第47話 世界の異変。

「はふう」

 アウラも隣でそんな声を漏らしてる。

 っていうかこのこ竜だよね?

 いっくら人化してるからってほんとここまで?


「アウラも温泉好きなの?」

「そりゃあもう。山奥の自然な温泉とかでも見つけたら入るくらいは好きですよー」

 そっか。

 白い肌がうっすらとピンクに染まる。

 はう、このこったらやっぱり美人だよね。

 真紅に流れる髪をポニテにまとめ、ほんわか紅色に染まったうなじがすごく色っぽい。

 負けてる? あたし。

「主様って肌綺麗ですねー」

 そんな事をさらっと言うアウラ。

「温泉は肌にいいっていうしね?」

 ちょっと恥ずかしくってそんなふうに誤魔化すあたし。

「そういえば、この間見つけた山奥の温泉はよかったですよー。肌もすべすべになりましたし〜。なんて言うんですかね、自分の太ももがすべすべで、歩いてても触れると気持ちがいいって言うか」

「あは。それいいね。じゃぁ今度はその山奥の秘湯にチャレンジしよっか」

「いいですねー。案内しますよ」


 ふふ。

 山奥の秘湯にノワと一緒に行けたらな。

 何だかそんな妄想をしながらお湯に浸かってたらのぼせてきた。


 まだ早い時間帯なせいか他のお客は少なくてほとんど貸し切り状態だ。

 ああ。

 こういうのを幸せって言うのかな。

 なーんてことも頭に浮かぶ。


 まったりゆったりお風呂に浸かって。いいかげん茹蛸になりかけて。

 お風呂を上がるとちょうど冒険者風な女性が数人入ってきた。


 どうも。

 お先に。

 みたいに会釈して体を拭いていたら背後でその人たちの会話が聞こえてきて。


「じゃぁ明日の聖女さんの実習って、人数たりてないの?」

「そうみたい。ちょうど東にできたダンジョンに結構人数取られてて、頭数が足りないからどうしようってギルドの受付の子が困ってた。このままだったら職員さんもでなきゃ足りないって」

「聖女さんの実習は危険も少ない割に報酬もいいからって、男連中に結構人気だったのにね。どうしようか、あたしらも参加する?」

「うん、明日の朝ギルドに行ってみてまだ募集人員足りてないようだったら参加しよっか。明日はちょうどうちらのパーティお休みだしね。お小遣い稼ぎにはなるかも」

「あは。まあね。新米聖女さんのお守りくらいなら危なくないだろうしね」

「そうそう。楽勝でしょ?」


 はう。

 聖女さん、かぁ。

 ちょっと見てみたい気も。



 ⭐︎⭐︎⭐︎


 夕食はオムライスを頂いた。

 ふわっふわな卵がかかったその上にケチャップがのった、ほんと日本でよく食べたようなオムライス。

 この世界ってほんと、ファンタジーな世界なのにどことなく地球の文化が混ざってる感じ。

 まあゲームの世界とそっくりなのもそうだけど、こうして食文化までともなると偶然じゃ済まされない気も。

 最初はマギアクエストの世界だから、で、納得しようと思ったけどそれだけじゃない何かを感じる。


 神様、デウス・エクス・マキナのことも。

 あたしの名前がマキナ、なのも。


 そしてアウラが語ったあたしの使命の話も。


 ゲームの世界っていうのは結局誰かの空想だ。

 人の作り出した創作。

 小説や映画も一緒。

 創作世界だ。


 そんな創作世界に迷い込んだのだと思っていた。

 創作世界にそっくりな異世界に。


 でも。


 あたしには難しいことはわからない、けど。


 偶然、とか、たまたま、とかじゃないってことくらいは、わかる。


「この世界における異変を探すため。世界の異変を調整する為」

 と、そうアウラは言った。


 でも?


 あたしがしたことと言ったら、本来ゲームではイベントボスとなって倒される役回りの、悲劇の王子ノワを助けたこと。

 ノワの運命を変えてしまった事。

 それって、世界にとっては異変を作り出してしまったって意味じゃ、ないの?


 あたし自身がバグになってしまったんじゃ、ないのだろうか?


 何だか、怖い。


 あたしはこのまま突き進んでも、いいのだろうか?


 自分の信じるようにこの世界を変えてしまっても。

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