第69話「まぁ俺が一番似合うんですがね」




 第六十九話『まぁ俺が一番似合うんですがね』




 イケてるなレイン。魔族では少ない碧眼もイカス。


 しかし、リザードマンは男も女も髪が無い、そもそも体毛が無い。

 あの髪はどこから生えているのだろうか? レインの頭にある鱗はどうなっているのか……



『あの髪の毛は鱗が変化した物です』


「あぁ~、鱗か。何の意味があるんだ?」

『雄ライオンのタテガミと同じですね』


「う、う~ん、他には?」

頭部防御力アデ・ランスが上がります』


「なるほど…… ヘルメット要らずだな、羨ましい」

『レインの総合力は997万4,896になりました』


「おいおいヴェーダ、レインに許可貰って教えろよ」

『既に了承を得ております』


「ならいいけどよ。礼儀は欠いちゃいけねぇ」

「……兄者、総合力とは何だ?」


「あ~、能力の総合値みたいなもんだ。条件付きバフ・デバフ効果を抜いた状態の、お前が出せる全力の数値、かな」


「……なるほど。兄者の総合力を聞いてもいいか?」

「ブッヒー、俺も気になるぜぇ!!」

「わたっ、私も、あの……」


「俺か? レベル35の2,400万パワーだ」


「ブッホ、マジかよ……」

「……フッ、さすがだな」

「賢者様……カッコイイ……」


「何言ってんだお前ら、眷属進化したイセとトモエはレベル5で総合力1億だぜ? しかも耐性・結界ブチ抜く【貫壊】持ちだぜ? 軽い舌打ち2回で俺を殺せるんだぜ? 総合力2,400万なんざ可愛いモンよ、アイツらから見りゃ俺なんてデケェ雄ゴリラのヌイグルミと同じだよ?」


「……妖蜂女王と妖蟻皇帝の妹御か、噂には聞いていたが」

「そりゃヤベェな、兄貴のアレだろ? 小指コレだろ?」

「あ、あの御二人は、ちょっとあの、怖いです……」


「ハハハ、まぁ、上には上が居るって事だな」



『ナオキさん、ミギカラとシタカラが妖狸ようりの一体を釣り上げました。狼に乗ってこちらへ誘導しています』


「よし、他の眷属達は無事か?」


『ご指示通り、妖蟻族が造った浅部連絡地下通路に避難させました。ゴブリンの氏族長ハード、ナナメニ、カナリ、コカゲデの四名が、狼達と共に連絡通路を使ってもう一体の妖狸釣りに向かっております』


「危なくなったらすぐに撤退させろ、蜂を使って時間稼ぎしてもいい」


『了解しました』



 妖狸にはダメージを与えられなくても、ワイバーン御者の人間は蜂の群れに耐え切れんだろう。数十匹の眷属蜂から毒を流し込まれれば間違い無く即死する。撤退までの時間は十分に稼げる。


 テイクノ・プリズナでレベルを上げた“精鋭蜂”の素早さなら、妖狸相手でも針を刺し込めるかも知れんな。精鋭の奴らはラヴ達の支援に回っているから大森林に居ないが、今のうちに人間狩りで蟲達のレベルも上げておこう。


 さて、猟師は狸を鉄砲で撃つ用意をしなきゃな。

 その前に、後始末~後始末~っと。


 フンフン~ン、フンフフ~ン。

 あんた方どこさ、肥後さ、肥後どこさ、熊本さ~――



「――熊本どこさ、船場せんばさっ。船場山には狸が居ってさ、それを猟師が鉄砲で撃ってさ、煮てさ、焼いてさ、喰ってさっ。それをの葉でちょっと被せ~、神像にお供えして終了。アンマンサン・アーン」


「ヒデェ歌だなぁ兄貴。アンマンサ~ン」

「……鬼のわらべ歌か? マンマンチャン・アーン」

「ス、ステキ…… あっ、アンマンサン・アーン」


『供物を捧げる時は真面目に』

「あ、って、何やってんだ俺……」



 いくら敵だって言っても、遊び半分で供養するか普通……

 ワイバーンを撃った時も何かふざけてたぞ俺……

 何だコレ……危なくねぇか?



『気付いてくれて何よりです』



 あ、やっぱ何かオカシイの俺?



所謂いわゆる、悪魔のささやき、と呼ばれるものですね。ナオキさんは幼い頃の【見習いサイコパス】に戻りつつありました』



 うおぉぉぉい!!

 すぐ教えてよっ、ってかいさめてっ!!



『自分で気付くまで口出し禁止、それがアートマンの意思です。これもまた天罰ですから。もう少しで【無の根源】へ行くところでした』



 おぅふ。ヤダ怖い。

 ぼ、僕は大丈夫なの?

 合格なの?



『はい、合格です』



 そもそも、悪魔の囁きって何? 何で俺にそんなもんの影響が?



『……貴方の周囲に二匹ほど、大悪魔に連なる者がおりますので。その一族からの勧誘ですね』



 う~ん、『二匹』かぁ……、ワッカンナイナー……。

 二匹の小熊とか――



『狼ですね』



 知ってた。


 と、とりあえず、邪悪なハートはゴミ箱へ。

 サツガイが楽しくなってきたら危険信号だと思っておこう。




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