第188話「待って、話を聞いてクレメンス……っ!!」





 第百八十八話『待って、話を聞いてクレメンス……っ!!』





 無駄に長い……

 無駄に広い……


 トラップはゴミだらけ……

 敵はアホな養殖ばかり……


 緑は無く岩の灰色が続く……

 早く家に帰りたいのです……


 ツラい……



 今日は十一月一日。

 北伐開始から六日目の朝、第二十一階層を攻略中です。


 五階ごとに拠点を築きつつ、余裕を持って攻略を進めてきたが、これが所謂いわゆる『普通のダンジョン』なのだと思い至り拍子抜けした。


 国や冒険者ギルドがなかば攻略を諦めている有名処のダンジョンは、階層が千を軽く超えていたり、数階層おきに強力な階層主が居たり、トラップが極悪だったりと、特級や最上級認定を与えられるだけの理由がある。


 だがしかしっ、この魔竜ダンジョンにはそれが無い。良くて中級下位がせいぜいだろう。


 ここは人類が把握していないダンジョンの一つだが、仮に見つかっていたとしても、上級難易度に認定されたかと言えば、微妙なところだ。


 人類が恐れる地竜の棲処すみかという危険度を、人類がどう扱うかで難易度は上下するだろうが、少なくとも魔ドンナの『パパドンプリーチ城』より下だと思う。


『パパドンプリーチ城』は最低でも二百年以上人類を退けている。蓄えたDPも人畜の数も魔竜とは比べものにならん。


 階層の数と質、眷属の数と質、トドメにマスターとコアの質。どれもこれも魔竜の完敗だな。



『ラージャ、侵食が完了しました。先行して次の階層を侵食します』


「はいよー」



 それでは、トンネルを設置しましょう。

 ダンジョンを悪魔と瘴気で満たすのですっ!!


 移住希望の悪魔さん達はこの階層より上の階層に転移して下さいねぇ~。ダンジョン内の街や砦に行ったら好きな場所でセクセクして下さいねぇ~。


 あぁ、『小神殿』に行ってアートマン様にお祈りしてね、FPペイカード貰えるよっ!! セクセクがはかどるねっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 十一月三日、早朝。

 本日は第二十五階層の攻略です。



 ここの攻略が済めば、六つ目の拠点造りを始めます。


 のぼりと下りの階段前に関所と砦。迷路の壁を排除して平地化、小規模なアートマン神殿を中央に据えて街を造る。


 最後にトンネル設置で完成だ。

 第一階層と五の倍数階層はこんな感じ。


 その他の階層は基本的にイジっていない。俺がやった事と言えば、訓練用の養殖を大量に創造したのと、眷属達の要望を聞いて地形やトラップ等を強化訓練仕様にした程度だな。


 俺よりも悪魔達が頑張っていると思う。


 魔界で捕獲した野生の魔獣?をアホかと言うほど持ち込んでは解き放ち、拠点が在る階層以外を魔界魔獣の放牧場?にしてしまった。


 放牧と言えるか分からんが、勝手に増えるし食用にもなる。魔界魔獣の肉や乳は美味しいらしい。


 美味しいと言われてもなぁ……


 アレを食うのか? アレの乳を飲むのか?

 牛とかヤギっぽい見た目なら疑問に思う事はないんですが……


 白濁液をピュピュッと飛ばし続けるイソギンチャクとか、どう見てもパコレイパーだろお前みたいなのしか居ないんです。



『罪を犯した人畜の行き先が決まって何よりです』



 おぅふ……

 ここに追放されるのは老若男女問わず地獄だな。



『あの魔界魔獣達は種族を問わず種付け出来ますから、繁殖は容易でしょう。食肉に困る事は有りませんね』



 僕はちょっと……



『魔族を統べる帝王が食わず嫌いとは情けない。故郷の味を否定された眷属達が不憫でなりません』



 クッ、正論であるっ!!


 宜しい、ウェルダンで頼む。しっかり火を通してくれ。


 決してレアで出さないように、素材本来の味とかまだ僕には早いのです、舌がお子様なのです。


 何ならスパイシーな味付けで本来の味を消す勢いで頼みます。

 あと、乳って言うのは……あの白濁液でしょうか?



『さぁ?』



 さぁっ!?


 いやいや、大事なとこだよっ!?

 いっちばん曖昧にしちゃ駄目なとこっ!!



『うふふ、私が考えた性的な冗談です』



 なーんだ、そっかー、コイツめー。

 で、アレは乳なのか、それとも……



『精液です、あ、ザーメンですね』



 意味同じぃぃぃ!!

 種子って意味もあるけどほぼ一緒ぉぉっ!!



『魚類の精巣を食べる元日本人とは思えぬ反応ですね』



 白子と一緒にすんなっ!!

 出す前と出した後じゃ大違いじゃボケっ!!


 お前だってジャキの金玉とザーメンのどちらか選んで食えって言われたら、絶対ガチ焼きした金玉選ぶだろっ!!



『ッッ!! なるほど、まさに目から鱗、怖気おぞけが走りました。魔界魔獣のザーメンはジャキ専用飲料にしましょう』



 それはそれで酷いな……

 じゃなくて、乳はどれの事なの?



『魔界魔獣に孕まされた『苗床』が出す乳です。男女問わず出ます』



 何だろう、嫌な事言わないでもらえますか?

 僕に出す時は女苗床の乳でオナシャス。


 断ったら君もジジィ苗床が出した乳を飲んでもらいます。



『新しいDVでしょうか、鬼畜ですね。では爺乳はジャキに飲ませましょう』



 豚骨バイ菌マンが無敵の汚物になるからヤメたげて。



「け、賢者様ぁ、制圧しましたよ?」



 ボケッと突っ立ってヴェーダとお喋りしているゴリラに、オドオドしながら報告を入れるメチャ。サンキュー!!


 右肩に座るメチャの太ももに頬擦りして感謝を示す。

 くすぐったそうにするメチャは純朴で良き。



『私が不純だとでも?』



 言ってないですねぇ。

 むしろ、純粋すぎて穢してしまいたくなるぜぇっ!!


 なんつってな!! あははー。



『それは今夜のお誘いですね、溢れるほど注いで俺色に染めてやるぜ、そう言う事ですね分かります仕方がありません宜しい注いで下さいそうですね明日の攻略は休みにしましょう聞け眷属達よ明日は休養を入れる此処ここの階層はミギカラを臨時太守とする励め。さぁラージャ早く街を造って戻りましょう時間が勿体無いあぁ私ったらイケナイこんなに濡れてウフフ愛されるって素敵ねラヴ』



「そうだねぇ、素敵だねっ!! 私もお邪魔して良い?」


『勿論です私の親友』

「やったーっ!!」



 あぁ、あぁぁ、何故、話が変な方向に、何故……



「け、賢者様ぁ、あの、あの、頑張って下さいっ!!」


「おう……」






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