第166話「真摯にっ受け止めトゥアァッハァー」
第百六十六話『真摯にっ受け止めトゥアァッハァー』
ヴェーダの曖昧な息子保護宣言に心を痛めた俺は、軽く体を動かし、稽古を終えたメチャとラヴを肩に乗せ、ションボリ歩いて皇城へ向かった。
城に入ったら一度部屋に戻り、姿見で身だしなみの確認。
うむっ、好いゴリ構えだっ!!
今日は僕、ちょっと気合が入っております。
先ずはアカギに……
あ、メチャとラヴは待ってろ。
少しお留守番な。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ぐぬぬぬっ……
好いた女に泣かれるのは、それが歓喜の涙であっても苦手だな。
いささか居心地が悪いゴリラは、この場を立ち去りたいのですが、妖蜂と妖蟻の近衛がゴリラを捕獲して放しません。
彼女達は俺を掴んだまま、大森林の大空を見上げる。
そう、ここは皇城ではない、地下帝国の外だ。
そして彼女達が見上げる空には――
「姉上、御気分は?」
「……最高だ、最高だよトモエ」
「姉様、ほら、あれが長城」
「ああ、そうなのね、そう……」
筋斗雲に乗るカスガとアカギ、それぞれに付き添う二人の妹。
先ほど、勢いで別々に結婚を申し込み、結婚指輪ではなく結婚筋斗雲を贈った。
一人用の小さい筋斗雲だが、アカギとカスガに贈ったのは大隊六百五十六人が余裕で乗れる大きさ。妹の二人には中隊百三十一名が乗れるサイズを贈った。
眷属化で蟲腹が縮み、人の手を借りれば移動が出来るようになったアカギとカスガだったが、あの二人はそこを気にして積極的に動こうとはしなかった。
どうにかしてやらねば、初めてアカギを見た時にそう思ったが、彼女達が妹や娘達からの手を借りず自分の意思で『自由に動く』事が出来るようにするには、俺の力じゃ無理だった。
しかし、偶然と必然が重なった結果、俺は真人に成って望みのモノを手に入れた。
筋斗雲を
これであの二人を解放出来ると思った。
もちろん物理的な解放だ、立場ではない。
結婚筋斗雲をヴェーダに話すと、彼女はコロコロと笑った。初めて聞いた彼女の笑い声だ。嘲笑的なのは聞いてるけどなっ!!
ヴェーダは『好きになさいませ』と言った。楽しそうに。
なので好きにしましたっ!!
アカギ、カスガ、イセ、トモエ、地位と歳の高い順に一人ずつ、個室で二人きりになって結婚を申し込んだ。
アカギとカスガは落ち着いた態度で「末永く」と答えてくれたが、妹二人からは感激のハグ……ベアーハッグですね、熊の抱擁、それを喰らいまして、骨がね、「骨ってこんなに
その後はご覧の通り、姉の横に妹が座り、二つの筋斗雲が大空を並走しております。妖蜂の護衛中隊も一緒に飛んでおります。ワイバーン達も飛んでるなぁ。
カスガとアカギが泣き止まないので、トモエとイセは離れません。
下で見守る妹や娘達も泣き止まない。
メチャとラヴも泣き止まない。
眷属の女衆はみんな泣いてる。困った。
男衆がガンダーラ万歳を叫ぶ。何でだよ……
『このまま披露宴の流れですね。結婚式も披露宴も魔族には馴染みの無いものですが』
「え~っと、じゃぁ……FPで干し芋とか大放出しますね」
『皆に伝えます』
一拍置いて、大歓声が沸き起こった。
ハイハイ、輜重隊の皆さ~ん出番ですよ~っ!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あぁ~、シンドイ。
昨日は盛り上がった、魔竜が居るので酒は出さなかったが、皆は楽しそうだった。地下帝国では夜遅くまで騒いでたな。
なお、皇城の一室で上がった声にならないゴリラの絶叫は、室外に聞こえていなかった模様。
って言うか、眷属達が夜中まで騒がしかった原因は俺にもある。
コアでもある俺はダンジョン化せずとも眷属創造が出来るので、基本五種のゴーレムとスケルトンを出してみたら、案の定マハトマ種で強かった。
なので、レベルを1にして夕方から訓練場に放出。
まぁ大人気だったね。ガンガンぶっ壊してた。
イセとトモエ用にも用意したよ、レベル29のヤツをな。進化手前の上限レベルですね。
ふぅ……あの時の俺を殴り殺したいです。
あれが『恐怖』と言うやつか……っ!!
