第122話「ついに、あの二匹を語る。その前に……」





 第百二十二話『ついに、あの二匹を語る。その前に……』






 可愛い舌打ちをしたカスガが、真剣な表情でヴェーダに質問する。

 ついでに、僕の魔王をサスサスしているアカギも質問しい表情。



「チィ……神とはまた面倒な。しかし、コアの部屋に顕現したわけでは御座いますまい?」


「たとえ顕現した神が下級の一柱であったとしても、世界を歪ませるほどの影響が有ると、以前お姉様が仰ったようなぁ……」


『その通りです。正確には、あの現場に顕現したのではなく、蟲の侵入に気付いた“下郎”がコアに何らかの神託を下した為、私がその存在を察知しました』


「何と、互いに存在を察知したと仰るか……蟲共はぅ無事で御座いましたな」


『養殖如きが幾千幾万湧き出て来ようと、湧き出た瞬間に眷属進化した蟲の群れが始末すればよいだけの事、どうという事はありません。それに……魔界には伝手がありますので』



「魔界?」

「それは……」



 カスガとアカギが首を傾げる。

 イセやトモエも目を閉じつつ聞き耳を立てている。


 僕には思い当たる点が有り過ぎる!! 主に二匹っ!!


 とりあえず、魔界の説明を皆にしよう。

 ヴェーダに与えられた知識を無礼なめるなよっ!!



 魔界とは、神界に並ぶ天界の一部であるが、異世界人等を除けばこの世界には魔界に対する概念が無い。死者が向かう冥界の概念は有る。


 堕落した神や邪心を抱いた神は冥界に落ちる……これは間違った認識だが、それがこの世界に生きる魔族や人類の認識だ。


 例外は『魔界』の詳細を知る機会があった一部の異世界人や俺だけだろう。


 冥界の神々には善神も悪神も邪神も居ない。

 亡者の裁判所、監獄、俺が行くはずだった地獄。それが冥界。


 冥界に居る神々は善悪を分けず、亡者のカルマを量る。


 ある者にとって善は悪になり、悪は善になる、亡者を裁く神々は中立の存在で在る事を貫く。


 そんな神々が支配する冥界に、愚を犯した神々の居場所は無い。入り込める隙も無い。


 神界から追放された神々は魔界へ行く。


 しかし、所属する神話系統の神籍と神格を剥奪され、その神界・神域を『追放』された神と、信仰を失ったが神籍と神格を残したまま『堕ちた・堕とされた』、または『忘れられた』神とでは格が違う。


 追放された神は、ただ【神核】と言う魔核的な物質を胸に宿すだけの、神籍も神格も持たずに魔界で暮らす亜神に過ぎない。


 追放されたと言っても天界に在る魔界に留まる為、亜神は天界の神々から邪神と呼ばれ蔑まれるが、悪神とは呼ばれない。


 悪神は神籍を持つれっきとした神、その力も神格も邪神とは比べ物にならないほど強大である。



 さて、以前ヴェーダが話したように、現在この世界で行われている神々の遊戯には、異世界の神々も参加している。


 全て飛び入り参加だがルール違反ではない。


 どう考えても最初にルールを考えたヤツの手落ちとしか思えんが、俺の転生先がこの惑星になった事によりアートマン様も遊戯に御参加出来たので、結果的には良かった。


 飛び入り参加には異世界の神々も居るし、もちろんこの世界の神々も居る。


 しかし、この世界の神々で飛び入り参加したのは神界を追われた神のみ、つまり邪神だ。神籍を失っても天界に住む存在だからなのか、そんなヤツらが参加出来るのも手落ちだろう。


 腐った鯛は只のゴミだと言うのに。


 その邪神達はこの遊戯を掻き回す為に色々やっているようだが、悪神が遊戯をヒートアップさせる為にやっている様々な行いとは違って、スケールが『ショボい』。


 今回のコア指南も、そのショボい暗躍の一つだ。


 三皇五帝クラスの魔人になると、その眷属の数は膨大。さらに、三皇五帝を神聖視する人類も出てくる。


 その流れで三皇五帝に加護を与えている神々を信仰する人類も現れるわけだが、眷属は主たる魔人に加護を与えた神を既に崇めている為、信仰によって神へ集められる力は相当なモノとなる。


 これに憧れたのが神籍・神格・信仰を失った邪神。


 意思を持つコアは心が有る。しかし、ヴェーダとは違って神との繋がりは無い。飽くまで遊戯のオプション、アイテムに過ぎない。神々の認識ではそうなっている。


 だが、心を持たせてしまったのは、また設定ミスであると言わざるを得ない。この遊戯を考えた世界ヤツは手落ちが多い。



 具体的で直接的な指示や、敵勢力の事情を神々が伝える事は遊戯の規則に反する。


 しかし、契約主の居ないコアに指示や助言を与える事は規則違反ではない。神々は生命の無い道具である未契約コア如きが遊戯をどうこう出来るとは思っていなかった。


 確かに、何者かと契約を交わしたコアは、契約主を魔人化させたあと、魔人を主と定めそのサポートに回る。


 その為、魔人という遊戯の『駒』と常時関わる契約済みのコアには、人類や魔族に関する事と同じ規則が適用される。基本は不可触だな。


 例外は前述の通り、未契約状態のコア。


 神々はそんな未契約コアに関心など持たなかったが、邪神は違った。


 信仰を得て神格と神籍を取り戻したい邪神が、ユルい設定の穴を突くのは自然な事だ。


 邪神でなくても穴を突くべきだと俺は思うが、そんな手段でしか勝てないようでは主神にはなれないと言う事だろうか。


 とにかく、その必死な邪神の一柱が魔界の片隅でコッソリ遊戯に参加し、遊戯の規則に反する事なく二つのコアをそそのかす事に成功した。



 しかし、ソイツの思惑は外れる。


 俺がソイツの立場だったら……

 脱糞失禁、白目剥き間違いなしだなっ!!



『そうなんですか?』



 そうなんですっ……

 冷静な君がオカシイんだヨ……





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