第151話「味? ウィスキーボンボン!!」





 第百五十一話『味? ウィスキーボンボン!!』





 テクテク、トコトコ、初めての魔窟を無感動に進む。


 一つの階層は四方が約800mほど、その範囲内で通路が造られている。最下級魔窟は範囲が狭いようだ。


 そんな狭い魔窟内だが、当然、冒険者は居る。通常なら遭遇戦待った無しだろう。


 だがしかし、つゆ払いの蟲達が冒険者を始末しているので、バイオレンスな展開にもならず、黙々と歩く。


 ……とってもツマラナイ。


 最下級魔窟の階層は全五階、何か特別な階層が在るワケでもなく、クッソ面白くない洞穴ほらあなが続く……っ!!


 そう、長い洞穴だこれ。洞窟以下だよ。


 所々に人工物っぽさのある石壁が見られるが、「で?」と言った感想しかない。その前に「コアさん創造失敗しちゃった?」と考える者も居るだろう。


 妖蟻族がこの洞穴見たら『穴をナメるなよ』と怒るんじゃないかな? 何かエロいけど。


 そしてもう一つ、通路が狭い。


 魔物がたむろす広間なら問題無いが、曲がりくねった通路は直径3m程だろうか、大猩々化した俺では身動き出来ない。猿人に戻る。


 と言っても、猿人状態は体長が3m近い、相変わらず窮屈な状態だ。ジャキやレインは連れて来れんな。


 先頭を進むスコルなんてずっと伏せ移動している、ムゴイ。匍匐ほふく前進かな?


 魔物は近寄って来ないので楽ではあるが、一定間隔で設置されたクソトラップがウザいのです。


 スコルが落ちきれない穴、スコルの体毛に弾かれる矢と槍、スコルに踏み潰され動けなかった偽装白骨死体の骸骨兵(不死!!)、スコルに踏み抜かれてぶっ壊れ作動しなかった何かのスイッチ(不壊にしとけよ!!)等々……


 本物の強者対策がゼロと言う優しい作りのトラップ……

 トラップを見抜いているヴェーダですら無視するレベルっ!!


 いやまぁ、殺さずに招き入れる、と言った点に絞れば納得いかんでもない?



『DPの無駄ですね。冒険者達も罠の設置場所を把握していたようですし、コアも設置場所を変えなかったので』



 う~ん、ここのコアは……アレじゃないかな、お前がポンコツやぞと、ハズレはお前やぞと、最初に教えてやるべきじゃないかな、邪神は。



『確かに。では、どう致しますか? ここのコアは破壊して、もう一方を奪取に?』



 いやいや、ここまで来たからな、持って帰るよ。


 たとえポンコツでも、俺には好い嫁さんが居るからな、素敵な指導でなんとかなるさ、だろ?

 


『ッン、お任せ下さい』



 では進もうっ、クッソつまらん魔窟をっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 はい、進みました。

 途中で一度休憩を挟んで、最奥まで約十五時間、思ったより時間が掛かった。


 面積一杯に通路を張り巡らせてあるお蔭でしょうか、コアにしてやられましたなぁ。不壊の壁をぶっ壊せれば直通で楽だったのに、残念です。


 走れば良かったんだけどね、魔窟内をじっくり見てみる必要があったので、周囲を注視しながら進みました。


 そしたら何も無かったよ。何もっ!!


 如何にコアとマスターの知能が重要かと言う事を確認出来ました。



 さて、我々は現在、コアルームに居るワケだが……



《チッ、魔族か……、立ち去れ、下賤な貴様らに用は無い》



 などと水色の水晶玉(サッカーボールサイズ)が申しており、我々のコメカミを刺激しております。青筋がピクピクします。


【こんなコアは嫌だ】スレの書き込みに有りそうな事言ってる……


 メチャとラヴは『壊す?』と俺に視線で訴えてくる。

 スコルは虚空を見つめている、そっちに魔界が在るの?


 ピクシーズはスコルの背中でオヤスミマン。自由過ぎるな。



『これは……想像以上にポンコツですね、修正が必要です(神域で教育しましょう……)』



 う~ん、そんな事より……ハァハァ。

 うずくんだよなぁ、見た瞬間ビビっとキタね。


 ちょっとさ、君さ、好い匂いだね……

 おいちゃんは好きだな、その芳醇な香り……ゴクリ。



『ゴクリ? ッッ!! お待ちなさいっナオキさんっ!!』



 大猩々化~!!

 大きな手でクソ玉を掴む~!!


 か~ら~の~――



《放せ貴様、洗脳されたいのか? フッ、コアの権能を知らんとは、所詮低俗な魔ぞ――》



 一気呑み~っ!!

 ゴックン!!


 ん~、美味いっ!! 思った通りでしたっ!!

 高価なウィスキーボンボンだなっ!! ウマしっ!!



「「は?」」

『ラージャ!! ペッしなさい!! あぁ何て事っ!!』

「バ、バウワウ、ワンワンッ……」

「「んゅ? ごはん~?」」


 

 俺の突飛な行動に驚愕する一同。


 メチャとラヴは目が点になったぜ!!

 スコルは誰かと話をしておりますね、察し。

 ピクシーズは「ごはん違う」と言ってまた寝た。



 さてどうやってヴェーダに言い訳すっかなぁ、と考えていると、豪快な笑い声が聞こえてきた。チラッとスコルを見る。目を逸らされた。



“やりやがったっ!! 野郎呑み込みやがったぜ!! アーッハッハ”



 ダンディなお声ですね、お父さん……じゃなくてお爺様のほうかな?


 スコルが顔を背けるが視線はこちら。

 お前それ、その目があれか、カメラ的なあれか、そんで『見ろ』って命令されてんの?……頑張れっ!!



『チィ、こちらの気も知らずに魔界の道化が楽しそうにっ……覚えておれっ。さぁナオキサン、いいえマハーラージャ、ご説明を』



 おぅふ、綺麗な声に怒りが乗るとペニスがスンてなる現象に名前を付けるべきだな。


 今後頻繁にその名称を使う事になりそうだからっ!!


 たはーーっ!!







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