第183話「ヒュゥ~、ヤレヤレだぜ」





 第百八十三話『ヒュゥ~、ヤレヤレだぜ』





 では、サブコアを頂きます。ゴックン……


 ふむ、ふむふむ、これは……


 小梅キャンディーの味だなっ!!

 メインコアほど力のたぎりは感じんが、美味いっ!!





 遺体の奪還とゾンビの掃討が終わったところで、サブダンジョンの乗っ取りも完了。



『ジャキの苦戦が無ければ、もう少し早く――』



 待ちたまえヴェーダ君。

 ジャキの兄弟対決は壮絶でカッコ良かった、いいね?



『レインがフォローしなければ、末弟に殺さ――』



 待つんだヴェーダ君。

 ジャキの激闘は口外を禁じよう、いいね?


 この制圧戦は素晴らしい戦いだった。それが答えだ。


 せめて最期は武人の死をと、【影沼】から解放しての一騎打ち。見事だったじゃぁないか。


 レインは次兄トキメキを圧倒した。

 メチャは長兄ラホウの首をもぎ取った。


 ラヴがジャキ父を三属混合魔術で倒したのは芸術だ。

 ミギカラとジャキ祖父の戦いは後世に語り継がれるだろう。


 彼らの奮戦は、ダンジョン浸食の時間稼ぎにもなり、コソコソ隠れていた死霊術師を早々に炙り出す結果となった。


 お蔭で、俺は術師を殺せたしサブコアも頂けた。

 奪われた遺体もゾンビ化が切れ、再び永遠の眠りに就いた。


 それでいいじゃないか、なぁ、ヴェーダ。



『でも、ジャキ戦に一番罵声を浴びせていたのは――』



 やめないかっ!!


 生き死にの戦いで腹に足刀を入れられて幼児退行したアホなど居ない、こっちをチラチラ見て『助けて』アピールした豚も居ない、一騎打ちに兄貴分の手を借りたクソ豚も居ない、倒した後に延々と死体蹴りする醜いジャキも居ない、いいね?



『そうですね、醜いジャキは居ませんでした。いつものジャキでした』



 やめないかっ!!


 笑いを我慢して腹筋が痙攣しているんだぞ私はっ!!

 ザコ狩りでヒャッハーした後の無様さよっ!!


 ジャキは持ってる、アイツぁ持ってるぜ。

 前世でも数回拝んだ程度だったが……


 コメディキングの資質を持っているっ!!



『死闘で光らせる資質ではありません』



 だなっ!!


 はい撤収~。


 あ、ここから転移して一度帰ろう。

 遺体を届けるのが先だ。



『カスガとアカギ、各族長に伝えます。遺体の引き渡しはマハルシの入り口で宜しいですか?』



 構わんよ、よろしくなー。


 そうだ、鹵獲した物資は【影沼】の遺体と一緒に運搬とはいかんな。ここに倉庫造って置いておくのも良いが……


 よし、面倒臭ぇから全部マハルシの倉庫に転送だっ!!


 あぁぁ、家畜だった中部魔族の生き残りは……



『放っておけば中部まで歩いて帰りますよ』



 だなっ!! 撤収っ!!




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 制圧隊全員でマハルシの入り口付近に転移、それほど長居は出来ないのでトイレ休憩程度の時間を作って一時解散。


 その間に、ヴェーダが連絡した族長達が集まって来た。


 マハルシは旧稽古場のど真ん中に在るので、入口の周囲は広い空き地だ。遺体を置くスペースは十分にある。


 ラヴが【影沼】から遺体を浮かべ丁寧に並べていく。

 各族長達と妖蜂・妖蟻の兵隊がそれを見つめていた。


 みんなホッといているようだが、顔と目は忙しく動いている。遺体の確認と数合わせだ。


 荒らされた墓の数はヴェーダと蟲の調査で把握済み。


 ヴェーダから報告を受けた部族は墓を掘り起こし、遺体の有無を確認し終えているので、次は消えた遺体の数と並べられた遺体の数が合っているか確かめる必要がある。




 確認の結果、ゴブリンに数の不一致があった。

 他の浅部魔族は問題無かった。


 やはり、使い潰された者も居たか……


 ミギカラに『何体足りん?』と聞く。

 ミギカラは『一体多い』と苦笑した。


 ……ん?


 ミギカラが遺体を指差す。


 ……ん? んんんん?

 あ、あぁ~コイツ……



「メチャが絞め殺したチョーじゃん」

「あわわ、ホントだぁ~……」



 俺の隣に立つメチャが驚いていた。

 いやお前、忘れてたの? 人の事言えんけど。


 さてどうすっかなぁ、コイツあれだよな、死霊術師の呼び掛けに応えてゾンビになったケースだったよな?



『そうですね、この魂はもう輪廻の船には乗れません』



 まだ魂がうろついてんの?

 ヘルに頼んで冥界に送るか?



『冥界にも行けませんね、その資格が無い。それに、ここは神気結界が有るので身動き出来ず、今は遺体の上に浮かんでいます』



 え、じゃぁ何、地縛霊みたいになんの?

 鬱陶しいので結界に叩きつけて消してしまおう。



『それより、ルシフェルに渡しましょう、彼の妹がこの穢れた魂を永遠に苦しめてくれます』



 んんんん?

 イモウト?

 大魔王の?


 誰?



『サタナエルですよ、地獄の首領、大魔王です』



 さたなえるぅ~?

 う~ん、僕ちょっと分かんないなぁ……



『サタンです』



 え、サンタが何?

 クリスマスの話ならヒマな時になっ!!

 そんな事より魔竜ブッ殺しに行こうぜっ!!



『しかし、最初のプレゼントが穢れた魂一つでは人外帝王家末代までの恥。伏魔殿を拡張してサタナエル像を造って下さい。これでイけます』



 サンタが僕に象のプレゼントをくれる?

 う~ん、ゴメンね、要らないかなっ!!


 そんな事より魔竜ブッ殺しに行こうぜっ!!



『大丈夫、私に任せてっ!! ちょっと行ってきますね』



 そ、そんな事より……

 魔竜をブッ殺し、に……


 ふぅ……


 参ったなぁ、嫁が俺の話を聞いてくれない。

 俺の難聴も安く見られたもんだぜっ……


 だいたい人外帝王家って何だよ、末代の恥もクソもねぇわ。

 プレゼントなら大魔王さんの娘さんが先だろ常識的に考えて。


 だがまぁ、今回は草を生やしてないからマシか。


 ったく、アイツは俺の交友関係を広げて何がしたいんだ……

 地獄の大魔王と知り合う必要が有るのでしょうか?



 ん?

 何だ?


 何か体が熱いな……

 いや、そんなはずはない、気のせいだ。


 い、一応、ステータスを、チェ、チェック、するかぁ。




【称号・加護・祝福】


『全人類の敵対者=サタナエルと共闘(強制契約)』

『サタナエルの加護=宜しい、ならばセックスだ(不可避)』




 ヒュゥ~。


 こいつぁ…………




 ヴェーダぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!!

 お、おま、お前ぇぇぇええええっ!!!!







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