第184話「生やせばいいと思うよ」





 第百八十四話『生やせばいいと思うよ』





 あ~ダメダメ、それ欧米でモザイク入っちゃう。




 これが、地獄の獄長から加護と称号を得た結果なのだろうか。


 遺体の引き渡しを済ませた俺達がマハルシに入ると、“アレ”っぽい黒軍服に身を包んだ悪魔達が通路両脇にズラリと並び、絶妙に違う角度で“アレ”っぽく右手を天に突き上げ『ナオキ・ザ・グレイッ!!』を三唱した。


 彼らの赤い腕章には逆さ十字が描かれている。

 うむ、ギリギリ“アレ”ではない。セーフだ。



“ジーク、ジーク、ジークハイル!!”

“ジーク、ジーク、ジークハイル!!”


“ハーイル・ゴォヒラッ!!”

“ジークハイル・ゴォヒラッ!!”



 うむ、アウトだった。


 ゴォヒラはドイツ語のゴリラだろうか?

 そこは『マハー・アートマン』でお願いします。



『ハイル・アートマンですね』



 やめないかっ!!


 彼らの目を見給え……

 ガンギマリとは正にこの事。

 怖くて目を合わせられない。



『まぁ、そうなるのは必然ですね』



 アナタの所為せいなんですが……



『大魔王兄妹、ファールバウティの血族……これらと同時期に姻戚となったのはラージャだけですから、地球圏の魔界に属する冥界と地獄はお祭り騒ぎです』



 正式に結婚していないんですが……



『悪魔の祝福けいやくは絶対なので』



 な、なるほどなー。


 でもまぁ、損害や危害をこうむったわけでもないし、特に問題は無いですね。



『そうですねw』



 草ぁぁああああああっ!!


 クソう、クソう、出陣じゃぁっ!!

 魔竜ブッ殺してやるかんなーっ!!


 プンスコぷりぷりっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 まったくヤレヤレだぜっ!!


 ヴェーダの悪ふざけには困ったもんだ。

 優しい俺もプチおこプンプン丸になってしまうぞ?



「ブッヒ? どうした兄貴、ゴキゲン斜め28度みてぇなツラしてよぉ、ペニスからうみでも出たのか? 俺も最近出るんだよ、あれ怖ぇよなっ!!」


「お前は今すぐJLG48を全員連れてホンマーニの所に行け」


「え、えぇぇ、何でだよぉ……」



 魔竜のサブダンジョンに転移して早々、ジャキの黄金バットがリンリンしていると発覚。ジャキ、バット、リン病……何故か運命的な響きを感じるな。


 とにかく、ジャキとJLG48は早急に治療すべし。


 俺の両肩に座るメチャとラヴが何かゴニョゴニョ話してる。

 女の子だからな、性病には少しばかり思うところが――



「ねぇラヴちゃん、あの子だよねぇ、やっぱり……」

「豚君には可哀そうだけど、股が緩いからねぇあの子……」



 不穏すぎるでしょ……

 何なのそのワード……


 ヤメロ、寝取られはジャキに効く……っ!!

 これ以上ジャキ少年を苦しめないであげてっ!!


 ……って、いや待て、違う違う、そうじゃない!!


 リンリンをバラ撒いてる娘が居るって事じゃんかーっ!!


 ヴェーダァァ~、助けてクレメンスぅ~!!



『該当女子に性交を慎めとは申せませんので、男性感染者にホンマーニの治療を受けるように指示します』



 男には他言無用を徹底してくれ、変な噂を立てた奴は殺す。



『畏まりました。感染経路も調査が必要ですね、今後は私が数日おきに国民の健康診断をしておきます』



 ありがとうっ!!


 感染経路かぁ、眷属化で疾病はキャンセルされるけど、ジャキやJLG48は眷属化してないからな、その辺を考えると……



『十中八九、該当女子が『ゴブリジア淋病』の無症候性保菌者キャリアーです。ちなみに、彼女の元カレはスモ……』



 スモーキーは童貞だった、いいね?



『そうですか。ところでラージャ、レインとジャキは当初の目的を果たしましたし、眷属化も同意すると思われます。防疫の為にも必要な処置です』



 あぁ~、そうだったな。

 北都兄弟を始末したら眷属化するんだった。


 ジャキはこれでリンリンとグッバイ出来るなっ!!


 では早速。



「レイン、ジャキ、眷属化しようぜっ!!」


「……あぁ、望むところだ」

「いいけど、俺は何でホンマーニの所に?」


「お前はもう行く必要無くなった。JLG48は眷属化すれば行かなくて済むけど、アイツらどうすんのかな?」


「へへへ、兄貴にゃぁ悪ぃが、俺のマブいスケ共はよぉ、俺以外から『愛』を受け取らねぇンだわ、たとえ君主あにき仁義あいだとしても、な」



『JLG48が眷属化を承諾しました』



 ヴェーダ……

 お前は何故、それを外に向かって告げる?

 俺にだけ伝えればいいじゃないか……


 見ろよ、豚骨ラーメン少年の顔を……


 死んでるみてぇだろ?

 生きてるんだぜ、あれ。


 一瞬キョトンとしたジャキだったが、いつもゴキゲンな難聴は不発に終わり、ヴェーダの言った意味を理解して気絶した。


 立ったまま気を失うその姿は、今は亡き長兄ラホウの死に様と重なるが、格も威厳も段違いすぎて芝3200。腹筋が痛い。


 どうすんのコレw

 笑っていいのぉ?ww


 レインを見ると震えていた。目に涙を浮かべている。

 分かる、分かるぞレイン、お前も辛いよな、笑いたくて。



『JLG48は眷属化を承諾しました』



 二回目www

 何でお前www

 ヤメロ馬鹿www

 突然ブッ込むな死ぬwww


 やべぇwレインが倒れたwww


 マズイ、これはマズイですよ~。


 メチャとラヴは俺の頭に顔面をくっつけて震えている。

 ミギカラや眷属達は難聴でお茶を濁すつもりだな、卑怯者め。


 まったくっ!!


 これから北伐本番が待っているというのに、このカオスな状況は望ましくないですねっ!!


 だいたいさぁ、ヴェーダは何でこんな酷い事をするの?

 三十分前に出来た『ジャキ少年保護法』違反だよこれは。



『感染経路を調べるうちに、該当女子と関わりの無い者も老若男女問わず感染していると判りました。それを調査したところ、ジャキが感染拡大の原因と判明したので、つい』



 え、もう調べたの? すげぇな。

 それで、感染拡大とは? JLG48意外とヤった?



『いいえ、ジャキの癖である『チンコ掻き』が原因です。頻繁に陰茎を掻きますが、ジャキは手も洗わず組手稽古に励み、器物にも触れて回るので、外気や日光に強いゴブジリア菌は死滅せずに新たな被害者を作ります』



 なるほど。


 ふむ……



 俺、さっきコイツに干し芋貰ったんだけど……


 それ食ったんだけど……



『こんな時、私はどうすればいいのか分からないの……』




 草、生やせばいいと思うよ。








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