ファンタジー 魂狩りの魔女
ある発掘現場から石の棺が発見された。ただ、そこは数十万年前の地層という事もあり、もし本当に棺であれば人類史上初の人工物として大発見になる。すぐに関係者が呼ばれ、石の棺が開けられることになった。
「それじゃあ、ゆっくりと開くぞ」
絶対に壊してはならないという緊張感もあり、作業員たちはゆっくりと棺を開け始めた。不思議な事に、石で出来ていると思われる蓋は軽く、まるでただの木蓋を開けている感覚だった。
棺の中に日があたり、何かが入っていることが分かった。
「……人形?」
作業員には、簡易なワンピースを着た女性の人形が横たわっているように見えた。しかし、その人形の目は見開かれる。
「――――」
人形が言葉を発し、人であると、女性であると認識された。数十万年前の棺から生きた女性が現れるはずがなく、現場は一気に誰かの悪戯の可能性が高くなったという雰囲気になった。女性は学者の一人に手をかざすと、何か呪文のような物を唱えた。
「あー、あー、これで言葉は伝わるか? ふむ、予定通り、私が自身を封印してから随分と時間が経ったようだな」
「あ、あんたは一体誰なんだ? なぜ棺の中に?」
「何故だ。お前達からはほとんど魔力を感じぬ」
女性は作業員の問いには答えず、逆に質問する。だが、魔力と言われても、現代の人間に魔力なんてものは無い。
「まさか……。ライフ・サーチ」
女性がそう唱えると、一瞬のうちに光が広がり、数秒後にはその光は、地球全土を覆う。
「ふぅ、これほど魔力が薄まるとは思っていなかったぞ。これでは、魔法を使えるものもおるまい」
「何を言っているんだ?」
作業員の質問に答えるわけではないが、女性は独り言を続ける。
「自身の分身を作ったまでは良かったが、まさか質が落ちるとは思わなんだ。これだけの人数に別れてしまえば、回収するのも手間だな……どれ、どの程度のものか確認しよう」
女性はそう言うと、地面に手をつく。その手を引き抜くように立ち上がると、その手には1本の剣が握られていた。そして、あぜんとしたまま立ち尽くす作業員を、まるで丸太でも切るかのように斬り捨てる。斬られた作業員は、光の粒となって女性に吸収された。
「やはり、この程度の魔力か。はぁ、まさかたった数百年で科学とかいうものにシフトして魔術を捨てるとは……」
現場にいた人たちは、作業員が殺されたのをみて逃げ出した。その背に向かって女性は手を向ける。
「ライト・ソード」
光の剣がその背に刺さり、その人もまた女性に吸収される。女性はそれを何度か繰り返すが、途中から止めた。
「効率が悪すぎる。吸収できる魔力量に対して、いちいち魔法を使ったのではほとんど魔力を回収できぬではないか」
女性は、当初の予定を思い出す。本来の予定では、自分の魂を分けた分身は、猿と交わり数を増やし、それと同時に魔力を高めている予定であった。しかし、猿の知能レベルが低く、魔力を高めるどころか逆に数が増えるごとに本来の魔力を分けてしまい弱まるしまつ。
数千年前までは、何度か文明を起こすほどの発展を見せた事もあるようだが、何者かによって潰されたようだ。
「一体、だれが私の邪魔をしているのだ? ……まさか、やつも生きているというのか」
女性は、自身と同じ様に魔力を集めようとした男性の存在を思い出した。
「奴よりも早く、魔力を集めなければ」
その時、銃声が響くと同時に、女性の肩から血が噴き出す。
「がっ! 何だ? キュア」
女性はすぐに肩に手を当てて回復魔法を唱える。音のした方を見ると、銃を構えた男が立っていた。
「やはり予言の通り蘇ったか、魔女よ」
「あ奴の差し金か? だが、その程度の武器では私を殺すことは出来ぬぞ」
「その様だな。だが、我らはお前を殺すために準備を整えてきた」
その日、自衛隊がたった一人の女性を殺すために派遣された。しかし、女性は辛くも現場から逃走することに成功する。女性は、敵の戦力を調べるためにしばらく身を隠す事にしたのだった。
あらすじで楽しむ 斉藤一 @majiku77
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あらすじで楽しむの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます