第73話「俺はセウト寄りのセーフだ」
第七十三話『俺はセウト寄りのセーフだ』
異世界の神々が召喚拉致の手伝いをしているのには驚いたが、危険物の処理が出来て大助かりって事かねぇ。
ヴェーダ曰く、神が直接サイコ野郎を始末するワケにはいかんらしいからな。その辺の禁則事項はどこの神界も同じっぽい。
って、待て待て、召喚は“集団転移”ってのがあるってヴェーダは言ってたぞ?
そいつらも全員勇者なのか?
危ねぇなオイ。
『団体で召喚された者も広義の召喚勇者、すべてサイコパスです。各世界の神々が危険人物を各々の世界で纏めて一か所に集め、召喚転移魔法に備えています』
「何てこった…… そんな奴らがよくまぁ問題を起こさずこの世界でやっていけるな、前の世界でも危なかったんだろ?」
『サイコパスは“気狂い”とは違い、見た目ではその精神病質を認識出来ません。前の世界では犯罪行為に及ぶ一歩手前の状態でした。さらに、召喚勇者達の【広範囲無差別低能化スキル】や、【常時発動型精神汚染スキル】により、勇者の周囲に居る者はその異常な言動に疑問を抱き難くなります』
また変なスキル持ってやがんなオイ。
『広範囲無差別低能化スキルは、勇者の周囲に居る者達を“アホ化”します。知力が勇者の半分になり、勇者の知恵に敵うものが居なくなります。これは魔族にも効果を及ぼしますので注意して下さい』
「注意ってお前……」
『今まで優秀だった者が突然アホな行動をとり、勇者に討ち取られます。戦争などで自陣の中に突っ込まれたら混乱必至、自滅します。低能化スキルの対処法は、神経耐性を上げて脳への干渉を防ぐ予防法と、神経攻撃を無効化する結界等があります』
「はぁぁ、精神汚染の方は?」
『異性特効型の魅了スキルです。頭を撫でる事や笑顔を見せるだけで異性は魅了されます。精神耐性でレジスト・回避可能です』
「頭を何、撫でる? ってか、それで惚れられてオカシイと思わないくらい、異世界勇者は美男美女揃いなのか? 前の世界でもモテモテ?」
『逆です、モテる要素が皆無です。ですので、常識が備わっておらず、一般的な人間が嫌がる行為を平然と行います。しかし、相手の知能が勇者の半分以下に低下した状態で精神汚染を仕掛けますので、髪型を崩されようが獣耳に触れられようが股間や胸を凝視されようが、異性は勇者との関係を絶たず、逆に喜びます』
「ふぅ~ん、幸せだろうな、勇者」
「ブッヒ、何だその羨ましいスキルは……」
「……くだらん」
「さ、最低のスキルです!!」
「キング的には、欲しいかな」
フェチモンで誘って口説き落とす魔族とは違ったやり方だな。
相手をクルクルパーにするうえに意思が関係無ぇところが違いか。
……いやアウトやん。レイプと何が違うんだ?
要はアレだろ、アホな肉奴隷を量産させるスキルだろ?
人間同士で勝手に奴隷祭りすりゃいいが、何の為にそんなスキルを持ってんだ?
「そもそも、どうやってそんな危ねぇスキルを手に入れた?」
『これは“世界”が定めたルールで、勇者を召喚した人物や組織を加護する神々が与えたスキルです。異世界人の遺伝子と能力を自陣営に広める為でしょう。種馬ですね』
「ろくでもねぇ事考えやがるな、この世界の神々は。世界が定めったって……」
ん? 世界が定めた?
何の為に……
『ですが、この世界の王族や皇族は全て勇者の血筋です、神々の目論見は成功したと言えます。勇者の子孫も微弱ながら低能化スキルを展開していますので、臣下や関わる民草の暗愚化は万全です』
「ひょとして、隷属魔術は勇者由来か?」
『そうです。固有魔術として召喚勇者が所持していましたが、その子孫には遺伝性継承魔術として発現されました』
何だかなぁ……
異世界人とこの世界の神々は、害悪にしかなってねぇ。
かと言って、勇者の周りに居る人間を憐れには思えんが。
アホになったからって魔族を殺していい理由にはならん、アホはアホなりに良識や優しさを持っている、その良識や優しさを魔族に向けない時点で憐れむ必要が無い。そんな人間や獣人の肉奴隷もどうでもいい、勝手に子作りしてろ。
ただ、その中に魔族が居たら……
「あ、兄貴、落ち着こうぜ、な? どうした?」
「……兄者、南浅殿を祝う場だ、抑えろ」
「あぁ、悪ぃ悪ぃ。胸糞の悪ぃ事考えちまった。ってか、ミギカラの南浅王就任を祝わねぇとな」
「いやいや主様、有り難い事で御座いますが、それはまた
「お、お前……」
ミギカラが真剣な顔でマトモな事を言っている……
宴で真っ先に裸踊りするジジイだったのに……
妖蜂族の湯上り美人姿を見て森でオナニーするヤツなのに……
それで嫁さんから夜のご奉仕を強制させられるヤツなのに……
これがキングになったミギカラ…… 似合わねぇ……
だが、ミギカラの言っている事は正しい。
今回の魔竜眷属は弱かったが、それは飽くまでもダンジョン外での事、ダンジョン内の魔竜眷属はこんなモノじゃぁない。
それに、眷属がダンジョンに戻らない事を知った魔竜がどういった行動をとるのか、そこがまったく分からない。
予想では膿に浸かった中部魔族に何らかの命令を出して、浅部に送ると思っていたんだが…… 眷属が直接動きやがった。
魔竜からダンジョン外での全権を委ねられた妖狐達の判断なのか、妖狐達の独断だったのか、その辺りもよく分からん。
今回分かった事と言えば、四人のテイマー達は全員ハーピーが捕らえた冒険者だったって事だ。ヴェーダが知るピッピ達の記憶に、ハーピー達が捕縛した四人の姿を確認している。
テイマーは魔竜の眷属ではなかったし、隷属状態でも契約に縛られている状態でもない。考えられるのは“牧場”で餌付けされたか、牧場に人質が居るか、恐怖で縛られたか、普通に心服して君臣の関係ってところだが、これはハッキリ言ってどうでもいい。
人間が魔竜と組んでいようが飼い馴らされようが、俺達には関係ない。どっちも敵で滅ぼす対象だ。牧場で憐れに飼われていたとしても、まったく助ける気は無い。魔竜をブッ殺した後に俺が牧場経営引き継いでやるよって話だ。
とにかく、今は戦略を変えずに北の動きを注視しておく。
今日のところは最後に始末した妖狐とテイマーをアートマン様の許に送って、四頭のワイバーンを眷属化したら、第一砦に眷属の幹部格を集めて北伐会議だ。
あ、使者の準備しないと……
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