第120話「ルパンになるんだっ!!」





 第百二十話『ルパンになるんだっ!!』





 ダンジョンコア。

 人類から迷宮核とも呼ばれているその物体は、この世界で生きる生物にとって必須元素となる『魔素』を放出する重要な物体である。


 その形は様々で、美しくカットされた大きな宝石のような物から、自律的に歩く人の形をしたヴェーダ的なモノまで千差万別。



『コア如きと同列に語られるとは……』



 違う違う違うっ、そうじゃっ、そうじゃなぁーい!!

 君は唯一じゃないかぁ、僕の一番じゃないかぁ!!



『なるほど、唯一で一番……悪くないですね、宜しい』



 ふぅ。


 さて、コアに共通しているのは『意思』を持っている事と、マスターとしてダンジョンに縛った契約主に『力』を与える事の二つ。


 契約内容や与える力は微妙に違う。

 そして、コア自体の『格』と存在理由も違う。


 例外は未契約のコア。


“世界”が用意した遊戯盤の上に遊戯開始当初から設置され、いまだ誰からもから発見されず未契約状態のコアは、これから説明する『格』が基本の一つしか存在しない。


 コアの格は三つ。メインコア、サブコア、ダミーコア。


 格が一番高いのがメインコア。ダンジョンマスター(以下ダンマス)と接触して直接契約を交わし、ダンジョンの管理を統括する最重要キーアイテム。


 これを破壊するとダンマスは滅び、ダンジョンも崩壊する。


 次がサブコア。簡単に言えば保険だ。

 メインコアが奪取された場合や、破壊されそうになった場合、メインコアはサブコアに全権限と力を委譲してメインとサブを入れ替える。


 サブコアと入れ替わった旧メインコアには何の力も残っていないので、奪われたり破壊されたりしたところでダンジョンに何の影響も無い。


 サブコア一個分の『ダンジョンポイント【DP】』、即ちコアが貯めた生気が無駄になるだけだ。


 俺が下賜品を購入するとFPが減る理屈と同じで、コアはDPを消費して何かを創造、または『力』を行使する。


 サブコアが持つもう一つの役割は、サブマスター(以下サブマス)が使用する疑似的なメインコアとしての役割。


 ダンマスは自分の眷属からサブマスを任命出来る。サブマスは支店の店長と思っていい。


 サブマスの主な役割は支店的な役割である『サブダンジョン』の運営、並びにダンマスの補佐。


 サブダンジョンはダンマスの避難場所としての意味合いが強いが、メインダンジョンから離れた場所にダンマスの支配下にあるダンジョンが創造されるので、生気の徴収をメインダンジョン一ヵ所に頼らず、あらゆる場所で徴収可能となる。


 サブダンジョンで徴収された生気は全てメインコアに送られ、生気をDPに変換したメインコアからサブコアへDPが供給される。


 サブダンジョンを創造する際は、サブコアを持ったサブマスが指定された場所まで移動し、そこで『ダンジョン創造』か『ダンジョン化』の能力を使用する必要が有る。


 しかし、ダンジョン創造とダンジョン化という特殊能力は、本来ダンマス専用の能力である為、その能力の使用許可を一時的に得たに過ぎないサブマスが使用すると、通常の百倍ほどDPを消費しなければならない。効率は非常に悪い。


 その為、若いダンマスは避難場所としてのサブダンジョンを一つ確保するに留める場合が多いようだ。



 三皇五帝ほどのダンマスになると、数多くのサブダンジョンがメインダンジョンと連結出来るほど支配領域が広大である。


 まるで妖蟻の地下帝国のようだが、ダンジョンは入り口以外が異空間なので、実際の支配地は世界の理から外れた場所に在る。


 しかし、ダンマスが指定した家屋や洞窟等の『出入り口』が在る場所を『ダンジョン化』という特殊能力で異空間化せずにダンジョンの一部として支配する事も出来る。


 ダンジョン化によって支配された場所はいつでも異空間と非異空間の切り替えが可能だが、ダンジョン創造で生み出した空間は自動的に異空間で固定となり、切り替えは不可能。


 生気徴収の効率は下がるし大量のDPを消費するが、ダンジョン化の能力を使えば異空間以外に支配領域を広げる事も可能となる。


 俺達が最も恐れる能力がコレだ。


 ダンジョン化された場所はダンマスやその眷属が自由に転移可能な上、その構造を自由に改変出来る。


 さらに、ダンマスも眷属も『ダンジョン外ペナルティー』の枷から解放され、コアによる補佐と補助支援を受けながら全力を出せる。



 つい最近ブッ殺した狐や狸も、補助支援を受けていたら……

 俺はともかく、眷属の皆は命の危険があっただろう。


 俺が必至こいて神像を作り、地下帝国の壁を簡易結界で覆いたい理由をお解り頂けただろうか。やっと北側は塞ぎ終えたが、まったく安心出来ない。



 話が逸れたが、サブコアは基本的にメインコアと同じ力を有する、しかし、ほとんどの場合ダンマスがサブコアに制限を設けてサブマスに渡す。


 一日で消費出来るDPに上限を設けるなど、制限はダンマスのサジ加減で縛る範囲が大きく変わる。


 サブコアの説明は以上。

 最後はダミーコア。


 ダミーコアは只のイミテーション、模造品だ。

 メインコアの力を移す事も出来ず、何の能力も無い模造品だが物の質は良い。


 貴重なコアは無事に安置されてあると冒険者等に意識させる為、飛竜の魔核かと驚くほどの大きな宝石で造られたダミーコアが、第五層から第十層に掛けての低階層に設置されてある事が多い。


 メインコアとダンマスはダミーコアの存在で侵入者を安心させつつ、ダンジョンの拡張に励む。




 以上でコアの格と役割についての説明は終了。


 なお、サブコアとダミーコアはダンマスやメインコアの意思で幾らでも創造出来る。


 サブコアを量産して大勢の眷属をサブマスに任命する事も可能。そうする事によってサブマスはダンジョン内で臨機応変に活動出来るが、DPの消費量は相当なものとなる。



「俺の狙いはカスガの言う通りコアだ。長城の第三城門から出て南東と南西にそれぞれ約100km進んだ位置に在る二ヵ所の魔窟からブン盗る」





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