第156話「監督っ、そんな、ヒデェよ監督っ!!」
第百五十六話『監督っ、そんな、ヒデェよ監督っ!』
【地下帝国内南浅王邸での一幕】
妖蜂女王カスガと妖蟻皇帝アカギは、ほぼ同時に南浅王ミギカラを皇城に招いた。
キングに対する礼としての先触れも無く、両族の使者が突然同時に訪れたミギカラ邸は重い雰囲気が漂ったと言う。
何か心当たりが有るのか、南浅王は遠くを見つめ神界のシタカラ達に「今、行くぞ」と呟く。
南浅王ミギカラの下半身はユルい。有名な事実だ。
同意の下であれば即コーマン、妖蜂と妖蟻の一般市民に挿入していたとしても不思議ではない。
これは種族を超えた恋愛とも言える。大猿王も尊妻も怒る事は無い、むしろ子孫繁栄の為に推奨するフシも見受けられる。
だがそれは言わば身内での話。妖蜂と妖蟻、両国が同じ道理で一種の『やり捨て許可』を出すわけが無い。
悲しいかな、キングとしての巨体と偉容、主君には劣るが溢れるフェチモンは異性を
たとえそれが王皇両族に直接関わる三内親王や三大公の係累だったとしても……無いとは言えない、それが俺達のキング・ミギカラ!!
妻ウエカラは誅滅を恐れ、若い妻達と娘、そしてシタカラ達の忘れ形見たる孫達を連れて族抜けを思案する。
非常に重たい雰囲気に両族の使者は困惑。
互いに見つめ合い首を捻る。可愛い。
とりあえず要件を告げましょうと妖蟻の使者が勅を読み上げた。妖蜂もそれに倣う。
のちに書籍化されたベストセラー『南浅王遺訓』によると、ミギカラはこの時の様子と心情を一言で表現した。
南浅王曰く『死線』、と。
老兵の心も状況もデッドラインだった。
一杯一杯だった、セクハラはもうしませんとアートマンに誓ったほどだ。セックスはしませんと誓わないのが、俺達のキング・ミギカラ!!
大神への願いが通じたのか、使者の要件は『大猿王と尊妻の指示を両陛下から皇城で聞くように』、ただそれだけだった。
ミギカラは渾身のガッツポーズをキメた。
そのガッツポーズに不信を抱いたウエカラと若妻達、南浅王の株はどこまで下がるのか、彼はどれだけ下げるのか、誰にも分からない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【聖地カンダハル神木前広場にて】
「――と言う事で、主様がダンジョンマスターに成った」
ニヤケた口元を無理やり一文字に結び、敬愛する主の偉業と尊妻からの指示を語る南浅王ミギカラ。ミギカラお爺ちゃんは今、生きている実感を気分よく味わっているのだ。
彼を囲むのは族長や眷属の幹部達。
ジャキとレインも当然居る。
「……兄者がなぁ、予想も出来なんだ」
「ブッヒッヒ、眷属適性【アクマ】って何だよw」
「それについてじゃがなぁ、その麗しきアクマ達が勤める娼館を建てると、主様が決めたようじゃ。女王陛下と皇帝陛下も許可しておる」
ザワッ……(勃っ)
ジャキを筆頭とする一部の者達の一部分が敏感に反応した。
レインは「南浅殿がニヤケていた理由はコレか?」と目を閉じ聞きに徹する姿勢になった。
しかし、彼の隣に座るジャキが貧乏ゆすりを始める。
レインは聞きに徹するのは無理だなと思った。
残念な弟分が早速挙手して質問を開始。皆の視線が集まる。
さり気なく距離を取るレイン。義兄弟を解消したいと切に願う。
「そそそそ、それで? 娼館が出来るから何だよ、俺様のドリル舐めてんのかジジィ、おおおお俺には関係ねぇ話だぜ。それともナニか? アクマはドリルでもイケるってのか? ハァハァ」
「うむ、『自在』……そう言うておられた」
ザワザワッ……(勃っ)(汁漏れ)
ジャキを筆頭とする一部の者が過剰に反応した。勇み足の強者も現れた。
さすがのレインも『自在』は気になり聞く姿勢に入る。
鼻息を荒くしたジャキが見事な挙手を披露。
まさに優等生の見本となるべき挙手だ。
ミギカラは良く出来た生徒を温かく見守る教師の様な笑顔で首肯し、悪童ジャキの質問を促した。
「じじじじ『自在』って、何がだよっ!? 走りの脚質か? 大逃げから追い込みまで変幻自在ってか!? ゴブリンジョークなら氏族だけで楽しめジジィ!!」
「さて、ナニが『自在』なのか、ワシは聞いておらん。主様と尊妻様は、それを確認せよと仰せじゃ。あぁ、女衆は相手のアレを見れば判るから、そこまで気負わずともよいぞ」
ザワザワザワッ……!!(汁漏れ)(ピュッ)
ジャキと独身の者達が異常な反応を示した。到達者も現れた。しかしまだ賢者には至っていない。限界はまだ先だっ!!