爆散とか溶けるとか、そんなもんじゃねぇんだ……っ!!
あ、何か風が吹いたなぁ、と思ったら敵が消えるんだ。
イセもトモエも動いてないしスキルも魔術も使っていない。
くっ、思い出すと震えてくるぜっ……
オカシイよ、あの二人はオカシイって……
絶対あれだよ、俺わかったもん、世界さんが用意した殲滅兵器だよあれ。俺とかさ、魔皇帝とかさ、調子に乗った奴ぶっ殺す用だよ絶対。
じゃねぇとオカシイよ、無理。
真人? で? みたいな。
レベル高いの? で? みたいな。
だって見えねぇもん、何にもっ!!
強すぎワロタ。草生えるわホンマ。大草原不可避。
そして結婚初夜ですわ~、
ヴェーダに強制勃起されました。
オカシイでしょ……
レベルが上がったその二人をっ、筋斗雲ベッドに寝転ぶ殲滅兵器二体をっ、虚弱なゴリラにどうしろと?
『天井のシミでも数えていれば終わりますよ』
うそやろ……
お前も大概オカシイよ……
――とまぁ、そんな感じで、今朝はシンドイんです。
仕事とか稽古とか、今日は休みます、休むんです絶対。
だがしかし、何もしないと言うのは無理だ。やる事はある。
彫像は趣味みたいなもんだし、一人になって落ち着ける。
ですので、アングルボザさんを彫りたいと思います。
略してボザる、今日はボザるぜっ!!
早速、神木倉庫から巨岩を出します。
アートマン神像より大き目で良いでしょう。
巨岩を抱えて森の中へ。木々に囲まれ作業し易い。
丘陵ダンジョンで一度創造ボザったから容姿は分かっています。
では……
巨神……巨神なのです?……っ!!
「駆逐してやるっ!!」
僕は巨岩の酸化鉄などを駆逐しましたっ!!
続いて余分な部分を端から駆逐しますっ!!
「駆逐してやるっ!! 駆逐してやるぞぉっ!!」
真人に成った僕の爪
ガリガリと掘り進みます、僕の進撃は止まりませんっ!!
うおおおっ‼ 何かアガって来た、アガって来たぞーっ!!
アガって来たので自作のドイツ語っぽい歌を歌いますっ!!
「アフィフィはっふんウィンそひイェーガーッ!!」
はっ!! はっ!! はっ!! はっ!!
ほっ!! そんフィんうぃっふんイェーガーッ!!
はっ!! はっ!! はっ!! はっ!!
ほっ!! そんフィんうぃっふんイェーガーッ!!
「……ふぅ、完成、だっ!!」
岩とは思えない柔らかさを演出した豊満な胸部、肩から斜めに掛けた太い鎖がその巨蜂に挟まれている。
鎧? 要らんね、巨神に鎧など無粋も無粋、冒涜だっ!!
巨神は全裸、衣服など駆逐してやるっ!!
左右から結い上げられた髪は後頭部で纏められ、アクセントに花飾り。何の花かは分からないっ!!
手に持つ武器は旦那のロキが職人を騙して作らせたヤツをパク……オマージュした。
右手には雷神トールが持つ
両脚を広げて腰を落とし、眼光鋭く敵を見据え、敵を待ち構えるように前へ突き出す両腕、神槍と戦槌が顔の高さで交差する。なお、顔は可愛い系です。
局部が丸出しなのは……芸術だからヨシッ!!
「これで……いかがでしょんンッハァアッほんぁァアアッーー!!」
た、大変、お喜びの、よう、で……ビクンビクン。
し、神木まで、はこ、運ばねばンハァァオッホンァアッーー!!
も、もう、赦して下さい……
感謝は、真摯に、受け止めアッハァー、ンフッてぇーっ!!
ヤメテ、政治家の、謝罪会見、みたいな、声が、出るんです……
ガクッ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます