第153話「あ~、帰ってどうぞ」





 第百五十三話『あ~、帰ってどうぞ』





 本能、そう、本能だ。

 それ以外に言いようが無い。


 美味しそうなコアが眼前に在った。大猩々は食べた。

 美味しそうな干し柿が眼前に在った。ジャキは食べた。


 同じではないかっ!!



『違いますよね?』


 

 そうですね。

 しまった例えを間違えた。


 食いしん坊な豚を例に挙げたのはミスだ、俺が食いしん坊キャラになってしまう。むしろバカ扱いされる。ジャキってるとか言われたら死ねる。


 まぁしかし、本能に従ったとしか言えないのは確かです。

 何やら体の底から力がみなぎっておりますぞ?



『……っ、馬鹿なっ!! 神仙を超えて真人になっている……何なのこの人っ!! 怒るに怒れないっ!!』



 え、真人? そうなの?

 って怒んないでクレメンス。


 俺的にステータスはオワコンなんだよね、見てなかった。

 確認してみっか……ふむ、なるほど、おやおや~?


 ってか、ダンジョンマスターに成ってますなぁ……

 でもおかしいぞ、外に出られない気がしない。

 あ、入り口まで転移出来るな、皆を指定して……行きますっ!!



「「は?」」

「バ、バウ?」

『これは……』



 よっしゃ、そしてそのまま外に出ますっ、ハイ出ました~っ!!



『有り得ない……いや、そもそもコアを喰らった前例が無いので出来事の是非も可不可も問いようが……ッッ!! ナオキさんっ!! マスターの眷属適性がっ!!』


「あ? あぁ……【悪魔】だな……【悪魔】かよ……っ!!」


『こんな適正有り得……ハァ、何が何だか……』

「バババ、バウワウッ、わんわんおっ!!」


「悪魔呼んでみろって? 落ち着けスコル、創造召喚にはDPと言うものがだなぁ……大量に有るなぁ、何でだ?」


『冒険者を殺したからでしょうか……?』



 いや違うな、これアレだ、コアが貯め込んでたやつだ。

 ポンコツなりにマスターの為を想って貯めてた感じ、何となく判る。


 え~っと、創造召喚っと、フムフム、アレレ~、俺なんか普通のダンジョンマスターと仕様が違うっぽいですねぇ……どうしよ。



『詳しく』


「創造召喚は出来るんだよ、でも、自動で湧き出る魔力溜まりが設置出来ない」

 

『大問題では?』


「う~ん、それがね、あのね、無限湧きのスポットは造れるんですよ」


『ん? ならば問題ありませんね』


「う~ん、それがね、あのね、造れるのが魔界直通トンネルなんだよね、そりゃ無限に湧くよねっ!!」


『大問題じゃないですか……もうやだこの人、助けてアートマン』

「バウバウッ、わんわんお? わんわんっ!! クゥ~ン」


「いや本当だぜスコル。え? トンネル造れって?」

『駄目ですよっ、どんな悪魔が出てくるのか……』



 まぁ確かに、それは心配だよな。

 って、そう言えばメチャとラヴは口をポカンと開けたまま動かんなぁ。


 再起動するまでそっとしておこう。ピクシーズは寝たままです。


 さて、ヴェーダの心配も理解出来るが、実際は何の問題も無い、と思う。


 どうやら、トンネルを抜ける際に俺の承認が必要なようだし、眷属契約まで課される。


 ダンマスとの契約は強力だ、俺が『死ね』と言うだけで死ぬ、相手の自決ではない、俺の意志による突然死だ。これはヤベェだろ……


 とりあえず、通過が認可制ってとこはポイントだな。

 ちょっとやってみてイイですかね?



『……怪しい動きをしたら迷わず殺してください』


「はいよ~」



 じゃぁ、もう一度コアルームに行きますか。はい転移っ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 二度目のコアルームです。


 メチャとラヴが再起動したので、ヴェーダが経緯を説明。


 説明を受けた二人から「さすがですっ!!」とヨイショされた。

 さすゴリダンマスとして二人を持て成す必要が有りますなっ!!


 と言う事でコアルームを改造。


 風呂やトイレ、台所や寝室等々、ダンマスが生活するのに必要なものは揃えた。近代日本風とはいかないが、この世界で裕福と言われる存在のそれには近いと思われる。


 メチャとラヴは眠たげなピクシーズと共に風呂へ直行。広めに造ったので大人数でも問題無い。


 お湯は常時湧き出るタイプだが、消費DPは一日たったの5です。冒険者が一人一階層を数十分探索すれば元が取れる。


 ではそろそろ始めましょう。


 この魔窟はサブダンジョンにして、その管理を任せる奴を呼びたいね。


 こちらが出す条件を指定出来れば……出来るな、よっしゃ。

 あ、通過する時に翻訳スキルを貸与しなきゃな、出来……るな。



『慎重にお願いします』

「任せとけって」



 コアルームに造った殺風景な倉庫の最奥にトンネル設置……石壁に付けてみたけど、ブラックホールじゃねぇよなこれ。近寄らんとこ。


 さ~て、俺が望んだ悪魔は来ますかねぇ……



 黒紫に渦巻くトンネルの中央が揺らぐ。

 早速お出ましか……ん?


 現れたのは――



「……私の言葉、通じますか?」

「お? 通じるぜ、お前も分かるだろ、翻訳スキルを貸した」


「あぁぁっ、偉大なるヤナトゥと御子に感謝をっ!!」



 申し訳なさそうに、悲しそうに意思疎通を確認してきた悪魔。


 髪は伸び放題、服はボロボロの薄汚れた貫頭衣。

 声はしゃがれ、口元しか見えないし性別も分からない。だが――


 こいつが喜んでいるのは口元を見れば分かる。


 そんな事よりヤナトゥって何だ?



『はて、寡聞にして存じませんね。偉大なると言っていますので、この者が敬意を抱く何かでしょうが。御子は貴方の事だと思います』



 フム、分からんなら聞いてみるぜ。



「ところで御子は俺か?」

「御意に御座います」


「ほほう、で、ヤナトゥって何だ?」


「ヤナトゥは御子様の御母堂にあらせられます。第十六代ヤナトゥ、御名は『アートマン』、大宇宙を統べるに足る歴代屈指の権能をお持ちで御座います」


「あ、あ~、そうなんや、そっか~……」



 あんなん言うてまっせ?



『……ちょっと確認します』



 いやぁ~参ったねどうも。

 悪魔呼んだら電波悪魔だったわ~w


 ……電波だよね?

 電波であって下さい。


 大宇宙とか僕には理解出来ない。

 僕は関係ないよね? 森で遊んでいたいのっ!!








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