第33話 神竜。
「ソユーズ。俺はまだお前らにされたことを許せたわけじゃない。少なくとも、仲間だと思って一緒に戦ったお前たちから裏切られたと感じた時の俺は、闇に落ちてもおかしくなかった。ここにいるマキナのおかげで救われたんだけどな。だが、今は」
ノワは正面の魔獣たちを見据え、叫んだ。
「人として生きたいなら、人として死にたいなら、抗え! 目の前の魔獣から目を逸らすな! 俺たちは、人間だ! その誇りと共に生きろ!」
そのまま手にしたロムルスの剣にギア・ディンを集め。
「ディン・ブレイク!」
そう、雷属性の呪文を唱えた。
バギバギバギといかづちが走り正面の魔獣を薙ぎ倒す。
「ああ。殿下、いや、ノワール。俺は抗う。そしてできればまたあんたと……」
「ほらほら、そんな変なフラグ立ててんじゃないよ! ソユーズ」
「そうだよ。僕らはまだまだやれるってとこ、見せてやろうよ」
「ラプラス、サイレン……」
はは。三人とも頑張ってね。
うん、じゃぁあたしもこんなところで怯えてたら笑われちゃう。
頑張らなきゃ。
「ノワ。あたしも頑張る」
「マキナ……」
「だから、あなたの背中をあたしに守らせて」
ノワールが笑みをこぼす。
あたしの気持ち、通じた、かな。
じゃぁまずは。
あたしは両手を頭の上に掲げ、召喚魔法陣を展開する。
それも、今回は一気に六つだ。
これだけの大量の魔獣が居るんだもの。こちらもそれ相応の布陣で望まなきゃ。
黒竜、ブラド。
紅竜、レッドクリムゾン。
青竜、ブルーラグーン。
黄竜、ジラーフ。
赤竜、レッドストライク。
そして白竜、パイロン。
聖竜エレメンタルクリスタルは今回はお休み。あのこはこういう力任せな戦いには向かないし。
空に浮かんだ六つの魔法陣から呼び出される竜たち。
みんなあたしが苦労してティムした子達だ。というかこの子たちにかかれば並の魔獣は歯が立たないくらいの強力助っ人かも。
「おお、伝説の神竜が、六体も……」
ソユーズたちがちょっと驚いた顔をしているけど無視無視。
ノワールもちょっと驚いてるからこっちはね。
「あたしの召喚獣なの、強いから役に立つよ」
そう言ってウインクして見せると、彼、ちょっと苦笑いしてあたしの頭をくしゃくしゃってして。
「はは。叶わないな。マキナには」
そう言って少し笑顔になった。
そのまま乱戦に突入したあたしたち。
竜たちはそれぞれブレスを放ち魔獣たちを殲滅していく。
レヒトの周りはまだブクブクと泡が産まれ、そしてそこから魔獣が湧いてくるからなかなか減らないけどそれでも。
ノワも、ソユーズたちも、そこまで負担はかからず戦えている。
あたしも。
ノワの背中を守る。そう決めたから。
解き放たれた竜種達は、それぞれがそれぞ思いのままに夜空を駆け巡って行った。
紅いルビーのように光り輝く鱗を持つのは紅竜レッドクリムゾン。
彼女はその権能、次元をも引き裂くブレス、
あれは、まともに当たったらあたしでも無事じゃ済まない。
あの子をティムするまでに何度死んだかわからないくらいだ。
たぶん、竜種の中では最強の攻撃力を誇る。
ギア・アウラの上位存在でもある彼女は、竜種というかその存在そのものが神デウスによって創られし生命体、真・ギアと呼ぶべき存在なのだ。
ああもちろん人型にもなれる。アウラ・クリムゾンという名前は本来そうして人の姿を模した時の彼女の名前でもあったし。
赤竜、レッドストライク。
真っ赤なその色はルビーのような紅竜とはまた違った熱い色。
真っ赤な炎で全身を覆った炎の竜、レッドストライク。
鳳凰のように輝く赤に燃えるその姿、その翼を広げ空を舞う姿は炎の鳥にも見紛える。
吐き出す炎のブレスも強力だけれど、やはりその特性は再生。
彼は死なない。何度でも蘇るのだ。
必殺技、
まあ要するにぶっちゃけ体当たりなんだけど、炎と化し突撃するその技に耐えられるもの無し。そんな熱いドラゴンなのだ。
青竜、ブルーラグーン。
碧い海の色、そんな艶のある鱗のブルーラグーンが吐き出すブレスは爆散する水流。
そして、氷の刃。
うん。でもそれだけじゃなくて。
ほら、彼女の権能が炸裂した。
海で使えば大津波を、空で使えば大嵐を巻き起こすその権能。
魔獣たちがその振動波に飲まれつぶれ落ちていく。地獄の絵図のように。
黄竜、ジラーフ。
地にあって天を堕とす。
大きな枝のようなツノに長い髭。ワニのような口を持つドラゴンの頭に、四つ足の馬のような体を持つジラーフは、鳳凰レッドストライクと対を成す地の麒麟。
その権能は
一見攻撃には向かなそうなそんな権能だけど実はかなり強い。
そのブレスは肉体ではなく
精神強度が高くないと耐えるのは難しい。
砕かれなかったとしても相応のダメージが残る。
特に魔力はかなり削られることになる。
ああもちろん単純に戦闘力だけみてもかなり高いので、このジラーフと正面から戦って勝てる相手は少ないだろうけど。
白竜、パイロン。
彼はちょっと地味めだけど、地面にあれば大山に、大空あれば、まるで浮遊城にも見える巨体。
亀のような甲羅を持ち頭にも尻尾にも棘のようなツノがたくさん生えているそんな恐竜のような形のドラゴンだ。
まあかなりの老齢でもあるのでそのお髭は真っ白で、あまり戦いには向かないような気もしたけどでもまあそれでもその権能は強力で。
その吐き出すブレス、
生まれたての魔獣クラスなら、いとも簡単に魔に還すこともできるのだった。
黒竜、ブラド。
暗黒竜、漆黒の竜、闇の福音。
通り名もたくさんあるブラドは、厄災竜としても名を轟かせている。
そのパワーは他の竜種を圧倒する。
存在するだけで地に嵐を巻き起こす、そんな漆黒のギア、重力を司るブラドそのものであるそんな存在の竜。
ブレス、
その権能、
攻撃力という意味だとレッドクリムゾンに軍配があがるけど、単純に強さで測るならブラドの方が上かもしれない。
竜種たちが暴れ回るうちに空を覆う魔獣たちは数を減らしていった。
流石にここまで?
そう思った時だった。
空に浮かぶ人影の悪魔が、ポッカリと大きく、その真っ赤な口を開いた。
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