第181話「それも、アリやなっ!!」
第百八十一話『それも、アリやなっ!!』
筋斗雲は便利だなぁ……
大空から眺める景色は最高だ。
見たまえ諸君、深部魔族がゴミのようだっ!!
『まぁ、ゴミですね、肉片ですから』
……うむ。
フェンリル兄やんはスコルとハティの魔狼軍団を引き連れて深部を荒らした。
魔竜の手引きで中部から姿を消していなかった中部魔族達は、中部を通過するフェンリル兄やんの巨体を見て絶望。
魔狼軍団の行く手を阻む猛者も居らず、軍団を素通りさせた。邪魔したら全滅必至なので正しい選択ですね。
しかし深部は違った。
何と言うか、世間知らず?
勇者のデバフでも食らったのかと聞きたくなるほどアホ。
深部には体長が5mを超える大型魔族が多数居る。オーガやトロール、ミノタウロスと言った種族だ。種族名は翻訳さんが俺に判り易くしてくれるので助かるが、本来は違う。どうでも良いけどねっ!!
そいつらが軍団の行く手を阻んだ。
30m以上有るフェンリル、もうすぐ20mを超えるスコルとハティ、5m級がゴロゴロ居るエッケンウルフの群れ。これの進路上に立ち塞がった。
エッケンウルフの群れを邪魔するのは分かる、有名な下級中位魔獣だし、力ではまだまだ深部魔族に及ばんからな。
でもフェンリル兄やんとスコル&ハティは見て分かるやろ~。
見てすぐアカンて分かるやろ~。
分からんかったらしい。
深部のオーガ達が狼軍団の毛皮についてゲラゲラ笑いながら皮算用を始めた。捕らぬ魔狼の皮算用ですな、観戦していた深部魔族もニヤけていた。駄目だよそれは。
フェンリル兄やんの息子達が従える狼達は兄やんの子と同義、ついでに俺の眷属だ。
【ファールバウティの血族】はファミリーの侮辱を絶対に赦さない。
兄やんは口を開き、パクンと閉じた。一度だけ。
その場に居た二百四十名のオーガが喰われて死んだ。
兄やんはゴキュゴキュと咀嚼音を鳴らしている。
その場に居たオーガは全滅。離れて見ていた深部魔族も絶句。
兄やんが顔をクイッとしゃくった。
スコルとハティが深部魔族に突撃。それに軍団が続く。
部下の為に程よく敵を痛めつけるスコルとハティ。狼達はトドメを刺してレベルを上げていく。
降伏した奴はスコルがぶん殴って気絶させ、それをハティが咥えて後方に投げる。魔竜の
まぁ、深部魔族はジャングルカースト最下位が決まっていますが。
そんな感じでスコルとハティが奮戦する中、兄やんは鼻をピクピクさせて目標を捕捉、東西のエリアボスを一瞬で食い殺した。
どうやって東西のボスを一瞬で?
簡単だ、体のサイズを100kmくらいにして東西にジャンプ。
戻って来た時には口をモゴモゴしていた。二秒かかってない。
これが、眷属やジャキ達と立体映像で見ていた光景だ。
このままでは兄やんが全部終わらせてしまうのだ~、と言う事で俺達は筋斗雲に乗り慌てて深部上空まで来たわけです。
いやぁ~しかし……
地上は酷い虐殺現場だなぁ。
まったく同情せんがね。
肉壁として死んだ浅部魔族の数と比べれば、些細なもんだ。
「兄貴、降伏した奴らはどうする?」
「輸送用の筋斗雲を作るわ。お前とレインは召喚悪魔連れて捕虜を纏めろ」
「うっす」
「……了解」
「ミギカラはゴブリン達と輸送の指揮な」
「御意に」
それじゃぁ仕事しますか。
あ、メチャとラヴは俺をパフパフする係なっ!!
俺はモミモミする係をするのです。モミモミ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「山脈を越えなさい」
久しぶりに神気受肉したヴェーダがションボリ気味の兄やんに凄い事言ってる……
深部での後処理をパパっと済ませた俺達は、意気揚々と魔竜のダンジョンまで進んだ。
だがここで問題発生。
魔竜のダンジョンに瘴気が無い。
要らん外気はシャットアウト、当然ですねっ!!
それに気づいたフェンリル兄やんが悲し気に俺を見る。
う~ん、ダンジョンを浸食しながら進めば何とか……
そんな事を考えていたら体色が黒くなったヴェーダが出現。セクシーだねぇ。
期待した眼差しをヴェーダに向ける兄やん。
甘いぜ兄やん、ヴェーダの顔を見るんだ、『駄犬が余計な手間を取らせるな』ってツラだ!!
案の定、冷たい一言を放ちました。
山脈を越えるのは簡単だろうけどさ、何故?
「魔竜はラージャの獲物です、トカゲが食べたいのなら北の大地に向かいなさい。大物が居ますよ」
なるほどなー。
北の大地に人間や獣人は居ない、人類が住むには過酷な土地が延々と続く。
数名の魔王が国を興しているが、規模は分からん。興味も無いが。
山脈の北に居る彼らは逃亡者・軟弱者扱いなので、大多数の魔族は軽蔑している。
かつては『起死回生を狙った雌伏か?』と期待されていたようだが、千年近く音沙汰無しでは期待も冷める。
真実は分からん、何か理由が有るのかもしれん、しかし、たとえ已むに已まれぬ理由があったとしても、最前線で人間と殺し合いをしながら大森林と言う最後の居場所を護っていた魔族には、何の関係も無い。
仮に、山脈の南を俺達が平定した後、北の奴らがノコノコやって来て『オッス、これから宜しくな!!』なんて言われたら、なぁ?
『南北の交易ですね、宜しく』って感じで『お前の席ねぇから』状態になると思うな。移民は難しいだろ。来てもカースト最下層だナ。
そもそも魔王種が手下を連れて逃げるってのがな、大森林的に有り得んダサさだ。せめてお前だけは人類に一矢報いんかいって話です。
って、そんな事はどうでも良いんだよ。
俺としては全く手に入れる気が無い北方、そこを兄やんが食い散らかそうが何しようが、どうでもいい。
それはヴェーダも分かっているはずだ、しかし、わざわざ兄やんに山脈越えを提案するのは何故だ?
ヴェーダが俺に視線を向けた。
「イズアルナーギに頼んでいたこの惑星の調査が終わりました。北に三皇五帝のダンジョンが在ります。五帝の一人が創造したダンジョンです、このままコアを奪いましょう」
「ほほーん、そりゃまた……」
「魔素放出はラージャが管理するのが望ましい」
「なるほど」
五帝ダンジョンの魔素放出をねぇ。
そいつぁ眷属のレベル上げが
じゃぁ兄やん、どうぞ暴れて……って、いやいや、北にも瘴気無いやんけっ!!
「魔竜のダンジョンを制圧したのち、山脈の北側に魔界トンネルをズラリと並べましょうか」
……それは、アリやなっ!!
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