第12話

「ママのお仕事?」

友達と遊ぶ中でふと気になり、ママに聞いたことがある。

「うん!真紀ちゃんちの、ママはね、パパと一緒にお魚屋さんやってるんだって!」

「パパとね・・・・・。」

「ママ?」

あの時、ママはこんな酷い事を聞く私にどんな感情を持っていたのだろう。

ママは、あの時どんな顔で答えたんだっけ。

もう、思い出せない。


「私のママ・・・・?」

「ああ。そのツテがあってね。もしかしてと思って聞いてみたら、同僚に昔子供を置いてきたという話をしていたらしい。」

「ママ・・・。」

「美海の話を聞いておせっかいだとは思っている。でも、放っておけなかった。

母親の話をしている美海を、何としてもどうにかもう一度会わせてあげたい、と。」

「蓮さん・・・。」

どうしたいいかと俯く私の目の前に一枚の名刺が置かれる。

「これは?」

「・・・・美海の母親の名刺だよ。」

「!」

そこには風俗店の名前と真ん中に「美紀」と書かれている名刺。

「あとはどうするかは美海次第だよ。」

「・・・・なんで、私にこんなに良くしてくれるの?」

「え?」

「蓮さんに私もらってばかりで、何もとりえもない。自分の体と時間を売ることしか出来ないのに・・・・。」

自分で言っておきながらも惨めな自分に嫌気がさしてくる。

私って、なんの為に生きてきたんだっけ?

「美海。」

名前を呼ばれて顔を上げると、蓮さんに抱きしめられた。

「蓮さん・・・・。」

「美海のこと、真剣に思っているからだよ。」

「!」

「美海には幸せになってほしい。その一部に俺が関われたらって思った。」

「蓮さん・・・・。」

「ちゃんと昔のことに向き合って、そろそろ幻の自分抜け出してもいいんじゃないかな。美海ならきっと大丈夫。俺もいっしょに考えるから。」

蓮さんはそういうといつもの笑みを浮かべる。

ああ、本当にこの人には敵わないな。

「美海はどうしたい?」

「・・・・ママに会いたい。私が嫌われていようと、ママに会いたい。」

私の言葉を聞いて、蓮さんは優しく微笑みかけた。






















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