第189話「ヤメロ、そのプレイは俺に効く」
第百八十九話『ヤメロ、そのプレイは俺に効く』
十一月七日、昼。
四日に休日を挟んでジワジワ攻略。ついに三十階層を制圧した。
思った以上に攻略が楽だった。
一番疲れたのが休日だったのは何故なんでしょうか……
四本腕の破壊神に蹂躙されたからか、それとも途中参加した進撃の巨神にキノコ狩りされたからか、中盤から目隠しされていたので真相は分からないっ!!
しかも、あまり聞き覚えの無い女性の声が幾つか聞こえた。
声の一つはしきりに『ごめんなさい、ごめんなさい』と俺の上に乗りながら言っていたが、その騎乗は見事としか言いようが無い。素晴らしいゴリラライディングだった。しかし、騎乗しながら『マハー・アートマン!! マハー・ラージャ!!』と叫ぶのはどうかと思う。
また別の声は『フンッ、男なんて所詮……』と言いながら、濃厚なキッスをゴリラの分厚い唇に叩き込み、『わ、私が上で、良いの?』と僕に囁いた。僕は三十回くらい頷いて同意を示した。彼女のライディングはリーディングジョッキー並みだと言っておこう。競馬を開催したら僕の馬に騎乗して頂きたい。
また別の声は『みんな、お兄ちゃんだよ』と言いながら抱き着いてきた。何故か、彼女の後に続いてヒンヤリした肌の持ち主が五名ほど一気に抱き着いてきた。鈍い俺でもこれは分かる、駄目です事案ですと訴えたが、『兄妹だから大丈夫なんだよ?』と言われて納得した。健全な兄妹愛を育んだと言っておこう。
また別の声は『貴様、それでも猿人の始祖かっ!! もっと突き上げろ、もっとだっ!! この私に地獄突きを見せて見ろっ!! クッフゥ~、宜しい、次は後ろからだっ!! 翼を乱暴に掴めっ!! そうだ、それで良いっ!! フハハハハ、復楽園は近いぞっ!!』と、終始命令口調だった。騎乗の激しさは彼女が断トツだ。
そんな感じで、翌日の明け方までゴリラ狩りは続いた。
メチャに目隠しを外してもらい周囲を見ると、白因子まみれで痙攣したラヴがベッドに横たわっていた。ヴェーダは俺の中に帰っている。
酷く疲れた体を起こし、顔を洗いに洗面所へ向かう。
メチャはラヴの掃除役だ。サンクスっ!!
洗面所の鏡でやつれた顔を見る、苦笑が漏れた。
すると、鏡に血文字が浮かんできた。
“腐った女は呼ばないの?”
瞬間的に気を失ったが鋼の精神で意識を繋ぐ。
俺は足りない頭をフル回転させて最適解を導き出す。
「メインディッシュは最後、だ」
どう考えてもクソ野郎なセリフを吐き、鏡を見つめてニヤリと笑った。なお、失禁して床はビショ濡れです。
“バカ”
その血文字は一瞬だけ浮かび、すぐに消えた。
合否判定が分からない、心臓はバクバクだ。
数秒後、俺の体に『ドス黒い光』と言う意味不明なものが降り注ぎ、体がカッと熱くなった。
絶句しつつステータスを確認。
『冥神の加護(最大)=全部あげる』
そっ閉じして気を失った。
全部、全部貰った、俺にはすぐに理解出来た。
俺はヘルヘイム(ヘル付き)を手に入れた。
手に入れたが、まだ冥界へ行く事は出来ない。持て余す状態が続きそうな気がする。なるべく長めに持て余したい。
とまぁ、過酷な休日を乗り越え、私は今日を迎えたのです。
『卑猥な回想は終わりましたか?』
なんだとぉーっ!!
卑猥なとは何だ卑猥なとはっ!!
悲惨で残酷なゴリラ虐待を卑猥などとっ!!
まったくもってケシカランっ!!
『勃起をきたしながら言われても……』
思い出すだけでイキそうですっ!!
またお願いしまぁぁ~っす!!
『はいはい、十連休までお預けです。さぁ、環境を整えて下さい。恐らく次が最後の階層……いえ、隠し部屋ですね。抜かりなく行きましょう』
うむっ!!
任せたまえっ!!
よぉ~し、頑張っちゃうかんなぁ~っ!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【オナ兄のコアルームにて】
≪何なんだコイツらは……≫
恐るべき速さでダンジョンを攻略する大猿。
オナ兄は死にゆく眷属の
実質、大猿は何もしていない。
時折ブツブツ独り言を呟いたり、鼻をホジっているだけだ。
脅威は大猿よりもその眷属。
ゴブリンキングは当然だが、黒い猪人と赤黒い蜥蜴人、大猿の両肩に座る女魔族、恐ろしく強い。
更に、体色が黒系になった浅部魔族やドワーフ、褐色肌の白エルフなどオナ兄の知識には無い魔族、それらも強い。
サブダンジョンは既に
サブマスターも死霊術師も連絡が取れない。
オナ兄の切り札アンデッド軍団は使えそうもない。
力で屈服させた山脈のワイバーン共は大猿の手中に落ち、眷属化していた深部のエリアボス二体は何者かに滅ぼされた。浅部戦力が低下した時を狙って奇襲する作戦も使えない。
オナ兄は知らない事だが、ガンダーラでは殲滅兵器二体が目を光らせている。知っていれば奇襲など最初から除外するであろう最強の二体が。
ついでにマハルシの悪魔軍団も居る。
敵情の詳細を入手出来なかったオナ兄の奇襲作戦は初めから破綻していた。
たとえ深部魔族の奇襲が実行されていたとしても、成功を収める事は出来ない。イセとトモエが出陣する前に悪魔軍団に滅ぼされるだろう。
オナ兄は詰んでいた。
彼の知らないところで勝敗は決していた。
弁護の余地なく惨敗を喫していたのだ。
大猿は既に三十階層を制圧している。
どうやったか解らないがダンジョンの支配権も奪われた。
コアルームに繋がる隠し階段から死神の足音が聞こえてくる。
DPは使い切った、ゴブリンの創造召喚すら出来ない。自分とマスターを護る眷属はもう居ない。
最後に残るのは己とマスターのみ。
しかし、DPの無いオナ兄には何も出来ない。
敬愛するマスターにゴミ掃除を願うしかない。
≪是非も無し……≫
オナ兄は主君が眠る背後の一室に意識を飛ばした。
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