第31話「う~ん、スモーキー達は死刑で!!(切実)」
第三十一話『う~ん、スモーキー達は死刑で!!(切実)』
よっしゃ、帝国に着くまで大魔王をこれ見よがしに揺らしながら、詔書の内容を整理しよう。
え~っと、つまり――
“お猿のお兄ちゃんの事は知っているよ!! 『水の都』の事も全部ぜ~んぶ知っているよ!! 小さな蟻さんがずっと見ていたよ!!”
“でも、変だナ~、あっ!! 見て見てっ、お猿のお兄ちゃんっ!! あれれ~、おっかしいぞぉ~、蜂さんの女王に『おみやげ』をあげているのに、蟻さんの偉大な皇帝たる
“これってさ、おかしいよね? ひょっとして挑発? 朕を激おこプンプン皇帝にさせたいの? その糞ゴブリン共を帝国に奉公へ出したのも、お猿のお兄ちゃんの計略? 朕そろそろ血管切れそうww ちょっとさ、お兄ちゃん地下室来いや”
――と、言う事だな。
ゴブリンの
ハッキリ言えば、俺が
今夜、この場に来てスモーキーを回復させた事も、誤解に状況証拠をプレゼントする形になった。ツイてねぇ。
無論、スモーキー達の事は『お好きなように』と、処分を妖蟻族に丸投げした。この時の俺は、この夏一番の笑顔を見せたと思う。
スモーキーは土中から出され、再び縛られて放置された。ガンバレ。
聞くところによると、スモーキー達は妖蟻族の縄張りである南浅部北側一帯で小動物を狩って森を荒らしていた為、妖蟻族の兵が地中から顔を出し注意を与えたのだが、それがいけなかった。
奴らは女に飢えている、そこに現れたのが白髪褐色肌の美女、ほとんど目にする事は無い妖蟻族の乙女を見たスモーキー達は、その兵士に地下帝国への奉公を嘆願した。
その際、スモーキーが「ナオッさんのダチ」と言った事で、兵士はそれを上官へ報告。その報告が俺の存在を知る皇帝まで上げられ、見事、ゴミ共は美女に囲まれた奉公先を手に入れたわけだ。
皇帝は俺の眷属がカスガ女王の許で真面目に働いている事も把握していたし、ガンダーラの和やかな雰囲気も知っていた。
俺が特別好戦的でない事も、ハードやワンポ達との戦いにもならぬ
何より、俺があのカスガ女王や王妹トモエと懇意にしている事が、皇帝のスモーキー達に対する警戒を解かせてしまった。
俺と懇意になった女王姉妹や妖蜂族が得たアレコレ、特に急激に若返ったカスガとトモエの事実に、妖蜂の王族とも顔見知りである皇帝が『では朕も』と考えるのは帝国の皇帝として当然だろう。
そして、自分の周囲で起こる事象を自分に都合良く解釈するのも、敵無しの皇帝にとっては自然な流れかも知れない。
“南の猿人が妖蟻族との繋がりを得る為に、南浅部の北側にゴブリン共を徘徊させた。それほど朕に若返りの秘薬を献上したいか、愛い奴”
妖蟻族と縁を結ぶのは至難の業だ、まず帝国の入り口が解らない。妖蟻族が滅多に地上へ出て来ないので繋がりを持つキッカケすら見付けられない。
そんな状況に痺れを切らした猿人が、眷属のゴブリンに帝国との接触を図らせた、南浅北部の地で狩りをして“見付けてもらえ”と。
俺の必死なアピール、ラブコールと受け取ったわけだ。
気分を良くした皇帝は俺を待った。
まだか、まだ来ぬか、何故来ぬか、ナメとんか?
しかし、待てど暮らせど猿人は来ない。
カスガとトモエは既に『美少女』と呼べるほど若返ったと聞く。
次第に皇帝の機嫌は悪くなっていった。
そして、トドメがスモーキー達だ。
妖蜂族と妖蟻族は生態が酷似している。
違いと言えば、住む場所と毒針、皇帝と
妖蟻族も牙に毒は持っているし、蜜も保有する、口噛み酒まで妖蜂族と同じだ。
つまり、妖蟻族の男もまた、『高貴なるニート』である。
そして『バカは死んでも治らない』。この言葉考えた日本人は天才ですね。
妖蟻族にセクハラかます馬鹿、皇帝は正に怒髪天を突く状況だったらしい。
普段は優しく、間延びした口調が特徴のおっとりした女性である今上帝だが、ついに俺への怒りが爆発。鬼の形相でスモーキー達を激しく非難しボッコボコにして尋問した。
しかし、スモーキー以外のゴブリン達は俺との繋がりを否定する。
スモーキーの話も何やら怪しい。
誰ぞ、このゴブリンと猿人の関係を洗える者は居らんか、と皇帝は配下に聞く。
大森林に散らばる無数の小さな蟻。北の村やレイプ未遂現場に居た彼らの数匹が、俺とスモーキーに関係有りと報告。俺とスモーキーの遣り取りは解らない。
そこで皇帝は考える。
俺とゴミに関係が有るのなら、何らかの手段で連絡を取るのではないか?
それはどのような手段か?
猿人は光り輝く精霊を使役すると聞く、ならばその精霊の念話か?
ほぼ間違い無いはずだが、証拠となる決め手が無い。
しかし、ジャキ達の正確過ぎる遠征での軍事行動、魔族と魔獣の混成部隊であるにも拘わらず、そこにまったく乱れは無い。しかも無言でのやり取りが多い。
拠点に居る眷属達の狩りに見られる動きにしても、“誰か”が的確に、しかも声を出さずに指揮を執っている事は明白。
観察している蟻達の報告に誤りは無い、数千数万の蟻が同じ報告を上げているのだ。
それでも解らんなら是非も無い、ゴミを餌にするまで。
丁度良くエッケンウルフの斥候隊が近付いている、連絡手段は解らずとも、繋がりをハッキリさせる事は可能、このアホ過ぎるゴブリン達が密偵や刺客などには到底思えないが、俺の真意は知る必要がある。
俺の答えによっては戦争も辞さない、猿人の力と精霊の力、この二つは二か月ほど前の晩に垣間見る事が出来た。
猿人は妖蜂族と懇意、戦となれば南浅中央と東の二大勢力を相手にしなければならない恐れも有る。そうなれば大きな被害が出るだろう、負ける気はしないが傷が深すぎる。
だからこそ、慎重に猿人の言動を観察する必要があった。
間違っても数の暴力で恫喝など出来ない、南の猿人だけならまだしも、妖蜂族を出張らせるわけにはいかない。
奉公に対する慈悲、圧倒的弱者に対する軽蔑、故にゴブリン共は生かして捨てるが、南の猿人が放った密偵などであったなら、全軍挙げて叩き潰す。
これが、妖蟻の女帝が出した答えだ。
ただの疑惑で俺と戦争するにはリスクが高い、そして仁義に欠ける。
しかし、仁義を欠くなら生かしておけぬ。シビレるね。
ハハッ、圧倒的な軍事力で恫喝すれば簡単なのにな。
悪くない。非常に好感を持てる女帝様だ。
『そろそろ到着のようです』
「ああ、え~っと、ここは……」
俺が招かれた場所は、あの『スプラッシュの丘』だった。
やっちまったなぁ~、帝国の玄関にマーキングしたぜ俺……
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