅了しそうな気がする。


 それはさて置き。


 コア息子とコア娘も同じ状況なのが不思議だ。

 獣っぽさも蟲っぽさも無いが、フェチモン分泌量は多い。


 ジャキやタローマティのように複数のコアっ子と結婚した奴らは、業務に支障をきたすほどズコバコやってるらしい。


 とは言っても、コアっ子がダンジョン運営を完璧にこなしているので、内政や軍務などに影響は無い。


 問題は風紀の乱れ、と言いたいところだが、ヴェーダの監視が有るので注意するほどではない。むしろエロスの力でDPがガンガン増えるので、ヴェーダ的には乱れた性活を推奨しているようだ。


 問題が有れば強制的にめさせる事も出来るしな、俺もそれほど問題にしていない。


 結婚した子供達は俺と違って賢い、自制も利く。


 例えば、昨晩オマンが産んだ女の子『オメ子』ちゃんなんか非常に優秀。オルダーナもお気に入りだ。


 俺はそんなオメ子ちゃんを六歳児くらいまで成長させ、イモ息子の嫁として隣に置いた。兄妹なので仲良し。


 オメ子ちゃんはイモ息子に群がる蟲系少女達を瞬時に纏め上げると、神木の真下に造られた洞窟をダンジョン化して、少女達をそこに移住させた。かなりの敏腕である。


 え~、このように、子供達は何の問題も無い、俺がダンジョン運営に関わらない方が良い説まで有る。


 そう、問題はアホな俺だ。


 常に強烈なフェチモンを垂れ流す。無駄にペニスが硬い。エロに対する自制が利かない。嫁さんズが俺より強いので犯される。桃色不思議空間が夫婦の時間を半永久的に生み出す等々……


 そんな状態で迎えた春の発情祭り。


 発情祭りに参加していないのは俺だけっっ!!

 異性から溢れ出すフェチモンの香りが分からないっっ!!


 ついでに自分のフェチモンがどれだけ強力か理解出来ないっっ!!


 そんな未熟者だからっっ!!

 春を迎えた異性の突飛な行動を予測出来ないっっ!!


 上空からの急降下M字開脚ドッキングなんてっ!!

 俺には回避出来るわけがないんだよぉっっ!!



「にぱー、良い子を、産みますねぇ~」


「あ、ハイ、お願いします?」


「チュッ、スゴかったですぅ~、ではまたぁ~」


「あ、うん、またね?」



 妖鳥女王ハーピークイーンの『ティティ・テヅカ=トリイ』は、急降下強襲セックスを終えると、俺の右頬に優しく口付けをして、神木の巣へ帰って行った。


 彼女に会ったのはこれで三回目だったか?


 妖鳥族は魔竜の件で酷い仕打ちを受けていたので、男の俺はなるべく接触しないようにしていた。


 久しぶりに見た女王は……何だろう、黒い天使みたいになってた。


 腕が生えてた。脚は以前のまま鳥の形状だが、翼は背中に移動していた。あれも悪魔化した影響だろうか?



『そうですね、一番の要因は悪魔化によって【甘さ】が消えた事でしょうか。各地を飛び回って人間狩りにはげんでいましたし、牧場の人間も容赦無く殺していました。養殖での訓練も積極的に参加した結果、急速に進化したようです』



 あぁ、なるほど。


 って事は何、巣の中は人間の男が沢山飼われてる感じ?



『いいえ、ラージャの眷属は悪魔を含めて存在の【格】が人間や獣人を上回っていますので、わざわざ劣等種のオスから子種を貰う必要はありません。その辺を歩いている男性眷属に子種を貰ったり、そのままつがいとなって卵を産む場合もあるようです』



 はぇ~、そうだったのか……


 大森林の哀愁乙女ビ・アンカが甘さを捨てた、ねぇ……


 それは良い事かもしれんが、何だか寂しいな。


 救いが有るとすれば……


 腕が生えても、衣服を着ないその素敵文化が残っている事、だな!!


 やっぱりチューブトップはらんかったんや!!


 はっ!!


 ラ、ラミアはどうなんですかっ!!

 全裸の急先鋒ラミアのお姉さん達はどうなったんですかっ!?



『ラージャの子種が欲しかったようですが、いつまで経っても夜伽よとぎを命じられないと言って、全員が吉原ダンジョンに就職しましたよ。悪魔達に大人気だそうです』



 なん、だと……っっ!!


 族長の『クワェル・デ=ティンプォ』お姉さんもかっ!?



『ええ、淋しそうに『吉原へ参ります』と私の神像へ報告しに来ました。先日、悪魔男爵に見初められて魔界へ嫁いだそうです』



 何と言う、何と言う変化球的ネトラレ感っ!!


 ロキさんはこれで絶頂出来ると言うのかっ!?

 フェンリル兄やんはこれで賢者に至れると言うのかっ!?


 ファールバウティの血族はどこまで業が深いんだっ!?



『その業が深い血族がスーレイヤ東部を完全制圧したようです。ロキは魔界に戻りましたが、フェンリルが北方長城の真神マカミに十九度目の結婚申し込みに行きました。真神がラージャを呼んでいます、向かいますか?』



 クッ、それは兄やんの性的嗜好スパイスになるだけじゃん……


 お姉様もそれが分かってて俺を呼んでいるのかっ……!?



『真神も発情期を迎えているようです。ラージャが来ぬならばフェンリルと致す、と言っています』



 それを早く言いなさい。


 俺は光の速さで転移した。


 ヤらせん、ヤらせはせんよ兄やんっ!!





『ふむ、なるほど……嫉妬はしてくれるようです。宜しいですね王妃達、ツンは軽く甘えは強く、軽くらしてデレは迅速、です。オマン国際女子大戦、負けられませんよ』








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