第150話「ピュッと飛ぶ白い情熱」





 第百五十話『ピュッと飛ぶ白い情熱』




 ううむ……

 何だろうなコレ……


 魔窟に入った、が、違和感しかないなぁ。


 俺が大森林育ちだからなのか、人外だからなのか、魔窟内にある自然物が不自然に感じる。


 壁の石質、地面の土や石、何か光ってる変な草、天井から垂れる水滴、全部アレなんだよ……なんて言えば良いのか、元気が無い?


 いや違うな、何だろう……



『生気が皆無ですので。たとえ無機質な物であったとしても、必ず大地から……惑星から生気を得ますが、ここは……』



 ア~ハン、なるほどなー。

 元気無いって感じるのはそういう事か……


 でもそれ、マスターやコア次第じゃねぇの?

 三皇五帝のダンジョンがこんなんじゃぁ、興覚めだぜ。



『恐らく、仰る通りかと』



 コアが『生物の営み』とか『本能・習性』ってヤツを学んでないっぽい?


 温かみゼロですよココ。体感温度は良好適温なのにっ!!



『本来ならば……少なからず冒険者等の脳から知識を得るものですが、ここのコアは知識欲より強さと野望に意識が傾いたようです。原因は邪神でしょう』



 なんとまぁ、言ってみりゃ“世界さん公営”ジムだろここ?

 コアに心を持たせるなとは言わんが、外部に成長阻害されるのはイカンだろ。



『質の良い“外部”に当たれば、成長促進どころの話ではありませんから』



 大当たりの三皇五帝って八つだぜ? たったの八つ!!

 普通レベルの魔窟とか、ちょい上レベルとか知らんけどさ……


 大当たり引いたコアが八つしかないのよ?

 ハズレ率考えりゃ、外部との接触は考えもんだ。僕なら禁止!!



『一部の成功が、大半の失敗を無にする、その典型ですね。それほど三皇五帝や魔ドンナ等の高難易度ダンジョンは“世界”の意思に貢献している……と、推測ですが』



 ま~た世界さんですか、コンチャーッス、もう消えてもらっていいですかw


 世界さんは面倒臭ぇので放置しましょう。

 どうせ俺達じゃぁ後出し対処しか出来んしなっ!!



 次行ってみよう、次っ!!


 違和感その二、ですなっ!!



「ラ、ラヴちゃん、殺しちゃ駄目だよ……」

「殺してない……半殺しにしただけ」



 メチャとラブが何やらやっておりますが、違和感その二が原因のようですね。


 まぁ、何と言うか、いわゆる養殖のオスゴブリンが、美女二人に勃起をきたしまして……その、ピュッってね、ピュッって……


 俺達に近付かない、近付かないが、遠くでスコスコやってるんです。

 スコスコやって、フィニッシュをこちらに向けて、ピュッっと。


 メスに至っては……初めて出会った時のマナ=ルナメル女衆が、貞淑な乙女に見えるレベル。


 淫乱だとか売女だとか、そんなチャチなもんじゃぁ断じてねぇ!!

 硬くて長い物ならゴツイ石だろうが鋭利に割れた人骨だろうが関係ねぇ!!


 ズッコズコ、ズココココ……とっ!!


 俺を見つめながらっ、俺を舐めるように見ながら……っ!!



『マハーラージャのフェチモン放出量は、間違いなく世界一位です。それは断言出来ます』



 そう、俺の体臭が彼女達を狂わせる。

 ってアホか!! 要らない情報ありがとうっ!!


 しかし……正直、ここまでアレだとは思っていなかった。


 俺は勿論の事、大森林生まれで若いメチャや捕縛される前も奴隷時代も魔窟へ行かなかったラヴは、当たり前だが養殖を見た事がなかったので普通に驚愕した。


 さすがの俺も「これアカンて、アカンアカン」と、素で突っ込んだぜ。


 何より、ピュッの射撃性能が意味無く優秀。

 しかも先ほどから射程距離が伸びてきている。


 危うくブッカケ事案発生、いや、カケ逃げ事件発生の危機だった。

 カケられた汚い液体は、ラブが展開した対物理障壁で防ぐ事が出来た。


 しかし、これにはカチンときたラヴが、つい先ほど土・金混合魔術でブッカケ犯を血祭りに……と言うわけだな。


 弱者に対して関心の薄い魔族ではあるが、ブッカケには非寛容だった!!



『普通に無礼ですから』



 まぁねぇ……アレは無い、無いわ~。


 って違う違う、そうじゃない、違和感その二っ!!

 思ってたより養殖がヒャッハーして来ない件について。


 聞いていた以上に頭はアレだが、俺達を攻撃して来ない。

 いや、ピュッは攻撃かもだけどねっ!! 遠距離攻撃っ!!


 俺はもっとこう、ヤンキーになりたての中学生的な、アグレッシブさに注意していたんだが……



『それはジャキ的な感じでしょうか?』



 やめんか貴様ジャキが泣くやろがいっ!!

 アイツはイカス方のヤンキーなのっ!!


 そうじゃなくて、彼我の力量を考慮せず、見境なく突っ込むイメージ?



『なるほど、本来は仰る通りですね』



 今は違うの?



『称号に【帝王】号を持つ神の御子たる貴方と、【ファールバウティの血族】で魔王の孫が居りますから。それに、メチャとラヴは帝王の眷属でマハトマ種の上級特異進化魔族、そして【帝王の妃】です。本能が接近を許しませんよ』



 なるほどなー。

 お前が消えて、寂しくなったピクシーズが狙われないのは俺の肩に乗ってるから解るが……


 強力な人類が魔窟やダンジョンに入ると、低階層の雑魚は逃げ惑うらしいが、似たようなモンか?



『それとは違いますね、ご覧下さい、逃げ惑っていますか?』



 むしろ寄って来ておりますが?

 何なのコイツら、俺もキレるよ?



『この何とも言えない微妙な距離感は戸惑いますね、魔族が養殖狩りをしなかった要因の一つでしょうが……やはり、貴方の存在が大きいかと』



 ふむ……俺の存在云々は解らんが……

 養殖は魔族を攻撃しない? いや、積極的に攻撃しない、かな?



 ピチャッ



 ……は?


 右頬に何か付いた……

 恐る恐る右手で触る……


 ヌルっとします。


 あ、無理だ、殺そうwww



『ナオキさん、それ、メスのです。落ち着いて』



 なん、だと……っ!!


 液体が飛んできた方へ目を向けた。

 一匹のメスがドヤ顔で俺を見ている……っ!!


 そのメスが右手を俺に向ける、向けた右手はビチョ濡れだっ!!


 ビッチてめぇ……っ!!


 って、いや待って、これは攻撃と同じじゃね?

 煽って死んで行くスタイル?

 

 などと動揺していたら、右手を濡らしたメスゴブは鬼の形相のメチャに腹へ膝蹴りを入れられ悶絶していた。


 メチャがトドメのかかと落とし体勢に入ったところでラヴが止めた。グッジョブ!!



 とりあえず、養殖は放置してコアルームに向かいましょう。

 相手するのがメンドクセェ……


 何かスッゴイ疲れた。

 そして右の頬が臭い……


 

『洗って』



 お、おう。

 メチャさん、水魔法オナシャス。

 






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