第72話「素敵やん」
第七十二話『素敵やん』
キング、それは種の頂点を極めた者、魔王種と呼ばれる存在だ。
世界各地に存在する魔王は全てこの魔王種である。
牛魔族のキング、人狼族のキング、吸血鬼のキング等々……
彼らは魔人に次ぐ実力を備えている。
魔人との違いと言えば、この世界の神々から助力が得られず、コアの力で兵隊を増やす事も出来ずに、人間や獣人の組織から包囲され袋叩き状態であるという事だろうか。
兵の補充も出来ぬまま、勇者や魔導兵器に滅ぼされた魔王の国は多い。
このユースアネイジア大陸中央に残る魔王は居ない。ほとんどの魔王が人類により別の大陸に追われるか滅ぼされ、残った魔王達は山脈を越えた北方の大地に逃げ込んだ。
北方に移った彼らは、永久凍土やスマップの森以上に広大な森、ハイジクララ山脈より高い山々に囲まれた盆地など、人類の食指が動かない土地に国を興し居を構えている。
現在、魔王が一番多い大陸は、地球で言うところのアフリカ大陸だ。この世界では『エイフルニア』と呼ばれている。
ヴェーダによると、皇帝を名乗る魔王が現れ、南エイフルニアの魔王達を
話を戻そう。
つまり、山脈の南側に魔王は居ない、居なかった。
数分前に大森林の南浅部でキングが誕生するまで、魔王種は居なかった。
身長210cmの偉丈夫。濃い赤銅色の肌に浮かぶ血管と引き締まった筋肉、長く乱れた黒髪から覗く二本の角が額を飾り、鋭い黄眼と上顎の反り返った長い牙は地獄の鬼を彷彿させる。
日本で見た各種鬼神像やイノシシの牙と同じだ、下顎の犬歯ではなく上顎の犬歯が上に反り返っている。かっこいいなぁ。
『キングミギカラ』に跪くハード達ゴブリン氏族長。俺に対する礼とは違った、種族の儀式礼だ。
ミギカラは苦笑して彼らを立たせた。
そのミギカラが目を伏せながら俺の前で跪く。
それに倣う氏族長達。これが眷属と主の揺るがない関係だ。
主でありボスである俺は、キングとなった氏族長ミギカラの立場を決めてやる必要がある。内外にガンダーラの上下関係をハッキリさせておく為だ。
だがしかし、俺はアホなので適切な官職や位階が判らない。
困った時のヴェダえもん、お願いします!!
『了解しました』
「すまんな」
『いいえ、相棒ですので。…… 完了しました、ご確認ください』
「早ぇなオイ」
フムフム、なるほど、ヴェーダが決めたミギカラのアレコレが俺の脳に叩き込まれた。便利だなー。
「ミギカラ、お前は今日から『南浅王』だ。南浅都督に命じる、軍級は大将、官位は
「ハッ!! 御下命、しかと受け賜りました。それでは主様、私のスティトゥアスをご確認下さい―― チェケラッ!!」
ミギカラが俺に進化後のステータスを見せた。
相変わらずポンポン見せるなぁコイツは。聞く手間が省けるから助かるが。
【名前】ミギカラ・マナ=ルナメル (眷属)
【種族】マハトマ・センズリン (魔王種)
【レベル】255 【年齢】68 【性別】男
【状態】絶好調 【ジョブ】魔王
【官名】南浅都督 【爵位】南浅王
【官位】正三位上 【軍級】大将
【勲位】勲三等
【HP】122万7,125 【MP】42万6,646
【総合力】2,612万5,917パワー
【特技】
『棍術:Lv17』 『遁走:Lv28』 『指揮:Lv38』
『怪力:Lv1』 『土魔法:Lv1』 『金魔法:Lv1』
『圧壊』 『雄叫び』 『カリスマ』
『強運』 『子作り:Lv55』 『自然回復:大』
【称号・加護】
『アートマンの加護・一型=言語理解・総合力10%上昇』
『氏族の英雄=指揮のLvが上がり易い』
