閑話其の八「僕はバトラー、ヨツンバイン」前編







 閑話其の八『僕はバトラー、ヨツンバイン』前編





【スーレイヤ王国・中部国境の街『ヲーアンサンブル』にて】




「俺の名をブヒってみろぉぉ……」


「な、何言ってんだコノ野郎っ!!」



 しまった、一番カッコイイとこでブヒってしまったぜ。


 このジャキ様とあろう者が、久しぶりの名乗りで浣腸して、違う、緊張してしまったんだぜ。


 舎弟どもが俺から視線を外している……良い判断だ。


 もう一回言っても良い、そんな雰囲気を感じるぜっ!!



「ブヒの名を言ってみろぉぉ……」


「ちっ、狂ってやがる……っ!!」



 しまった、ブヒらないように意識しすぎちまったぜ。

 舎弟どもが体を小刻みに震えさせてやがる……なの。


 さすがに恥ずかしいなの……

 この人間の所為せいなの……


 ゲンコツ喰らわせてやるなのっ!!



「お馬鹿は消毒なのぉ!! 南都無情メガトン拳骨っ!!」


「っ速っクッ……?? あ、あんまり、痛く、ない……?」


「お前は既に、死んでいる、なの」


「?? お前さっきから何を……プペッ」



 お馬鹿さんの頭が『ボンッ』と弾けたなの。

 汚ぇ花火なの……フフフ。



「ブロンソン=ホクト閣下、街の制圧が完了致しました……正気にお戻り下さいませ」



 はっ!? 俺様はいったい何を……


 おや? 俺の足元に汚物?……

 何故か頭が破裂して死んだ男人間のしかばね?……


 なるほど、ついに俺のコブシは時を超える速さまで到達した、そう言う事かっ!!


 どおりで、ぶん殴った記憶が無ぇわけだズェ!!


 俺を心配そうに見つめるのは、兄貴が俺にけてくれた創造召喚悪魔サキュバス、副官の『ペニバン』だ。


 優秀なナオンで言う事無しだが、少しばかりエロが過ぎて股間に優しくない。


 その美貌は勿論の事、長身を包み込む桃色ロングヘアー、セクシーな血管の浮いた蝙蝠の羽、常に潤んだ真っ赤な瞳、母乳のように白い肌と巨神様みてぇな爆乳、コイツの全てが俺を狂わせる。


 アンダーヘアも桃色なのか、気になって十時間しか寝られない。


 セックス禁止令が無けりゃぁ、一発ヤらせて欲しいところだ。



『その悪魔とならば許可しましょう、病気には縁の無い種族です』



 ねねねね姐さんっ!!

 そ、それは、マジで?

 ヤっちゃうヨ、俺ヤっちゃうヨ?



『そちらにスーレイヤの勇者一行が向かっています、討伐後にヤりなさい』



 ブッヒー!!

 任せてクレメンス!!



「あの、閣下?」

「どうした桃色セクシー美女、今日もセクシーだな?」


「それはどうも、恐れ入ります。制圧が済みましたので、次の指示を」


「捕縛したメスはなるべく丁重に地下道で後方に送れ。オスは手足の骨へし折って後方に送れ、生意気なのは殺せ」


「畏まりました。ブロンソン=ホクト閣下は――」



 俺はペニバンの右巨乳に左手を突き出し、その言葉を遮った。


 偶然を装ってのボインタッチ、ペニバンは無表情だ、勃起するぜ。


 しかし……ふぅ。

 と、とんでもねぇ『ヤワみ』だぜ……



「待ちなペニバン、今日から俺は『ジャキ・ハラテツヲ=ナント』だ。ナント閣下と呼べ。ジャキ様でもいいぜモミモミ」


「それはご無礼を。それではナント閣下、閣下はどうなされますか?」


「もうすぐココにスーレイヤの勇者が来るみてぇだモミモミ」


「然様で。囲みますか?」


「姉さんが特に注意しなかったって事は、俺一人でもれるって事だ。まぁ、逃げられねぇように囲むのはアリだなモミモミ」


「では悪魔で包囲させます。妖蟻は退かせましょう」


「うむ……ところでペニバン、この戦いが終わったら、ヤらないか?」


「開脚して凱旋をお待ちしておきます」



 無表情のペニバンが、少しだけ微笑んだ。


 あれ、あれれ、胸が痛ぇ……

 キュンキュンしゅるなの……


 僕、キュン死しゅるなの……?



 た、たしゅけて……


 膝を突いて苦しむ僕に駆け寄るペニバン……


 彼女は僕をそっと抱き寄せ、股間に手を伸ばす。


 な、何でそこを上下にスコるなの……?




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ふぅ、もう少しでキュン死するところだったぜ!!


 ペニバンが『ギュッ』って掴んでくれなかったら、戦闘中にオルガズム案件だった可能性が無きにしも非ず。


 しかし参ったな……

 俺にはメチャって言う嫁候補が……



『は?』



 ……居た、と言う妄想の中で生きてきたので、少し困ってしまうぜ(震え)


 ま、まぁそれはさておき……


 最近、JLG48のスケどもは夜遊びが多いんだよなぁ……


 やけに悪魔のインキュバスと仲が良いし……

 今回の侵攻もそいつらと隊伍を組む感じだし……



『現実を見なさい、それでも帝王の義弟ですかっ!!』



 クッ、分かってる、分かっていたさ!!

 セックス禁止令の辺りから分かっていたさ!!


 彼女達はヤリマンだ、イかせてくれねぇ豚はただの豚、そう言う事だろっ!!


 今はただ、俺と兄貴と氏族への義理で傍に居てくれる。


 それだけだって、分かっていたさ……


 寝取られは大森林のつね、これも鉄の掟。


 だったら奪い返せばいい、それもまた大森林の常。

 しかし、そんな事は何の解決にもならねぇ……


 この戦いが終わったら、アイツらに別れを告げよう。


 今まで有り難うって、そう言うんだ。



『宜しい、それでこそ帝王の義弟。あとはラージャに任せなさい、ペニバンに勝るとも劣らぬ花嫁を見つけてくれるでしょう』



 ふぁっ!? ふぁ~、お、お嫁さん?

 あのお姉ちゃんも、僕のお嫁さんなの?



『貴方が望むなら、彼女は拒否しませんよ』



 ふぁ~、ののの望みマックス!!

 僕はペニバンお姉ちゃんを望みマックス!!



『勇者を討ち滅ぼし、堂々と自分でペニバンに伝えなさい』



 わわわわ解りましゅた!!


 ぼぼぼ僕っ、ちょっと勇者をぶっ殺して来りゅ!!


 ドタドタ走って勇者を見つけます!!

 姐さんがナビしてくれたので、簡単に見つけました!!



「ん、あれは猪人、か?」

「黒い猪人、新種でしょうか?」

「おいリュート、鑑定結果は?」


「……弾かれた、今度の獲物は手強てごわそうだ」



 ん~、何かムカつくなの!!

 早く殺したいなぁ~!!





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