第218話「僕のお姉ちゃんになってよ!!」
第二百十八話『僕のお姉ちゃんになってよ!!』
二月七日、昼前、大森林は晴れ。
現在のゴリラは、神木の木陰でメチャとラヴの魔術訓練を見ながら寝転んでいます。
平和で結構ですなぁ。
ものすごく眠いです。
国の運営はカスガとアカギがやってくれるし、私は戦争以外で役に立ちません。
他の事も、眷属が優秀なのでやる事がねっス。
ふぁぁ~、眠い。
スーレイヤ王国への侵攻から一週間と二日、スーレイヤの西側はゴッソリ奪ったぜ。国土の三割は行ったんじゃないかな?
『そうですね、ヨルムンガンドが造ったスーレイヤ縦断渓谷を合わせれば、二割八分と言ったところでしょうか。渓谷のガンダーラ側に妖蟻が造った長城も完成しますし、スーレイヤは
ふむふむ、順調やな!!
『スーレイヤの勇者も六人処刑、ダンジョンは二つ確保、魔窟は七つ、素晴らしい戦果です』
勇者なぁ、まぁ、攻めて来たのが弱い奴らだったようだし、毎回の勇者逐次投入は呆れた、各個撃破を推奨されたようなもんだ。
勇者同士の連携が出来ねぇってのは本当らしい。
ダンジョンは眷属の猛攻であっという間に陥落するし、魔窟はサブとして合併を申し込んで来るし、俺がやった事ってダンジョンコアを二個喰っただけだぜ!!
それに、西は西で創造悪魔の『ゾロアスターシリーズ』が暴れてるからな、アン・スラクース王国も東側の国境が大惨事だ。
『ラージャが『暴れて来い』なんて言うから……』
いやぁ、だってさぁ、長城太守のセックス大好きアエーシュマも、丘陵街のドゥルジも、吉原のジャヒーも、港湾都市のタローマティも、みんなヒマだって言うからよぅ……
ついでに、三頭竜『アジ・ダハーカ』と、三大
ゾロアスターの悪神は親玉の『アンラ・マンユ』以外コンプリートしてやったぜ!!
『はぁ……妖蟻の地下道は本当に優秀ですね、瘴気供給がスムーズすぎて変な笑いが出ます』
だなぁ、悪魔軍団が暴れられるのは彼女達のお蔭だよ、マジで。
アン・スラクース王国の獣人共も、地面からクッソでけぇ三頭竜が出てきたらビックリしただろうなぁ。
『驚く間も無く食い散らかされていましたが』
あはは。それは可哀そうになぁ。
それで、アン・スラクースの勇者はまだ来ねぇか?
『以前、どこかのゴリラさんが勇者の一人を威圧で殺しましたからね、死因は掴めていないようですが、アン・スラクースの獣人王が慎重になっています』
ど、どこのゴリラだ、まったく……
きっと心優しいナイスガイに決まっているがっ!!
『しかし、これでガンダーラの東西は牽制出来ました。残るは……』
「北だな」
『北の長城に北方魔族の一団が向かっているようです』
「あそこの正式な太守は決めてねぇんだけど……出迎えとか要る?」
『太守は置く必要が有りますが、出迎えは不要、相手の目的が分かっていませんからね。恐らく偵察や不可侵協定の協議、ついでに商業目的の使節かと思われますが……』
「蟲の監視ではどんな感じだ?」
『……クソ生意気、ですね』
「そいつぁまた……」
楽しくなってきましたねぇ!!
とりあえず、太守を決めて、向こうの出方を見てみっか。
太守は創造召喚で創ろうかな……
『あぁ、それなら、イズアルナーギが日本の滅びゆく国津神を一柱、こちらで引き取らないかと言っていますので、ソレでどうでしょう?』
国津神?
土着の神様だっけ?
