第194話「全力で?(絶句)」
第百九十四話『全力で?(絶句)』
北伐成功はガンダーラの民が待ち望んでいた事だ。
ホッとした事だろう、とても喜んでくれた。
魔竜の亡骸は皇城前の広場に晒された後、解体してバーベキュー祭りが始まる。
ガンダーラは肉食を好む魔族が少ない。初めは肉好きしか居なかったが、妖蜂と妖蟻、エルフに悪魔等々、肉は食わない種族や進んで口に運ばない種族が増えたので、相対的に肉食系が少数派となった。
クソデカい魔竜肉のバーベキューと言っても、二百万を超えた国民に行き渡るほどの量は無い。今もダンジョン街から悪魔達がアホほど転移して来る。
さてどうしようかと悩んでいると、非肉食魔族が肉を辞退してくれた。
もともと浅部魔族の戦いだったのだから、今回北伐に向かった者と浅部魔族の肉好きが食べるべきだ、そう言ってくれたので、お言葉に甘える。優しい彼らにはお菓子をあげよう。
しっかし、なんだか最近は頻繁に祭りを開催しているような気がする。
『そう思っているのはラージャだけですよ』
え、何で?
『キノコ狩りや目隠しゴリ騎乗を祭りだと思っていらっしゃるから、なのでは?』
あ、ハイそうですね。
ゴメンナサイ……
ふぅ、危ない危ない。うっかり声に出して「祭り多すぎワロタ」とか言うところだったぜっ!! 「何言ってんだこの猿?」って思われるところだったぜっ!!
悪魔軍団による解体は一時間もせずスムーズに終わった。肉を
解体した魔竜の心臓付近から直径10㎝程の黒い魔核が取れた。
巨体に対して魔核が小さいが、一般的な魔核は親指の先程度しかないので、実際は異常なデカさだ。色を見ればわかるが、赤さは微塵も感じられない黒、魔素純度の高い魔核です。
これはアートマン様に捧げようかなと考えていると、ヴェーダが『お召し上がり下さい』と言ってきた。
アートマン様は毎日捧げられる民衆の祈りや供物で十分満足しているので、魔核はもう要らないそうだ。気持ちだけ受け取ると仰られて五回チンサスして下さった。
有~り難う~御座いまぁ~すっ!!
戦勝祭を始める前に、悪魔の侍女や侍従が飛び回って酒や果実水を配る。配り終えたら、俺が短く挨拶。長いのは面倒だっ!!
乾杯して戦勝祭が始まる。
最初に俺が魔竜の魔核を美味しく頂いた。
クッフゥ~……こいつぁキくぜぇっ!!
チンコびんびん物語の始まりだぁっ!!
そうはならんやろ……
何で俺は国民の前で勃起をっ!?
先走り汁まで垂らしてホンマにもぅ……
『赤カブトゥの魔核を食べた時と同じですが? まさか忘れて……』
いやいや、ジョークだ、ゴリラ渾身の勃起ジョーク……
見ろ、国民に大ウケではないか(白目)
俺の失態を見兼ねたメチャがハンカチを取り出し、怒張する小魔王の先走り汁を素早く拭き取りトイレに向かう。何故、トイレに向かうのかは聞かない、それが好い男の条件、だっ!!
メチャの動きを見ていたラヴが、何やらピコーンと
何をするんだと小首を傾げたその時っ!!
一拝、二拝、三拝、四拝、五拝……ッッ!!!!
パックン。
んっほぉぉぉっぉ!!!!
頬をパンパンに膨らませ白因子を口から垂らすラヴが、満面の笑みで一礼し、トイレに向かった。
これが、後世に伝わる【五拝一発一礼】の儀っ!!
ガンダーラ帝王に女性魔族が捧げる最上級の礼拝である。
『ではそのように布告しますね』
いや冗談なんだけど……
『布告しました、女性と一部の男性は大喜びです』
そ、そうか……
え? 一部の男性?
だだだ誰だよそれ……
困惑する俺の眼前に、素敵な笑顔のエルフ少年、アーベが両膝を突いて礼拝を待っていた。
う~ん、これアウトですわ……
『また可笑しな事を、同じ十代の眷属に陰茎を掴まれたから何だと言うのですか』
お?
そう言われてみれば……
え、これセーフなの?
『高校の修学旅行で「ワレちんこデカいのぉ」と言って他人の陰茎を掴んだ帝王はどこへ行ってしまわれたのか……一抹の寂しさを覚えます』
クッ、同世代のアーベに対して、俺は壁を造っていたのかっ!!
スマンなアーベ、さぁ来い、ガチっと頼むぜっ!!
んっほぉぉぉぉぉっ!!
何でそんなに上手なのぉぉっ!!
最後の一礼を終えたアーベも、足早に女子トイレへ向かった。
誰も、彼の行き先を咎めない。うむっ!!
もう性別は『アーベ』でいいんじゃないかな。
男、アーベ、女の三つでいいよ。むしろ自然だ。
『ラージャ、次の礼拝が控えております』
うん……
その前に……
肉、喰おうぜ?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
祭りも終わり、ホンマーニとイケナイ風呂遊びをした後、俺は神木の前で座禅を組み瞑想している。メチャとラヴも一緒に瞑想中。
二十分は経過したな……
うむっ、瞑想に飽きてきました。
そうだ、祭りの事でも考えようっ!!
いや~、今日の祭りも盛り上がったなっ!!
『礼拝が一番盛り上がりました』
それはもういいじゃないか……
あれでは駄目だな、『祭りは情事』が通常になってしまう。
大神殿での礼拝とか、謁見時の特例とかにしようぜっ!!
『謁見を望む声が大量に送られてきますね、それは』
ぐぬぬ……
これから忙しくなるので――
――って、そうだった、魔ドンナの動きが気になってたんだ。
あのBBA、新ダンジョンの保護設定が無かったら、襲って来てたかもな。
そう考えると、魔竜は前からちょっかい出してたよな、アレは何でだ?
いや待て、先に手を出したのは俺か?
報復なら殺って良いルールだったよな……あっ!!
俺の眷属に被害が出る前に、あっちの眷属殺したなっ!!
眷属と浅部魔族を一緒に考えちゃ駄目だった?
報復可能なのは眷属が被害を受けた時だけか?
あの頃はまだハーピー達も国民ですらなかったしな……
『そうかもしれませんね。しかし、正式にダンジョンマスターとなった後に北伐を行いましたから、それ以前の保護設定は機能していたのか分かりません。そもそも、オナ兄には保護設定云々の配慮など記憶の片隅にも有りませんでした』
あぁぁ、またか……
世界さんの設定は本人以外確認できないっ!!
こっちは推測や憶測で判断するしかない、出来れば無視して行動したいですねっ!!
『うふふ、その為の【帝王陵】でしょう?』
まぁね、完成が待ち遠しいですわ。
んで、魔ドンナはどうよ?
『眷属化した人畜や、養殖の死霊系がセパルトゥラに潜り込もうとしていますが――』
いやぁ~無理でしょ。
ウチはどこもアートマン様の結界でガチガチだゾっ!!
う~んしかし、対人は創造悪魔軍団の舐めプで良いが、対魔人は気を引き締めるか……魔竜も舐めプ気味だったのは反省だなっ!!
土俵は同じだが、今度は実績のある魔人が相手だ、全力で行こう、全力でなっ!!
『全力……(絶句)』
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