第22話 報い。

 ギギィっとギルドの入り口の扉を開ける。

 もう毎度毎度だけどこの入り口ってちょっと硬め。

 ギィって音も、だんだん大きくなるような気がするけど気のせい?


 中に入ると今日はまだ人も少なくて。

 でもカウンターは占領されてる。

 数人の男性がたむろして、ミミリィさんが話してるところみたい。


 あたしはそのまま待合のテーブルの方へ行き、空いてる椅子に腰掛けた。

 まあね。ミミリィさんに用事があるわけでもないし。


「そういうわけで俺ら、命からがらなんとか帰還したって訳でさ」


「そうですか。あなた方がそんな状態ということはかなり危険なダンジョンだったというわけですね」


「ああ。俺らも普通に攻略できたのは三層までだったかな。そこより先は魔獣の質もやばかったぜ」


「でもよ、入り口から溢れる魔物をなんとかしなければと頑張ったんだぜ?」


「ああ、俺らにも正義感ってものがあるからさ、街に危険な魔獣や魔物が来ちまうのを防がなきゃ、ってな」


 ボロボロの装備だけど結構元気そうな冒険者の一行。

 あれは魔獣にやられた跡だよね。

 っていうかあいつらって……。


 ぼん、と大きめのリュックをカウンターにのせる男。

「とりあえずは倒した魔獣の魔石がある。これの換金と、今回の損失を保険で補填してもらいてえんだが」


「損失? ですか?」


「ああ。俺らはなんとかこうして帰ってこれたんだが、メンバーの一人が魔獣にやられちまってな。その分だ」


 はう。


「そうですか。それはそれは。でもあなたたち蛇蝎の牙はメンバー全員揃っているようですが……、どなたの分の補填になりますか?」


「はぁ? ふざけんじゃねえぞ!! お前もギルド職員なら俺らのメンバーくらい把握しておけっての!」


「ですから」


「カイだよカイ。新人のカイ。ここでパーティ申請してまだ一月も経たねえんだ。忘れたのか!?」


「……それでは、そのカイさんが魔獣に襲われ命を落としたのは間違い無い、と?」


「ああ。間違いねえよ」


「ちなみに、あなたたちは三層までは余裕で通過したのでしたよね?」


「そうさ。四層のアンデッドに手こずらなきゃカイのやつも無事だったろうに」


「そうですか。わかりました」


「わかりゃいいんだよわかりゃぁ」


「そうさ、とっとと保険金の手続きをしてもらおうか」


 居丈高いたけだかにミミリィさんに詰め寄る蛇蝎だかつの面々。


 背中だけしか見えてないけど、どんな表情をしているのか想像がつく。

 まあ、きっとここまでだろうけど。


「それはできません。それよりも、今の話を聞いて確信しました。あなた方はメンバーであるカイさんを囮として使いましたね?」


「はぁ? 何言ってんだ!?」

「そんな証拠が何処にあるっていうんだ!?」


「彼は現在ギルドの医局で保護しています。生きているんですよ?」


「なんだって!?」

「馬鹿な!」

「あの状態で助かるわけが」

「事情は彼からも聞いています。それと、彼の背中に塗布された魔集香のことも。あなた方にはもっときちんと話をお伺いしないといけないようですね」


 いつの間にか男たちの背後に集まってきたガタイの良いギルド職員が数人。

 ミミリィさんの目配せを合図に蛇蝎のメンバー全員をあっという間に捕縛した。


「ちくしょう!」

「放しやがれ!」


 暴れる蛇蝎らを取り押さえ、ギルド職員さんたちは建物の奥に彼らを連行して行った。


 よかった。

 きっと奴ら、余罪もいっぱいあるはずだ。

 カイ君も、今は魔物に襲われたトラウマで大変かもだけど、よくなるといいな。


「ふふ。マキナちゃんみてたのね」


「はい。お疲れ様ですミミリィさん」


「マキナちゃんのおかげよ。カイくんを助けてくれたから」


「よかったです。これで新人冒険者さんがあんなのの被害に遭わなくなれば良いんですけど」


「そうね。私たちももっと目を光らせなきゃね。ほんとありがとうマキナちゃん」

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