『色魔=子作りのLvが上がり易い』
『岩猿の眷属=総合力が20%上昇』
『キング=ゴブリン種への指揮力上昇、配下の総合力20%上昇』
【耐性】
『火炎無効』 『物理八割減』 『即死・呪殺反射』
『土・金属性無効』 『精神・神経無効』 『飢餓耐性』
ぶほっ、何だこれ、ほぼ無敵じゃんか。
「やったじゃねぇかミギカラ、ガンダーラ最強はお前だ。ハハハッ」
「お褒めに与り恐悦至極。このミギカラ、これまで以上に粉骨砕身して主様とアートマン様にお仕えしたく存じます。イェア」
『また
「あ、ハイ、そうですね、気を付けます!!」
「ブッヒ~、しかしアレだな、ゴブリンのまま一気に進化したのはいいけどよ、そうなると、段階を踏んで高みに到達したヤツより、能力は低めになんの?」
『そうですね、ホブゴブリンとゴブリンでは能力の上昇率が違います、今回はゴブリンの能力上昇率でレベル255まで上がった事になります』
「ブッヒ、なるほどなー、一長一短があるわけだなぁ」
『スコルやハティの方法に似たレベルリセットの秘儀もありますが、アートマンが不完全な状態では命の危険を伴いますのでお勧め出来ません』
あぁ、スコルとハティは危ない事してたわけか。ヴェーダが止めないって事は、あの二匹は問題無いのかな。
まぁ、何で森のエッケンウルフがそんな秘儀を知っているのか疑問に思うが、命名後の変化が特殊だったからなぁ……。名前、か。
この話は後でだな。今はレベルリセットの事が聞きたい。
人間もやってたら面倒になりそうだ。
「で、レベルリセットしている人間もいるのか? 簡単には出来そうにないが」
『神の力が必要ですので通常は無理ですが、勇者や聖女などの特殊な存在なら実行している者も居るでしょう。人間がリセットすると能力は百分の一になりますが、スキルレベルは変わりませんので、魔族や魔獣を狩ってすぐに元のレベルに戻れます』
「マジか……それは神の加護で?」
『加護ではなく授かった能力です』
「良い能力貰ったなソイツ」
『能力を使う度に“人の心”を失いますが』
「ブヒッ、ゴミがクズに変わるだけじゃねぇか」
「……そのまま殺人鬼にでもなってくれると助かるな」
「フッ、勇者など、このミギカラがチョチョイですわ」
人の心を失う、か。本当に駒扱いだな。
善人だったら大きな損失になりそうなもんだが……
『勇者に一般的な意味での“善人”は居りません。現地勇者も召喚勇者も、すべてサイコパスです』
「は? 何でそんな……」
『召喚勇者は各国の皇族・王族や教会関係者により異世界から召喚されます、その際、異世界の神々は“不必要な者”を優先的に召喚転移魔法効果範囲へ導き、世界の“ゴミ”をこちらに移し、手を汚さずに排除します』
「なんじゃそりゃ…… って事は、この世界はゴミ処理場かよ。不必要な者ってのがサイコ野郎か?」
まぁ俺も似たようなもんか。
『そうです。召喚された
「ブッヒー、そんな危ねぇ奴ら牢にブチ込んどけよ~」
『実際に牢獄へ送られた勇者も存在しますが、100%脱獄されます。その上、召喚に関わった者は皆殺し、時には王を
「……
『牢獄へ送られるのは重度の精神病質者です。ほとんどの勇者は出奔して“召喚された都市”またはその付近の街で冒険者になり、魔族や無法者を虐殺し始めるので、各国のトップはそれを望んで召喚します』
なるほど、虐殺マシーンを野に放つわけか……
余計な事しやがって、と言いたいところだが、人類側も被害甚大っぽいな。
ザマねぇや。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます