第178話「息子の為に動いた……?(困惑)」
第百七十八話『息子の為に動いた……?(困惑)』
【伏魔殿・ルシフェル側迎賓室にて】
「さて、本題はこれくらいにして、雑談に移ろうか。そうだなぁ、ナオキ君の次なる動き、次の相手について、これでどうかね?」
大魔王が次の話題をロキに振る。
ロキは右眉を上げて小首を傾げた。
「ナオキの? 次に殺る相手の事か? あぁ~、ヴェーダの情報で見たな」
「それだ。何やら、この森の北に在る洞穴に頭の悪いトカゲが居るようだね。英雄のトカゲ退治はどこの世界も変わらないなぁ」
僕達はそのトカゲを警戒しているんですが……と、眠ったふりを更に向上させ『真・眠ったふり』を発動するスコル。
それを感じたハティも『真・深い眠りのふり』を発動させた。
息子達の不甲斐無さに肩を落とすフェンリル。少し教育が必要だと『真・モンスターペアレンツ』を発動。落ち着いた昼寝は出来そうにない。
トカゲは美味しいから
ビビる孫達やお怒り気味の息子を意に介さず、ロキは娘婿の次なる獲物を脳裏に浮かべ、嘲笑する。
「コアのトラップに引っ掛かったマヌケな。不自由と滅びを天秤に掛けたマヌケが『勇者に勝って英雄に敗れる』ってとこか、滅びの美学が解らねぇヤツにゃぁお似合いの結末だ」
「そうだねぇ、あのトカゲは『
「たとえ選んだ先が滅びを加速させるものだったとしても、最期の意地で『長城を越えて大暴れ』すべきだったな、人間共をたらふく食い散らかせば活路は有った。大被害を与えつつ、血反吐を吐きながらでも堂々と撤退できれば後々の牽制にもなる、それが正しい足掻きだ、マヌケ野郎は
「クックック、厳しいな。まぁいずれにせよ、あのトカゲはナオキ君にコアごと喰われてお終いだね。よし、次の話だ、次は……」
大魔王の話を軽く振った右手で制し、ロキが疑問を語る。
交互に議題を出す暗黙の了解が出来上がった。
魔王二人による不穏な雑談は数時間に及んだが、まだまだ終わりが見えない。
「俺達は何故、この惑星で自由に動けるのか? ゲームに参加してねぇから当然だ、ヴェーダもな。では何故、この惑星の神々はゲームに参加してねぇヤツがいないのか? アートマンを含める『異世界神』共も全部参加してやがる」
「ふむ、我々との違いは……この『宇宙域』に在る神域の有無か、しかしアートマンも持っていなかった……が、息子の存在が転生先との通路を開き、地球とは別の神域を得るに至った。我々もアートマンが構築した通路を利用している、となれば……鍵は恐らく南エイフルニアの――」
思った以上に真面目な雑談だった。
本題の方が雑に扱われていた。
スコルは本物の睡魔に襲われ苦しんでいる。
ハティは『真・起きてるふり』を発動、熟睡に入った。
フェンリルはキレた。明日の修行が楽しみだ。
アングルボザは途中退席。
旦那に『山菜“狩り”へ』と告げて転移。
下腹部が
魔王達の話はアートマンも聞いている。
アートマンはヴェーダが放った眷属蟲を通してエイフルニア大陸の情報を収集。そこに信徒は居ない、しかし息子が統べる眷属蟲のお蔭で無駄な労力を減らせる。
蟲の進出状況から得られる情報は北部地方に限られるが、蟲の数は膨大だ、神の眼で上空から観察するより地上の詳細な状況を把握しやすい。
いずれ息子が征服する土地かもしれない、アートマンは少し頑張って情報収集を続けた。
しばらくすると、蟲の一匹を摘まみ上げる幼児を発見。
幼児は蟲の目を見つめて一言。
「いっしょ?」
アートマンはカカと笑って応えた。
『『うむ、一緒』』
『『同族よ、参れ』』
『ちょ、ちょっと待ちなさいアートマンっ!! あぁぁぁ~』
嫁会議を中断してツッコミを入れるヴェーダ。
アートマンによって神域に招かれる幼児。キョトン顔。
幼児を見たシタカラ達や天女衆が即行で膝を突く。本能が発する警鐘に従った正しい判断だ。
ゴム丸君は跳び縄(義叔父)を持って偉大なる祖母の後ろへ避難。跳び縄は白目を剥いている。
ヘルは仕事が溜まったので帰宅中。終えればまた来る。居なくて良かった人の代表格定期。
怪物と怪物の
雑談中の魔王二人も、会話を止めて天井の一点を同時に見上げる。
「おや、これは……」
「何考えてンだアイツぁ……」
「面白い。ではロキ、我々も参ろうか」
「何も考えてねぇんだろうなぁ。はぁ……行くかぁ」
ロキと大魔王が姿を消す。
フェンリルは片目を開けてチラリと天井を見たが、トカゲ狩りの段取りを考える方が大切なので、そのまま目を閉じた。今回は同行しないようだ。
スコルとハティは父に尊敬の眼差しを向けた。
さすがパパ、『狩りより重要なモノなど無い』は本音だったんだね!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日、中央神域から届いた『浅部第98宇宙域終了のお知らせ』が神界を恐怖に陥れた。
魔族に対する加護剥奪で致命的な失敗を犯した『豊穣神オッパイエ』、彼女は自分の神域に引き籠っていたが、少しでも自分の被害を減らそうとヤナトゥ陣営を注視していた。
豊穣神の象徴たる美しかった金髪も乱れ、白く美しかった肌は荒れている。豊満な胸は健在だ。全裸なのは信者達の望みでもある。
そんな彼女へ捧げられる信仰心が減ったわけではないが、気の小さい彼女にとってヤナトゥ関連のアレコレは心身を削る負担となった。
だからこそ、何か助かる道はないか、他の神々と協力せず自力で何とかすれば誤解を解けやしないか、そう考えて注視していた。
メハデヒ王国には少ない豊穣神の信者だが、運良く自分の加護を持つ人の子が丘陵街に入った。
豊穣神の加護を持つその人物は信仰心など持ち合わせていなかったが、むしろ好都合、これは重畳とオッパイエは胸を撫で下ろす。
豊満な胸が嬉し気にプルンと跳ねた。
しかし、運命は残酷だ。
『お前だよ、見ているな、私は大魔王の末娘――』
オッパイエは生まれて初めて吐血した。
そんなのあんまりだ……ヒドいよ……、嘆くオッパイエ。
彼女はさらに体調を悪化させ、三日ほど寝込んだ。
まだよ、私はまだ終わらないっ!!
重い体を叱咤してベッドから起き上がり、次なる策を考える。
先ずは敵意が無い事を証明すべきだ。
むしろそれ一本に目的を絞った方が良い。
血色の悪い両頬をペチンと叩き、カツを入れ直す。
意気込み新たに右足を前に出した瞬間――
『中央より緊急速報、森のヤナトゥが幼きヤナトゥと接触、接触後に神域へ招き入れた模様。……我々は、以降の連絡を絶つ。すまない、武運を祈る』
「う、うふ、うふふ、あははは……グスン、自首、しよう」
余りにも無慈悲な悲報に心を折られたオッパイエ。
儚く微笑みながら姿見の前に立ち、乱れた髪を整える。
せめて最期は綺麗な姿で滅びたい。緑眼から涙が零れた。
果たして、彼女が選んだ道に光は射すのか……
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