第177話「ヘヘヘ、『ゴム丸』ってどう?」





 第百七十七話『ヘヘヘ、『ゴム丸』ってどう?』





 はて、ワンチャンとは何なのか?


 考えられるのは二つ。


 一つは俺が冥界に行けるようになる可能性。

 もう一つはヘルを地上に呼んでも問題が無くなる可能性。


 う~ん、キツイでしょ。

 無理だナ(キリッ)



『それでも帝王ですかっ、軟弱者っ!!』



 セイラのパクリ?

 気に入ってんの?



『最近のお気に入りです。息子はこれで鍛えています』



 赤ちゃんに何してんだお前……

 神様だって赤ちゃんだろ、もっとこう――



『シタカラ達をボコボコにして遊ぶ赤ちゃんですが? ミドガルズオルムを縄跳びにしている赤ちゃんですが? 最近は、敵対した神々の神域を小さな拳でパカンと割るのが楽しいようです』



 ドクターストップ・アバレちゃんかな?


 それホントに赤ちゃん?

 破壊神だからそんなモンか?

 でもヘルが抱けば大人しくなる……?


 ヘルはそんなに怖いんですかね……



『義母の前では紳士を貫く、父親そっくりですね』



 ッッ!!

 そっくりだ……


 そうか、ジェントル赤ちゃんだったのかっ!!


 さすが俺の子、ってなるかボケェ!!

 赤ちゃん白目剥いとったやろがい!!



『大丈夫、ヘルは病んでいるだけですw』



 草生やして何言ってんの?

 病んでるって何が? 心の病気?



『下半身が腐る病です。大丈夫、伝染うつりませんから』



 ちょっと待ってちょっと待って。

 怖い怖い怖い。


 下半身が腐る?

 伝染うつらんなら……俺が腐るわけではない、と?



『ヘルの下半身が腐っています。治りません』



 比喩じゃなくて?

 性病とか性癖の暗喩じゃなくて?



『腐っています。ラージャが救ってあげて下さい』



 え、治療しろって事じゃないよな、不治なら。

 って事は、待て待て、『救う』をもっと具体的に――



『大丈夫、貴方なら出来るわw』



 草ぁぁぁぁぁっ!!!!

 草生やして言うなぁっ!!

 そしてセイラの台詞セリフパクんなぁっ!!



『体の所為せいで喪女になり心も病んでいますが、穴が有ったら入れたくなる貴方なら何杯でもイけるはず』



 オカワリしたら俺の息子が逝きそうなんですが?



『大丈夫、貴方の息子は私が鍛えるもの』



 護れよぉぉぉぉっ!!

 どっちの息子も鍛えすぎぃぃっ!!



 あ、そう言えば赤ちゃんの名前を決めたんだ、あのさ――



『ごめんなさい、神は信仰によって自然に名前が付くので』



 ――『ゴム丸』にしようと、何でもないです。



『……一応聞いておきますが、何故その名前を?』



 え、中出ししても避妊出来るようにだよ?(キョトン)



『あ、そうですか(生粋のサイコパスをあなどっていました)』



 まぁ、神さんのルールがあるんじゃぁ仕方ねぇ。

 次の子に名を贈ろう、そうしよう(使命感)



『ッッ!!!!(き、緊急連絡、聞きなさい王妃達よっ――)』




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 何だか慌ただしく嫁会議を開いたヴェーダは、しばらく会議に集中するようだ。僕はお利口さんなので邪魔をしないようにするのです。



 って言うか、俺がヘルについてアレコレ考えているうちに、ボス夫妻は大魔王さんの所に行った。フェンリルお兄様もスコルとハティを咥えて向かったようだ。


 後ろを振り返ると、メチャもラヴもお疲れの表情。

 目の前に居たのは魔王って職業の神様だからな、仕方ない。



「け、賢者様ぁ、怖かったですぅ」

「私も怖かったぁ、魔界の魔王……スゴイよねぇ」


「つってもお前ら、もうすぐ義父になるお方だぞ?」


「あ、あわわわ」

「いやぁん、もぅ、陛下はぁ」


「あーなんか、つかれたナー、きゅうけいすっかー」


「お、お供しまふっ!!」

「さぁ参りましょう陛下、さぁさぁ」



 僕は、コアルーム的な隠し部屋を幾つも造っているので、その時の気分に応じておもむきの違った部屋に転移するのです。


 今日のゴリ部屋は……ここに決めたっ!!


 ゴリ204号室『山菜採りで、捕まえて』のっ!!


 ハァハァ、僕は、山菜採りが、得意なんだなっ!!

 え? 妖蜂や妖蟻達も呼ぶ? 呼ぶんだなっ!!


 採るんだなっ!! 山菜と一緒に皆でスモウを取るんだなっ!!


 あ、ちなみにメチャとササミちゃんは掃除係(意味深)です。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 【伏魔殿・ルシフェル側迎賓室にて】




 魔王ロキの迎賓室は、無駄な飾りを省いた造りで落ち着いた雰囲気だったが、大魔王の迎賓室は真逆。


 真っ赤な絨毯や金の額縁がくぶちに入った絵画、テーブルやソファーは言わずもがな。これら全て、大魔王が魔界から取り寄せたお気に入りの逸品。


 天井と壁柱に施されたレリーフは妖蟻族が仕上げた模様。



 そんな迎賓室に、大魔王はロキ一家を招き入れた。


 全裸のアングルボザを見た大魔王は『判ってるじゃないかアンジー』と頷いて微笑む。


 アングルボザは『娘婿のお願いだからねぇ』と肩を竦めた。


 二人の会話を気にするでもなく、ロキは勧められたソファーに腰を下ろし、大魔王の周囲で侍女仕事をこなす妖蟻と妖蜂の文官達を観察する。



「ナオキん所ぁ、良い駒がそろってやがるな。俺ん所にも派遣して貰うか、うちは野暮ってぇのしか居やがらねぇ、妖蟻と妖蜂は華が有って好い」


「そうだろう、彼も彼の眷属も優秀だ、しかも、ここが大事だロキ、聞き給え、何と、大森林の魔族は、その大半が全裸肯定派なのだよっ。衣服はただの『装飾品・種族の証』程度にしか思っていない、素晴らしい、賞賛に値するね」


「ほぅ、そりゃぁ悪魔好みの姿勢だな」


「そうだとも、しかしだねぇ、残念な事に、それを規制するのが『尊妻様』だと言うじゃないか、彼女の旦那は全裸推進派だよ? それも最右翼だ、タカ派だ。これほど滑稽な話は無い」


「あぁ、ヴェーダは堅ぇからなぁ」


「私はね、せめてこのダンジョン伏魔殿だけは聖域ぜんらを守り抜きたい、二度目の失楽園は許されんのだよ」


「へへ、言うじゃぁねぇか、しょうがねぇ、手伝ってやんよ」



 どうでも良い事を熱く語り合う二人の魔王。


 アングルボザはテキトーに相槌を打ちながら、目を閉じ耳を澄ませて娘婿の山菜採りをヴェーダに中継して貰っていた。あれに加わりたいっ!!


 フェンリル親子は伏せの状態で寝ている、ように見えるが……

 大魔王の覇気が凄いのでスコルとハティは寝たふりをかます。



 熱弁を披露した大魔王は、心強い同志を得た事にご満悦。


 話題を次に移す。



「さて、本題はこれくらいにして、雑談に移ろうか。そうだなぁ、ナオキ君の次なる動き、次の相手について、これでどうかね?」







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