第176話「いやホント、何でですか……」





 第百七十六話『いやホント、何でですか……』





 イタリアのシチリア島から来たマフィアのボスが……

 何故、大森林のダンジョンに居るのでしょうか……


 低能な僕には割と本気で理解出来ない。


 用意した覚えのない銀色毛皮のソファーに座る、黒いダブルのスーツを着た金髪碧眼オールバックのボス。


 七億人くらい殺したお顔をしてますね。イケメンなのに不思議です。


 って言うか、ボスが座るそのソファーをよく見たら狼だった。


 スコルの三倍くらいある狼だった。三十メートルは超えているんじゃないだろうか。頭痛を覚える。



『あれでも極限まで小さくなってるんですよ?』



 元はハイジクララ山脈をまたいで歩けるサイズだっけ?


 いやぁ~、ちょっと想像――



『それも縮小されたサイズですね。アレは惑星を呑み込めますから』



 君が何を言っているのかワカラナイヨ……


 それに何だ、あの構成員の数は……

 街中が黒服だらけだったじゃないか……



『ファールバウティの血族ですね、つまり貴方の親戚です、良かったですね親戚が増えて』



 多すぎ草生える。お年玉で破産必至ワロタ。

 あ、俺まだ十八歳だから貰う方か、ラッキー!!


 ってなるかボケ!! それ落とし弾や!!

 ゴリラの鉄砲玉ヒットマン出来上がりっ!!


 こんにちは、ゴリラ13です。



『はいはい。そんな事より、王皇姉妹は楽しそうですね、何よりです』



 それな。


 王皇姉妹がボスと気軽にお話している。


 ゴッドファーザーロキのファンだから一緒に連れて来たら、挨拶もそこそこに突撃。


 すでに『お父様』とか『父上』とか呼んでる。


 彼女達は父親を目にすることが無い、父親を知らない、そこも彼女達が好感を得たポイントだろうか、すごく仲が良い父娘に見えます。


 メチャとラヴは俺が座るソファーの後ろで、いつもの様に立っている。ボスの威厳に委縮しているね。


 ロキお爺ちゃんに呼ばれたスコルとハティは、俺が座るソファーの前で伏せ状態。そして目が死んでます。怖いよな。親父と爺さんがアレはちょっとなぁ。


 まぁ、一番酷いのは……



「いやぁ~好い男だねぇ、ヘルには勿体無いよっ!!」


「あ、そっスか、えへへ……」


「夜もスゴイねぇアンタ、いつも見てるよ……、でも、今ので満足してる?」


「あ、ハイ、とても、ハイ、満足っスね……」


「まぁ、嫁さんが目の前に居るからねぇ、そう言うしかないか。とりあえず、ションベン臭いガキ共に飽きたら……アタシを呼びな。ね?」


「あ、ははは、そっスね、う~ん、あ、う~ん、そっスね」



 伏魔殿パンデモニウムの迎賓室(ロキ用)に入ってすぐ、アングルボザさんに捕まった僕。


 彼女は流れるように僕と同じソファーに座り、猥談をしてくるのです。


 先ほどから、僕の右腕は義母のパイスラッシュに攻撃され、股間に悪影響を与えております。


 鋼の意志を発動しても、僕の股間が鋼を溶かすっ!!


 何故なら、お義母かあさんが、全裸だからです。



 裸で、パイスラッシュ。



 オカシイでしょ……

 誰か助けてクレメンス。


 美熟女、義母、全裸に鎖、過剰なスキンシップ……くふぅ!!


 全て俺に効果絶大、勃起不可避の欲張りセット!!


