第102話「ニヤリ、計画通り(混乱)」
第百二話『ニヤリ、計画通り(混乱)』
司法・立法は準備不足でやれることが少ない。
行政はプロフェッショナルに任せるのが肝要。
俺は最後に「ヨシッ!!」をする係に徹する。
出しゃばらないのが俺流、だ。
ヴェーダは様々な国政を熟知しているので、アカギとカスガはその知識を十分に咀嚼し、協議しながら取捨選択を繰り返して整理されたものを御前会議に上げる。
御前会議は俺や妖蜂・妖蟻の王皇両族を始めとして、両族の将相、氏族長達が集まって議題を話し合う不定期会議だ。
会議の場所は皇城『アリノスコ=ロリ』に在る大会議場。
議題は主にアカギとカスガが上げると思うが、他の者が議題を上げても勿論構わない、緊急性の高い議題ならすぐにでも皆を召集し会議を開く。
大森林を俺が平定するまで妖蜂族のホームは地下帝国となるので、カスガ主催の御前会議はアカギに遠慮して開かず、大森林平定が叶うまで開催される事はない。
だが、今回の秋期会議で上がった内政の議題には、妖蜂族の居城『クララ・ガ・タッタ』や、妖蜂三大公の領地等に関する御前会議級の議題も少なくない。
暫らく留守が続く妖蜂の各城は、現在、魔道具の結界で護っているが、結界を維持する為の魔晶石消費が尋常ではないらしい。
対処法としては、ハイジクララ山脈からの魔晶石採掘量を増やすか、魔晶石に大量の魔力を流し込んで魔導水晶化させ、結界魔道具を魔導水晶起動型に改造するか、そのどちらかをカスガは考えているようだった。
しかし、ここでヴェーダ先生が一言。
『神像と神木を用意出来れば、簡易結界が張れますが』
早く言えよとズッコケる俺。
カスガの右眉がピクリと反応。何故俺を見る?
ヴェーダに詳細を求めた。
曰く、巨木なら種類を問わないので、結界を張りたい場所の中心に植える。そこに神像を据えれば、マハーカダンバと同じように巨木が神像を取り込むので、アートマン様の加護を得た神木として機能する。
その際、地下水道で聖泉から水を引くと尚良し。
その後、手乗り神像を結界で囲みたい範囲に配置すれば、アートマン様への信仰が消えない限り永続的に障壁は展開し続け、アートマン様の力が戻るに応じて障壁の力は増し、やがて障壁の繋ぎ合わせではない完璧な結界に変わる。
って言うか、実際、アートマン様が愛神の眷属を滅ぼし【神核】なるものと新たな神域を得た後の結界は、一見して『これ割れるの?』と小首を傾げざるを得ない強度になっている。
話を戻します。
新たな神木は『神木銀行』としても使えるが、アハトマイトの神気等が無いのでマハーカダンバより格段に成長は遅い。
巨木に据える神像彫像は俺の役目、と言う事だった。
成長速度は聖泉の水が有れば十分だと思う。マハーカダンバが異常なだけだ。
しかし、銀行が使えるのは魅力的だ。
ATMとして活用出来る。
ハーピー達に洞を用意して住んでもらうのもいい。彼女達が高所に住んでくれるというだけで、哨戒活動になる。
ハーピークイーンも『にぱぁ』と笑ってくれた。その笑顔が俺を狂わせる。
カスガの口角が可愛らしく上がっていた。
早速、神木の御利益を計算しているのだろう。
地下帝国も水不足で悩んでいるので、聖泉の水を引くついでに巨木と神像も幾つか用意しよう。
アカギにそう伝えるとチュッチュされた。勃起をきたすのでヤメテ頂きたい。
これで、妖蜂族の懸念と妖蟻族の懸念が一つずつ取り除かれる。
次は皆に『大至急』と言われた議題、総眷属化の早期完遂だ。
これは俺も早く解決したいと思っている。
先ず、『国民の安全』を図る対策の一つとして、能力値が数倍になるという一番分かり易い結果を得られる。
次に、ヴェーダを介する眷属ネットワークへの参加、それによって個人が得られる利益は計り知れない。
そして、能力上昇とヴェーダの助力により、これまで出来なかった事や見向きもしなかった事に対して、関心を寄せ、前向きな姿勢をとる事が出来る。
能力と意欲に富んだ一般市民が多く居る、それは富国強兵への道を限り無く短縮させる一因となるだろう。
内政の議題は、その多くが『臣民の生活』に直接関わるもので、カスガやアカギは氏族長達から上げられる話を真剣に聞いていた。
現在はまだ立法・司法・行政の議題は少ない。
暫らくは大森林の慣習法と妖蟻・妖蜂の行政に頼る事になる。素人の俺はカスガやアカギからまだまだ学ぶ事が多いので、会議を聞きながら『ヨシッ!!』の脳内練習をしておく。
ただ一つ、俺が口を出したのは信仰・宗教の事だ。
転生前に布教を誓ったゴリラは狂信者なのだよっ!!
アートマン様は『
そして究極なる根源なのである……究極なのであるっ!!
哲学的で分かり辛いが、『我』や『個』の存在を否定した神や宗教などからすれば、邪神認定必至である。
だがしかし、アートマン様大好きゴリラの意思は揺るが――あふぅん。
あーりがとう御座いますっ!!!!
眷属達に、「真なる
俺も皆も頭の中は『?』で埋まっているが、何かアガッてきた感じ?だったので、本能に従ってアゲ倒す事にした。
頭の中の『?』を
何だろう、これが『ゾーンに入る』ってやつか(困惑)、今ならイケるっ!!
「国家とは『我』の集まり、『個』が集まって国を造る、即ち、この世界の神々が司るモノを詰め込んだ『我』である我々が、信仰を捧げ崇め奉るアートマン様こそが至高なのであるっ!! 究極なのであるっ!!」
ふぅ、軽く絶頂した感。
ここで『あふん』を頂いた。5あふん頂いた。
ホンマーニやメチャが涙と鼻水で顔面を大変な事にしながら俺を拝んでいたが、他の眷属達にもアートマン様の偉大さが伝わったようだ(混乱)。
深夜の地下帝国に『アンマンサーン・アーン』の合唱が響いた。
明日以降、ガンダーラ各地にアートマン様を祀る場所が急増するだろう。
無論、信仰の自由は保証するが、魔族を救う姿勢を見せている神は魔皇帝の一柱以外他に居ない。
ですので、結果は推して知るべし、だなっ!! ヨシッ!!
最後に、長城の外で人間達がどのような行動をとっているかなど、メハデヒ王国に関する様々な質問にヴェーダが答えた。
今後数カ月はメハデヒ王国の大々的な大森林進攻等、人間との大規模な戦闘が起こる確率は低いとヴェーダが伝え、それでも警戒は怠らぬようにと眷属達に釘を刺した。
こうして、第一回秋期会議は終了。
洗脳サバトの疑惑? あぁ、ゾーン大会ね(狂)。
イイよね、ゾーン、またやろう!!(
まだまだ議題に上げるべき案件は沢山あるが、その前に総眷属化を済ませる事にした。
俺とヴェーダは眷属ネットで会議の生放送を考えている。
万民の意見を即座に拾う事が出来るので、細かいところまで話し合う事が出来ると期待したい。
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