第187話「殺せ」





 第百八十七話『殺せ』





 どうしようもねぇな、これは。


 コアの指示だとは思うが、ハーピーに産卵までさせてやがった……



 やってくれるじゃねぇかクソが。

 ニワトリの繁殖場かここは、舐めやがって。


 牧場を持つのは構わん、だけどなぁ、魔族の領域である大森林のダンジョンで『魔族を家畜化』は無ぇだろ……せめて魔族と人畜を区分けしろボケが。


 コアにとっては父親の種族なんて関係無ぇだろうな、牧場経営者としては正しい判断だ。殺意がみなぎるぜ。


 ハーピーやラミアは異種間交配が可能だ、しかし必ず母親と同じ種族を産む。


 この『異種間交配可能』と言う種族特性、これも世界さんの設定だと思うが、毎回毎回、魔族に関する設定がロクな結果を生まん。


 本来なら、種族繁栄の為に有益な特性なんだがなぁ……


 何でわざわざ敵対確定の種族とも交配可に設定したのか。

 優勢劣勢、どちらの立場でもハーピー達はデメリットが多い。


 そんで、生まれるのは必ずハーピーだ。

 劣勢だった場合、彼女達には地獄の無限ループが待っている。


 やっぱクソ設定だな。イライラする。



『ラージャが種を仕込めば、その設定を無視出来るかもしれませんね。私達の息子は両親に似ず三面六臂の破壊神ですし』



 それは……婆ちゃん似だからじゃないかな?



『アートマンをクソババァだなんてヒドイ』



 やめないかっ!!

 言ってないでしょ?

 それは駄目ですね、赦しませんよっ!!



『うふふ、お嫁さんの義母イジリです』



 まったく、可愛いからヨシッ!!


 ……俺の怒りを冷ます為だろ、ありがとよ。


 でも今後は慎みなさい。



『畏まりました。さて、あのハーピー達はどう致しますか? 確認したところ、身体には問題ありませんが、知能が著しく低いですね。家畜として扱っていた為、基本的な言語教育もされておりません、無論、人畜も同様に』



 クソが、人畜はどうでも良い。このままここで飼う。

 ハーピーはマハルシに転送、ハーピークイーンに預けよう。


 ビ・アンカ達なら大事に育ててくれるさ。



『眷属化すれば知力が伸びますから、ある程度は助けになると思います、しかし眷属化は同意が必要……今の彼女達から同意を得るのは難しいですね』



 そうなんだよ、それがなければ今すぐにでも眷属化するのになぁ。


 う~ん、あのハーピー達に言語そのものの知識が無いなら、翻訳さんでも無理か……


 でもまぁ、一応試してみよう。




 頭の悪そうな人畜共を押しのけ、どう見ても虐待されてた感のあるハーピー少女の前に行き、ドスンと座る。


 あざと傷だらけの細い体、不健康な肌、キツい体臭。


 綺麗なはずの体毛はボサボサ、俺が好きな裸のハーピーはこんなんじゃねぇ。神木の枝に座って歌う彼女達は、こんなんじゃぁねぇんだよ。


 怖がらせないように、ニッコリ笑って小さな頭を撫でた。


 苦しくて辛い生活だっただろうに、巨大な俺に警戒も抱かず、彼女はニパーっと笑って――


 ――股を広げた。



 あぁ、無理だな。



「ジャキ、レイン、ミギカラ、男人畜は全部殺せ」


「お、おうっ!!」

「……了解した」

「御意に」


『ラージャ……』



 健気な少女を両手で包み、優しく持ち上げて話し掛ける。



「よぉ、俺はナオキって言うんだ、お嬢ちゃんに名前は有るかい?」


「?? なまえ? ないっ!! にぱー」



 クッ、その穢れ無き笑顔が汚れた俺を狂わせるっ!!


 いやいや違う違う、話が通じたっ!!

 信じてたぜ、有り難う翻訳さぁぁん!!



『いやオカシイです貴方のスキル……』



 細けぇこたぁ良いんだよっ!!

 よ~し、眷属化に向けて説明会を開きますぞっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 出来た、眷属化出来たっ!!


