第125話「濡れているじゃぁないか(困惑)」





 第百二十五話『濡れているじゃぁないか(困惑)』





 輜重兵と基礎訓練、コアと二種の養殖、それらの重要性を語り終えた。


 あとは俺が魔窟攻略に向かってからの魔竜対策を話し合えば、本日の矯正会は終わりだ。


 だがしかし、アホな俺は簡易結界を張って防御を固める以外に、これと言って良案は浮かばない。


 どうしたもんかね……



「フフッ、お主が留守にする間のガンダーラが心配なようだな」


「そりゃ当然だろう」



 カスガが俺のダンディーなアゴを右手の細い指先でくすぐりながら、そう言って微笑んだ。フェチモン溢れてる? マイッタナー。


 カスガの向かいに居るアカギも、俺の勇ましい右乳首に生える乳毛を細くしなやかな指先でもてあそびながら、「大丈夫」と囁いた。よせよ、ゴリラ継承白因子が溢れてしまう。



「いやいや、大丈夫って…… 何か根拠が有るのか? さっきは魔竜の動きが気になる~的な事、言ってたよな?」


「気になるわねぇ~、でも、気になるのは魔竜ではなくて魔竜陣営……と言えばいいのかしらぁ、魔竜が手紙を渡した連中の方ねぇ、中部の」


「ん? まぁ、そりゃ気になるが、アイツらより魔竜の方が気になるだろ?」


「う~ん、ガンダーラが魔竜ダンマスに『やって欲しくない事』と、魔竜が『今やりたい事』を考えるとぉ、それほど気になる事はないかしらぁ」



 ニッコリ笑う妖艶な幼顔の熟女は、そう言って俺の逞し過ぎる右の大胸筋に左頬を当て、その可愛らしいピンクの唇から赤い舌をチロリと覗かせた。んっ、んっ、なかなかの舌技、やるなアカギ。


 しかし、アカギとカスガの余裕は何だ?

 トモエとイセも表情を変えず目を閉じたまま。意見も無いようだ。


 それに『やって欲しくない事』と『今やりたい事』ってのは……

 やって欲しくない事は自分達の事なので、大凡おおよその見当が付くが……



「魔竜が今やりたい事となると、俺達はそれを必死に考えていたんじゃないのか?」



「フフッ、考えていたとも。姉上様と私とアカギで、ハーピーの使者がガンダーラに来た日から、ずっと考えていた」


「しみゅれーしょん、だったかしらぁ? 何度も何度も三人でやってみたのぉ。順番に魔竜役をやって、ガンダーラを攻めて、悩ませて、ダンジョン創造とダンジョン化をどうやって使うのか色々考えてぇ、面白かったわぁ~」


「へぇ~…… でも、それだけじゃぁ根拠が薄いな」



 俺だって某信長さんの野望なら無双できるぜっ!!

 三国志は空白地からの新君主プレイだぜっ!!



『彼女達の名誉の為に申し上げますが、シミュレーションだけで魔竜の行動を予想したわけではありません。ナオキさんの負担、特に精神面を考慮してハーピーの事を伏せていましたが……お聞きになりますか?』


「あぁぁ、そっか……」



 俺はハーピー達の体を要求したクソゴミ共の事は把握したが、その実態、内容は聞かなかった。聞きたくないと思って聞かなかった。


 これも俺の落ち度だ。


 本来ならば彼女達から詳細を聞いて、魔竜側の情報をどのような些細な事でも貪欲に求め、早急に対処して然るべき事態だった。


 だが、俺自体も彼女達から聞きたくなかったし、ヴェーダや他の者の口からその事に関する言葉を耳に入れたくなかった。何より、ハーピー達にその内容を告げさせる事が我慢ならなかった。


 しかし、だが、でも、やはり、今でも俺はその話を耳にしたくはない。


 人外として完成された今の魂を持つ俺が、エルフ達の時でさえやっと我慢出来た俺が、今、胸糞の悪くなる雑音を耳にしたら……



『御心は十分理解しておりますマハー・ラージャ、どうか、お鎮まりを』


「ナオキ……」

「ナオキさん……」

「旦那様……」

「だめ、だよ?」


「あぁ、悪ぃな、考えただけで大森林の北半分を灰にしたくなるぜ」



 駄目だな、恐らく詳細は聞かない方がいい。

 ガンダーラの男衆全員に北伐を命じる自信がある。

 それだけじゃぁない、スコルとハティの、悪魔の力を借りる。


 攻め込む相手が魔族だろうが関係無ぇ、抵抗出来ない魔族の女に腰振るクソは皆殺しだ。


 純心無垢なハーピーは抵抗する意思すら見せず、笑って抱かれたのだと思うと……


 クソがっ、もしハーピー達が俺の眷属としてソレをやらされていたら、知った時点で『ヘルヘイムの門』を全開にしていた。


 はぁぁ、まったく。


 ヴェーダの話を聞いて、冷静でいられるか分からんぞオイ……



「とにかく、ヴェーダ、アレな部分は省いて教えてくれ。北伐前に必ず詳細は聞く、だが今は無理だ、コア奪取の前に北伐始めちまう」


『承知致しました……。やはり、あの時点で伝えなかったのは正しい判断だったようですね。魂の人外化が二週間早まる上に、領軍と魔竜の両方へ部隊を同時展開する結果になっていたでしょう』


「姉上様の仰る通りだ、今頃大森林の北半分は荒れ地になっていたやも知れん」


「そうねぇ~、王国とも全面戦争になっていたかもぉ~」


「スマン、世話を焼かせっぱなしだな。だが、ありがとう」



 自己抑制の塊であるトモエやイセを妹に持つ彼女達からすれば、俺なんて癇癪起こすガキと変わらんだろうな。


 あれ、何だか恥ずかしくなってきたぞ?



「フッ、構わんよ。仕事の分担だ、礼には及ばん。浅部魔族総避難や魔竜眷属の襲来で、お主だけに負担を掛けたくなかった。その状況で領軍の北上、領軍を迎え撃った戦いで五名の英雄を失った。あの時のお主は……見るのが辛かった、心情は痛いほど分かっていたからな」



 そう言って、僕の尖った左乳首を触覚で撫でるカスガさん。彼女の半分は優しさで出来ているのでしょうか?



「そこへ追い打ちとなるハーピーの話題をナオキさんの耳に入れる、そんな事は出来ないしさせないわぁ。女性の苦しみを聞くのは我らの仕事、ナオキさんは苦しませた下衆を消すのが仕事よぉ~。それに、ハーピー達も貴方には聞いて欲しくなかったみたい」



 そう言って、僕の濡れた右乳首を……濡れた乳首?


 何故濡れているのでしょうか? ペロリンしちゃった?

 アカギさんの半分は優しさと肉欲で出来ているのですか?

 大歓迎です有り難う御座います。


 カスガにペチンと太ももを叩かれた。

 すまんな、エロスで気が散漫になるんです。



「ビ・アンカ、周囲に心配を掛けさせまいと気丈に振舞ってはおるが、正直あの姿は痛々しくて見るに忍びない。あの者達から話を聞かぬというお主の判断は、決して間違ってはおらんよ。少なくとも、ビ・アンカの乙女達はお主の判断に救われておる、受けた恥辱の詳細を敬愛する帝王の御前で語らずに済んだ、とな」


「あいつら…… そうか」


『では、詳細を省いて御説明を』

「ああ、頼む」



 ヴェーダ達による内助の功も、ビ・アンカ達の気丈な笑顔も、どちらも無駄にしないようにクソゴミ共の事は思考の外へ追い出して、有り難く話を聞かせてもらおう。


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