 このままでは俺の理性とペニスが限界を超え、欲張りセットお持ち帰りで白因子ブッカケ祭りに――



「好い女だろう、俺の嫁さんは。なぁ、ナオキ」


「あ、ハイ、そっスね、最高ですね、ハイ」



 ちんちんスンてなった。

 ロキパパのお蔭で僕は大惨事をまぬがれたようだ。


 なお、義母のパイスラッシュは続行です。


 トモエとイセは『母と息子のスキンシップ』的な判断なのか、僕と義母に何も言いません。



『その甘い考えが、貴方の夜を悲惨なものに変えるのです』



 言い方。


 悲惨って言うな。

 俺の夜は毎日が幸せだ。

 物足りないくらいだぜっ!!


 王皇姉妹が一斉に俺を見て口角を上げた。


 あぁ、ヴェーダさん、駄目でしょ……


 言っちゃ駄目だよ……

 言うなよバカァァァ!!

 人殺しの顔だよアレ、バカァァァ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 少しお茶会的な雰囲気になったが、ロキさんは妖蜂と妖蟻の在り方を褒めていた。『優秀な娘が出来て嬉しいぜ』とイケメン親父。カスガとアカギもニッコリ。


 一時間ほど会話を楽しみ、惜しまれつつ王皇姉妹は仕事が有るので退室。自由に動くカスガとアカギを見ると、筋斗雲を贈って良かったと思いますな。


 よしっ、次は僕の番ですね。

 誰を殺しに行けば良いんですか?


 ロキさんが干し芋を食いちぎって咀嚼。カッコいい……



「さて、新しい息子ナオキ」


「任せて下さい、誰を殺しましょうか?」


「ははっ、殺してぇヤツが居りゃぁ自分で殺るさ」


「あ、そっスね」



 ごもっともっ!! たはーっ!!

 シブすぎるわこの人~、すこ。



「先ずは礼が言いたくてな。丘陵街の神像に続いて、この伏魔殿も良い、ルシフェルと同じ城に住むのも祀られるのも変な気分だが、悪くねぇ、上出来だ」


「有ぁーり難うぉ御座いまぁーすっ!!」



 さすがマフィアの大ボスだぜっ!!

 誉め言葉は有るけど礼の一言が無いっ!!


 そこにシビれるけど憧れはしないかなっ!!



「さっきの嬢ちゃん達、妖蜂と妖蟻だったな、アイツらの純粋な信仰心も良い、久しぶりの感覚だ、日本人が送ってくる楽し気な純粋とは違うな、もっと宗教的か」


「あ~、そうなんスね。まぁ、魔族は魔界の住人を精霊的な存在だと思ってますから、それもあるかなぁ」


「あぁ、そうみてぇだな。地球じゃ味わえん信仰だ、美味うめぇ」


「あはは、そりゃ良かったっスね」


「ところで……ヘルは、そう、うん、スマンかった」



 あはははははっ!!

 オモロすぎて芝3200、ウケるw


 感謝を告げない魔王が謝罪www

 娘の事で頭を下げる極道の組長www

 義母も俯いてパイスラッシュ外すwww



 何でですか……



「え~っと、スマンて、何がスか?」


「あぁ~、ヘルは~、アレなんだよ、言わせんな」


「あ、ハイ、そっスね、サーセン!! ところで、そのヘルさんは来ないんスかね?」


「何言ってんだおめぇ、ヘルが居る場所は冥界だ」



 ん?

 知ってますが?



冥界ヘルヘイムに居るから冥府の女王なんじゃねぇ、そこにヘルが居るから冥界なわばりになって冥府いえが出来るんだ」


「え~っと、つまり?」


「ヘルが下界したら、そこが冥界になる」



 ファーーww

 ヒドすぎww


 俺が何をしたって言うんだ……

 嫁さん全員の虐殺性が高杉晋作……



「ヘルの遊び場に追加出来たのはアートマンの所だけだ。ヤツは自分や周囲の根源を『不変』に出来るからな、ヘルの権能も効きやしねぇ。つまり、【真我】の息子であるお前なら……ワンチャン有るぜ」



 何のワンチャン?

 あんたが座ってるワンチャン?



 どっちも要らねぇんだけど……







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