第8話

「そっか。蓮さん意外と大胆な事言うね!」

ふむふむと感心したようにいりえが呟いた。

「絶対面白がってるでしょ。」

「だってさ、ずいぶん思い切ったことしたなと思って。美海もね。」

馬鹿にしたような口ぶりでもない、優しいいりえの言葉に心臓がどくんとはねた。

でも、これはさっきとは違う。


「パパ活をやめて、俺と一緒に住もう。」


そう言われて心が揺らいでいないというのは噓になる。

「怖いの。蓮さんにそんな事言われると。ほかの客は自分の欲しか見てないのに。私の中見透かされてそうで。」

「美海・・・・。」

「ごめん、いりえ。こんなの聞いてもつまらないだけだよね。」

取り繕うように笑顔を作ると、いりえが優しく私を抱きしめた。

「言ったでしょ。俺の前では幻の美海じゃなくていいよって。」

「・・・・」


どくん、どくんと心が跳ねる。


「美海が心配なんだ。」

真剣な眼差し。

私が家を出て行く前、振り向いた時、ママが私を置いて出ていく時と同じ悲しい顔をしていた。


「好き・・・・私、蓮さんの事好き。」

「そっか。よく認められたね。」

そう言いながら私を優しく抱きしめる。

「でも、怖いの。ママと同じように捨てられるんじゃないかと思うと、本当に好きになって良いのか。」

そう言った私を見つめ、息をついた。

「その顔、パパ活で使えば速効大人気の指名になると思うけどなー。」

「・・・いりえ、私結構深刻なんだけど。」

「ごめんごめん。美海が可愛くてつい意地悪したくなっちゃうんだよー!こんな時に言うことじゃないけどさ。」

そう言っていりえが私の頭をあやすように撫で、ぽつりと呟いた。


「俺ね、実はさ美海の事好きだったんだよ。」

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