第46話 湯船に浸かって。
城門をくぐると見えてきたのは白い煉瓦。
道路も建物も全て白い煉瓦で覆われて、さながら白の街といった佇まい。
これはゲームの時とビジュアル的には変わらないけど、改めてこうして現実となった姿をみるとその壮大さに心が震える。
到着したのが夕方だったので今日のところは宿屋を探そうと、街を見て廻る。
宿屋、旅館、色々あるみたいだけど街の奥に行くほど料金も高く、建物も立派な感じになっている。
お金がない訳じゃないけどあんまり目立つのも嫌だし、あたしは城門に近い場所にあった猫の家亭を選んだ。
一階が飲食店になっている所も猫って名前もロムルスの山猫亭を彷彿とさせて何だかいい感じに見える。
入り口をくぐって泊まりたいんですけどーって声をかけるとらっしゃい! って気さくに返事をくれる店員さん。
やっぱりこういうお店の方が安心するなぁってちょっと笑みが溢れる。
お堅いお店だと何となく緊張するし、それに。
そもそもゲームの世界にはこういう宿屋に泊まるとかそういう行為は基本必要なかったし。
あ、誤解を与えそうなのでちょっと修正しておくと、ゲームではHPやMPを回復するために宿屋に泊まるというアクションは必要だった。でもそれってお金を払うとそのまま朝になるだけの行為で。
ご飯を食べたりベッドで眠ったりするわけじゃなかったの。
完全没入型のVR MMOだとそういうこと(寝たり食べたり)もできるゲームもあったみたいだけど、マギアクエストはあくまで3Dホログラムゲームだったしね?
あくまでゲーム画面を見てるだけだったあたしには、こういう宿屋は新鮮で、それでもって楽しみでもあったのだ。
そういえば山猫亭には大浴場はなかったけど、王都の宿屋はどうなのかなぁ?
お風呂、入りたいなぁ。
そう思ってたあたし。
宿屋選びにもそれは重要なポイントで。
「ねえねえ主様、お風呂行きましょー」
「あは。楽しみー」
「王都は天然温泉も多いって聞いてますよ。ここはどんな温泉でしょうか」
まだ夕食の時間には少し早い。
ときたらまず大浴場だよねとばかりに、お部屋に案内された後すぐあたしたちはお風呂に向かった。
ふふ。
ほんと楽しみだ。
⭐︎⭐︎⭐︎
食堂の横からそのまま地下階に降りる。
男女別に別れている入り口。あは。何でだか日本のお風呂屋さんのような暖簾がかかって。
脱衣所で服を脱ぎ、いざ浴場へ。
ガラっと横開きの扉を開くと古代のギリシャ建築風の真白な大理石が見える。
白く太い柱が高い天井を支え、コンコンと湧き出るお湯が浴槽から溢れていて。
ってこれ、何処のスーパー銭湯なのか?
ちょっと豪華な感じではあるし古代ギリシャな雰囲気はあるけど、完全にどこぞの現代日本のスーパー銭湯か温泉旅館な雰囲気だった。
洗い場で(流石に蛇口はついてなかったけどその代わりコンコンとお湯が湧き出ていた)体をさっと洗い、浴槽に浸かる。
「はう。気持ちいい」
この世界で湯船に浸かるのは初めてだけど、体の芯から温まるこの感じ。
とろけるような快感に、あたしは思わずそう声を漏らしていた。
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