でも神気が……
『アレは瘴気で十分かと。こちらで信仰させれば復活も早まるでしょう』
瘴気でイケちゃう神様かぁ~……
ミシャグジ様とかじゃないよね?
呪いが怖いですねぇ……
『違います、元は子孫繁栄の神だったようですが、自身を
うわぁ、そりゃ気の毒だな。
よっしゃ、じゃぁその神様を迎えに行くか。
お母ちゃん所に連れて来てもらって。
『畏まりました。祟りはアートマンに
子孫繁栄……子沢山の神様?
う~ん、居たっけ……?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
はい、お客様をマハルシの大神殿にお連れしました!!
「ほっほっほ、なるほど、
「あ、そっすか、えへへ、もっと嗅ぎます? なんつって!!」
僕の眼前には、
結い上げた黒髪、キラキラ輝く髪飾り、赤と黒が鮮やかな振袖、真っ赤な口紅と赤いアイシャドー、乱れた裾から見える白い美脚……お綺麗です!!
まぁ、一番の特徴は、頭にピョコンと生えたケモミミと、フサフサの尻尾でしょうか。
はい、
普通に神社とか残ってると思うんですけど……何故、こんなに弱ってしまったのでしょうか?
『信仰の減少が一番の要因ですが、やはり、次々と破壊される
なるほどなー……
でもそれって、人間を
……うむ、優しい神様だな。僕は好きです。
『彼女が暴れてしまえば、子孫繁栄を自ら破棄する事になりかねませんから』
うんうん、神とはまさに
さて、ところでヴェーダ……質問です。
『お聞きしましょう』
真神様の隣でカチンコチンになって、俺に目で何かを訴え掛けている銀髪の全裸狼男は誰だろうか?
まぁ察しは付くが……
『フェンリルですね』
なるほど……
何で居るんですかね……?
何でカチンコチンなんでしょうか?
『真神に一目惚れしたから、ですね』
なるほど……
何で俺に熱い視線で訴え掛けているんですかね?
『恋のキューピッド役に選ばれたようです。お付き合いを申し込みたい的な感じでしょうか、興味深いですね、初々しい』
なるほど……中学生かな?
スッゲェ面倒臭ぇんだけど……
自分で言えって言う……
あ、しまった、面倒臭そうな顔が兄やんにバレた。
物凄く悲壮な顔をしていらっしゃる……
しょうがねぇなぁ……
僕は真剣な顔を作って真神様を見つめます。
真神様がニコッと笑いました。破壊力がパねぇ……
「あのぉ~、真神様、僕の
『イキナリですねぇ……』
「ふむ、
「いやぁ、僕みたいなゴリラに真神様の旦那なんて、とてもとても。僕ではなくですね、そこの、フェンリル兄やんがですね、真神様に一目惚れしたみたいで……」
真神様が視線をフェンリル兄やんに向けました。
氷のような視線です、一部の紳士諸君が昇天しそうな視線です。
「ふむ、ロキの長男坊か……」
「あ、こ、あ、コンニチワ……」
ウソだろ……
あのカッコいい兄やんが……
クッソだせぇキョド兄やんになってる……
あぁぁ、真神様が軽く首を横に振ったーーっ!!
印象が悪かったご様子ぅぅ!!
「義弟に口添えを頼む軟弱者など
「ッッ!!!! ウッグゥゥ!! ま、また来る……」
ボフンと巨狼に変身した兄やんは、スッとどこかへ消えた……
しかし、『帰って出直せ』って事は、終わりじゃないって事だな。
今後の頑張り次第だぜ、兄やん!!
クスリと笑った真神様が、俺に視線を合わせて肩を竦めた。
ちょっとお茶目さんなお姉さんですね、すこ。
「さて未来の義弟殿、話を聞こうか」
「あはは、兄やんが居る時に言って下さいよそれ」
うん、この神様いいわ~、好いお姉ちゃんになりそうだ。
ではでは、太守就任の話と今後の話をしましょうかねぇ。
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