女性部族長達も冷静を装いつつ聴覚を研ぎ澄ます。
勇敢なラミア族長の一人が蛇体の下半身を波立たせ華麗に挙手。
ミギカラは元気な女学生を応援する教師の様な笑顔で首肯し、質問を促した。
「男娼も、居るのですわよね?」
「そう聞いておる」
「男娼も『自在』となれば、アレの外見だけではなく、持続性や――」
「それを確かめるのが、我らの仕事、そうじゃろう?」
「ッッ!! 南浅王の仰る通り、ですわね」
「うむ、お前さんの氏族からも検証員を出してくれると助かる」
パチパチパチパチ
女性部族長達から勇敢なラミア族長に拍手が贈られた。
彼女は「族長としての責務、それを果たしただけ」と、美しい黒髪を靡かせトイレに向かった。何かを想像したら何かを我慢出来なくなったようである。
ちなみに彼女はチューブトップ否定派の全裸原理主義者としてヴェーダにマークされている。無論、今回の集会も全裸で出席。一部のゴブリン紳士に絶大な人気が有る。ナオキも彼女のファンだ。
その勇敢な女性に触発されたのか、女王代理として出席したハーピーが挙手。
大森林にその名を轟かせるビ・アンカの挙手だ。
エロ爺ミギカラも少しばかり心配になった。
「な、何かな嬢ちゃん?」
「あのねぇ、子供は出来るのぉ?」
「あ、あぁ~、大丈夫じゃよ、出来る。むしろ子作りを推奨しておった」
ザワザワッ……
ザワワワワワッ……!!(ふぅ)
ジャキと大半の男衆に激震が走った。一部が賢者になった。
レインも自分の耳を疑った。思わず質問してしまう。
「……南浅殿、それは、出しっぱなしで良い、そう申されておるのか?」
「うむ。衛生的にも問題無い。随時、尊妻様が診て下さるし、そもそもアクマは病気にならんそうじゃ。
「……いや、そうではない。子は、出来た子への責任は――」
「アクマを娶って生まれた子を一緒に育てるも良し、ただの客として通うだけでも良し。どちらにせよ生まれた子供は皆で育てるしな。アクマは一族を増やしたいようじゃが、必ずしも伴侶を望んでいるわけではない」
「……子供が欲しいなら、
「そうなるな。一族繁栄を望むアクマは子を放さんぞ」
ザ、ザワ……
スン……
少し真面目な話になったので、ジャキ達は若干スンてなった。
落ち着いたところで慎重に勃起を隠すのも忘れない。
ミギカラは族長達に視線を向け直し、男性検証員の選抜を告げた。
ザワザワザワザワッ!!
スタスタスタスタッ!!
ジャキと独身男性が勢いよく立ち上がる。
ミギカラは熱気に包まれる野球部監督の様な笑みを浮かべた。
「選抜の条件は……デカさじゃ」
野球部員達に絶望が訪れる感じになった。
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