第158話「服を着て下さい爆発します」




 

 第百五十八話『服を着て下さい爆発します』





 王国から帰る時はいつもハイジ山脈から朝日と大森林を望み、心新たに気合を入れ直すもんですが……


 今回はですね、私ナオキはですね、なんと、『筋斗雲』に乗って大空からハイジ山脈を眺めております。


 岩仙から色々ぶっ飛ばして真人に成った結果ですな。

 出せます、筋斗雲!! 呼べます、筋斗雲!! 乗れます、筋斗雲!!


 真人の前段階である神仙、その神仙状態でも筋斗雲は使えるようですが、まず大きさが違うのです。


 真人は『積乱雲かな?』と絶句する大きさの筋斗雲が呼べます。

 古参の眷属は勿論の事、妖蜂と妖蟻の大軍を乗せても問題無い大きさ。


 あのヴェーダをして『これ筋斗雲じゃないです……』と言わしめた怪物雲です。


 今はメチャとラブ、そしてスコルとピクシーズが雲の上を駆け回っております。非常に微笑ましい。


 そんな微笑ましい様子を見ながら、ハイジ山脈を眺める私は何をしているのか?


 膝枕されています。

 黒髪褐色全裸美女に膝枕されています。


 どうせ悪魔なんでしょう?

 そう思うかもしれない、残念っ!! 正解は――



「良い景色ですね、ラージャ」

「んむっ、好い太ももだっ!!」

「んもぅ、ウフフ」



 正解は、僕から神気供給を受けているヴェーダでした~っ!!


 真人は仙気から神気が練れるんだなぁ、そう思っていたら、ヴェーダが『神気下さい』と言って来たので、練り上げて渡したらこうなった。




 人類の魔核と同様に、神の胸部にも神核が有る。人類が魔素の薄い場所で活動出来ないのと同じで、神々も神気の薄い場所では活動し難い、出来なくはない。無神気の場所はさすがに困難らしいが。


 地上は神気がクッソ薄い、ほぼ無い。当然だ、神気を産出するモノが無いからな。俺みたいな真人(神仙)や少数の強者・聖職者等が、天から注がれる僅かな神気を微かに感じ取れる程度だ。


 ヴェーダは神格と神核を持つ知識の神。元々はアートマン様の先輩神で、ヴェーダ教の主神だった。色々あって、アートマン様と同化された後、忘れ去られた神となって滅びを待った。


 神々の同化、もしくは同一視化されて、そのまま消滅。人間が望んだ事だが、このパターンで滅ぶ神々は多いようだ。


 ヴェーダの場合は、同化から数千年後、日本のサイコパスが面白くて見ていたら、そいつが死んだんで、自分達が滅ぶ前にその魂を一から育てましょう的な感じになったみたいです。まぁ天罰付きで地獄行から救った形になったがね。


 そして、ヴェーダはアートマン様に分離されて俺に宿った。

 俺が死んだ時、俺と会話していたのはヴェーダ寄りのアートマン様だったようだ。


 滅びを前にした神と言っても神核は有る。神気の無い世界では活動出来ない。ほんのりアートマン様の神気を宿す俺の中なら問題無いが、ヴェーダが体外に出られる時間は僅かだった。



 だがしかし、頼り無いサイコゴリラは今回やりました!!

 自分の仙気を神気に変換する事が可能となったのです!!


 俺の精気で体を造っていたヴェーダは、それを神気に変えて体を造り直す。


 とんでもねぇ量の神気を持って行かれましたが、真人ダンマスゴリラの僕は仙気量もぶっ壊れているので、変換効率とか無視で神気を供給しました。


 相棒の為ですから、そりゃぁ頑張りますとも。


 いやぁ~参ったね、ここまで美しいとは思わなかった!!

 腕は四本有るし目は三つ有るけどね、美人だよっ!!

 第三の目はオデコに有るよ!! 普段は閉じてるよ!!


 その目が開くと太陽が一度消えて、七個に増えて天に輝き大地を燃やすよ!!


 意味が解らないよ……


 第三の目が閉じたままである事を願うばかりです。



「ッン、そんなに揉むと開きますよ?」

「スミマセン柔らかいんでつい……」



 しょうがないじゃないかっ!!

 顔のすぐ上に美しい巨峰が並んでいるんだっ!!

 褐色のっ巨峰がっユサユサとっ揺れてっ!!


 さらにっ、俺の後頭部にはっ……後頭部にはそりゃぁもう神秘的で卑猥な秘境がっ、俺の息子はバクハツ寸前だぜっ!!


 お前は何で全裸なの?

 大好きですっ!!



「最後のは口に出して言いましょうね」

「いいや言わんね、恥ずかしいから!!」


「魔族の女性を口説いているじゃないですか」

「…………ウルサイな、恥ずかしいから言わんです」



 ウフフと笑ってゴリラの髪をくヴェーダ。

 まぁ、幸せそうで良かったです。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 まったく、甘酸っぱい空気は苦手だぜっ!!


 そんな事より、長城が近くに見えてきたので眺めていると、何かピーンとキてしまった。


 ヴェーダも俺に何か感じたようで、髪を梳く手を止める。



「どうかしましたか?」

「最初のダンジョン創造は、キンポー平原にしよう」


「あら、それは……フム、なるほどサブダンジョンですか」



 考えがダイレクトに相棒へ伝わるってのは、こういう時に限ると楽で良いですねっ!!


 真面目な状況で少しでもエロい方に思考を向けると……痛い、心臓を針で刺された感じがした。トモエとイセとは違って内部からダメージが入るので注意が必要だ。中に居ても外に出てもヤレるんだねそれ。


 それは置いといて――



「長城の王国側にダンジョン造れば、もし魔竜がダンジョン戦を挑んできたとしても、ガンダーラの被害は減る」


「劣勢になったらサブコアを破壊なり放棄なりして、サブマスと配下は確保していた逃走経路から避難ですか、筋斗雲を上空に待機させておきましょう」



 カンダハル郊外に新しく小さいダンジョン造って、サブマス達を避難転移させたら新旧のダンジョン破壊ってのもイイネ!!



「攻め込んで来たって連絡が来たら、速攻で北伐って手もある。手薄になった魔竜のダンジョンなら通常より攻め易いだろ」


「そうですね、入り口から浸食しつつ攻略すれば、ダンジョンバフに手こずる事も無く、ほぼ同じ条件で戦えます」


「へへへ、まぁ先ずはサブダンジョンで魔竜釣りから始めるさ。新しいダンジョンが出来たら、王国も喜ぶだろ。夜のサービス付きだぜ?」


「千客万来ですね、楽しみです」



 あとはサブマスの選考と、ダンジョンモンスターの強さを考えないとな。まぁメインは悪魔なんですが。


 モンスターが強すぎると客が減る。弱すぎれば底辺冒険者用の養分になるだけだし人気も出ないだろう。その辺りは手に入るお宝次第だろうが……



 う~ん、クッソ安い商品でボッタクリたいですねぇ~……


 おっと、その前に創造場所決めなきゃなっ!!

 キンポー平原に良い場所在ったかなぁ……



 ……在るねぇ。




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