第165話「僕の息子を護って(哀願)」





 第百六十五話『僕の息子を護って(哀願)』





「出来ました、男の子です」



 彼女はそう言って、俺の中へ戻った。

 正確にはアートマン様の神域へ行った。


 それはもう素敵な笑顔でしたねぇ、まぁ、ヴェーダなんですけどね。


 嘘やろと、二回やぞと、早すぎんかと。絶句。


 どうやら、受精や着床は神に必要な過程ではない模様。


 朝起きたらヴェーダからそんな報告を受け、やや呆然としつつ顔を洗い、口をすすいで神木へお参りに。


 当然のようにメチャとラヴが付いて来ます。


 この二人はヴェーダから念話で報告があったのだろう、熱い視線を感じる。股間に感じる。


 メチャは何かをシミュレーションしているのか、「入るかなぁ」とブツブツ言っている。まだ入らんぞ、多分。


 ラヴは腹部を撫でて俺の顔を覗き込み「にへらぁ」とニヤける。待て、カスガとアカギが先だ。トモエとイセの二強も居るんだぞ、逝き急ぐな!!


 ピンク色の空気を漂わせる歩みの遅い二人を肩に乗せ、神木までトコトコ歩く。


 オッスオーッス、眷属達に手を振って挨拶。


 あんまんさん・あーん!!


 子供達が大人の真似をして俺を拝んだ。可愛いですね。マハトマ種の顔面は凶悪だが小さいので可愛いです。アンマンサーン。





 神木に辿り着くと、巫女衆や宮掌衆がいそいそとお勤めに励んでいた。浅部統一後は参拝客が増えたので忙しそうだ。


 参拝客? いや参拝者?

 ヴェーダの知識ではどちらでも良いとなっている。

 参拝者は神を祀る場所へ来た客だから、だったかな。


 オッスオーッス、はいはい、アンマンサーン!!


 それなら神殿建てた方がいいな、みんな母ちゃんの客だ、建物が在った方が客を迎え易い。あふぅん、有り難う御座いますっ!!


 うむ、神殿を建てましょう。


 と言っても、神木周りは結構な範囲で綺麗な花が植えてあるしなぁ、魔竜をブッ殺したら小さなお堂を作ってダンジョン化して……その中を拝殿にするのはどうだ?


 いや待て、それはショボイ。お堂の中をダンジョン化して、その中に巨大な神殿を建てよう、アートマン神殿だっ!!


 その左右にママ友の神殿を増設していけば良いのでは?


 ッッッ!!!! んっほぉぉぉ!!!!


 あふぅ……っ!! 撫で方が……違うっ!! 激しいっ!!


 こ、これは、アングルボザさんですかな?

 アートマン様の神域に居るから出来るのか?


 んあぁ、有り難う御座いますっ!! 頑張ります!!


 こりゃぁ、神殿も神像も気合入れて造らねばっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 朝の礼拝を終えて、次は朝の稽古だ。


 稽古場には、死にそうなレインと瀕死のジャキが居た。

 ミギカラは居ないな、まだ来てないのか?


 さて、ジャキはヌかれたんだろうと察しが付くが、レインは何だ?


 ラヴとメチャを肩から降ろし、体育座りで俯くレインの隣に座る。



「どうしたお前?」

「……マミアが」


「マミアさんが?」

「……入れっぱなしで」


「お、おう、そうか」



 どうやら、俺と同じ状況だったようだ。

 レインは声が渋いので、悲壮感がパねぇ……


 メチャとラヴがマミアの所に走って行った。

 お前らの血は何色だっ!! 俺も連れてけよ~(笑顔)


 仲間がいると思うと笑顔になれるねっ!!

 レインの肩をポンと叩き、「出来ちゃった」と言ってやった。


 沈んだレインの肩がビクッと跳ねる。そして小刻みに震える。

 恐る恐る俺を見上げ、「……何が?」とレイン。


 俺は満面の笑みで言ってやったぜっ!!



「ジュニア、ヴェーダの」

「……ッ!!」



 レインが勢いよく首を回しマミアを見る。そして振り返りまた俺を見る。



「……出来たら、つがいに、なる、のか?」

「俺は出来る前に結婚するけど?」


「……子作り連休を、軍に、提案、してくれ、兄者」


「うむっ、月に一度、五連休を――」

「……長い、死んでしまう、三連休で頼む」


「だなっ、長いなっ、任せとけっ!!」



 よく考えたら、五連は俺も危ない。

 ヴェーダと王皇姉妹で一日ずつ持っていかれるっ!!


 危ねぇ危ねぇ……フゥ。



『五連休で宜しいかと』



 ッッ!!!!

 か、帰って来たのか、お帰りなさい……



『はい、ただいま、ウフフ。やはり、貴方の中は心地良いですね』



 それは僕が言うセリフだと思うのです。

 まずそんな下品なセリフは言いませんがっ!!



『そうですね、では朝の稽古を早々に終わらせて、皇城に登りましょうか。あの子達が待っておりますので』



 おっと、そうだった。

 ところでミギカラは何してんだ?



『朝のお勤めですね、二十人がかりですから時間が……』


「二十って、え、死ぬの?」


『立派な嫡子と多くの子孫に恵まれると良いですね』



 跡継ぎの話が出るほど白因子確保したのっ!?


 もう生死問わずなの? 死にキングなの?

 どんだけ絞るんだよ南浅ゴブリンの女は……


 いや待て、二十人だろ、ゴブリンキングで二十人が限界……っ!?


 ば、馬鹿なっ……!!


 俺は横になって動かないジャキを見る。

 レインが軽く首を振った。



「……あれは駄目だ」

「そ、そんなにか、四十八人だからな」


「……血が混ざった水、それしか出らんと言っていた」

「え、は、何その現象、初耳なんだけど、怖ぇんだけど」


『掘削ドリルがドリル型放水機に変わっただけですよ、面白い』



 いや面白くねぇよ?

 レインがドン引きして震えてるじゃねぇか!!


 クソう、こんなに緊迫した状況なのにっ、全然まったくこれっぽっちもジャキが心配にならないっ!!


 俺の心配はヴェーダがジャキのペニス限界に興味を抱いた事だっ!!


 ジャキが四十八人なら、ラージャは?

 そんな事を考えつつ王皇姉妹に報告しているんだっ!!



『さすが私のマハー・ラージャ、何でもお見通しですね』



 ブホァッ!!!!

 おま、おま、お前ぇぇっ!!


 せめてトモエとイセには伏せてくれよぉぉぉっ!!

 あいつら今日からレベル上げするんだよぉぉっ!!



『大丈夫、貴方の息子は私が護るもの』



 それどっちの息子だよぉぉぉっ!!








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