 誰も否とは言わなかった、笑って受け入れてくれた。


 ガンダーラのハーピー達のように体毛が黒褐色になり、肌も健康的な小麦色だ。虐待の傷跡も消えた、もう大丈夫だ。


 あとは、同族から心を癒して貰えば良い。

 時間はいくらでもある。神木の天辺で羽を休めな。



『二千七百七十三名の受け入れが完了しましました。ハーピークイーンがラージャに深謝を、と』


「感謝されるのも何だかなぁ、北伐が早ければ助け出す時期もずっと前だった。つっても、強化期間があったから迅速に救助出来たわけで、上手くいかんなぁクソが」


『出来る事からやりましょう』


「フゥ、そうだな」



 俺達に出来る事、か。自分の手に負えん事はアッサリ諦めが付くが、ちょっと頑張りゃ出来るとなると、手を伸ばしたくなるんですよねぇ。


 とりあえず、今出来る事をしますか。


 牧場をグルリと見渡します。

 男人畜の屠殺が続いていますね。

 肉片やら血やらで見苦しいなぁ。


 汚いので吸収しましょう。う~ん、クッソ不味いっ!!


 ん?


 おやおやぁ~?

 ガキはさばかねぇのか?



『ごめんなさいラージャ。五歳以下の男児人畜は種馬として生かすように指示しました。性質がアレな男児は処分しています』



 謝る事ぁねぇよ、ついカッとなって鏖殺おうさつを命じた俺が悪い。成人した男人畜を他の牧場から回そう、スマンな。


 人畜を余計に減らせば魔皇帝との協定が崩れる。

 助かった、ありがとう。


 ところで、性質がアレなガキって何だ?



『先天的な気質に問題が有る個体です。例えるなら、『幼少時の勇者ペド』でしょうか、それが大勢居ます』



 殺そうっ!!(使命感)



『処分済みです。六歳以上の男人畜にも二千余名居りましたが、真っ先に処分させました』



 クッ、二千を超えるペド軍団だと……っ!?


 それは人類国家に放逐すべきだったなぁ!!

 優れた生物兵器を廃棄してしまったか、無念っ!!



「お~い兄貴ぃ、ブッヒ、ブッヒ、ねぇさんが目標から除外したガキ以外は~、ブッヒ、ブッヒ、もうすぐ殺し終わるぜぇ!! ブッヒ、ブッヒ、今はレベルの低い眷属達が~、ブッヒ、ブッヒ、トドメを刺して回ってるぅ~、大した経験値にはなんねぇケドなっ!!」



 豚骨バイ菌マンがブヒブヒ言いながら走って来た。

 血まみれじゃねぇか汚ぇなぁ。


 男人畜だけで五千近く居るからしょうがねぇか。

 よくもまぁここまで繁殖させたもんだ。


 まさに家畜だな、素っ裸なのがまたリアルでエグい。


 よ~く見てみりゃメチャとラヴ以外はみんな血まみれで酷ぇ格好だ。


 って、メチャとラヴも屠殺に参加したのか……


 あの二人は人間の男が大嫌いだからなぁ……


 ん?


 あそこに居るエルフも殺し方がエグいな、あんな子居たか?



『教国でアートマンが救ったエルフですね。アートマンとラージャに心酔しています。私が思いますに、彼女はガンダーラで五指に入る狂信者です』



 あぁ~、火炙りの子か。


 そりゃぁ狂信するだろ、そんな場面で救われりゃなぁ。

 アートマン狂信者の俺が言うから間違いない。



『貴方の事も狂信しているんですよ、あの子』



 僕は何もしてないんですが……



『ナオキさんが居たからアートマンが動いたのです。アートマンが産み落とした人外帝王は人類と戦い、魔族を救っている。この事実に加え、救命ついでに悲惨な境遇からも救われる……狂信するでしょう?』



 な、なるほどなー。



『あの子はマハルシの大神殿で修行させたのち、聖女になってもらいましょう』



 ほほう、お前が認める逸材だったか……


 宜しいっ!!

 やりたまえっ!!



『立派な性女にしますね』



 うむっ!!


 うむ?





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る