第21話 デートみたい。

 恥ずかしそうな顔を見せながらあたしが選んだ服を何着も着て見せてくれたノワ。

 ふふ。

 やっぱりかわいいなぁ。


 大人のノワもそれはそれはかっこよかったんだけど、少年猫耳になったノワは本当に天使のようにかわいい。

 こんなかわいい男の子がいていいのだろうか?

 そんなふうにも思ってしまうくらい。


 あたしはそんなノワのファッションショーを堪能し、良さげなのをいくつか購入してアイテムボックスに収納しておいた。

 ああもちろん一番似合ってると思ったカーキのジャケットとジーンズはそのまま着て帰ったけどね?


 その後は一緒に他の店とか散策しながら時間を潰した。


 お昼ご飯はちょっとおしゃれっぽいカフェでオムライスを食べて。

 あは、なんだかデートみたいでちょっと嬉しい。

 色々そうしてまわった後は公園のベンチで休憩。

 ちょっと作戦タイム? みたいのも取りたかったし。


 ここであたしはノワから、彼を襲った臨時パーティの面々の特徴を聞いておくことにした。

 アリバイ工作なのだろうか?

 いきなりいなくなっても不自然だという判断なのか、彼らはまだこの街ロムルスに滞在しているらしい。

 まあ確かに、ダンジョン探索に訪れた勇者一行が初日だけで姿を消したら何事かと不信がられるかもしれない。

 勇者ノワール自身が姿を見せなくとも、そのパーティメンバーがちょこちょこ現れれば、勇者自身もまだこの街に滞在しているのだろうと周囲には思わせることができるはず。


 ダンジョンに行って他国の王族勇者が帰らなかった、なんてことになったら国際問題にもなりかねない。

 そんなことがギルドに、いや、この国の王室にしれたら、下手したら王室騎士団まで駆り出して捜索するなんてことにもなりかねないよね。

 そういう危険を犯さないためにも勇者パーティは二、三日ダンジョンを探索してこの国を後にした。そういうアリバイ工作をしたいのかな? あたしはそう推測した。


 まあ的外れな推測の場合もあるけどそれでも幸いにして彼らパーティメンバーは今日はまだこの街にいる。

 それも夕方ギルドに顔を出す可能性が高いときたら、なんでもいいから理由をつけて彼らに接触しなければ、だよね。


 夕方ギルドに行くときはできればノワは連れて行かない方がいいかもしれない。

 万が一でもノワのことが彼らに知れるのは避けたいし。

 容姿は変わっているとはいえ、魔力紋を感知できる人がいたらバレる可能性もなきにしもあらずだ。


 だから。


「ごめんノワ。万が一にもあいつらにノワのことがバレるといけないし、宿屋で待っていてもらってもいいかなぁ?」


 朝の時点ではノワを一人にしてまた命を狙われたらとか不安だったけど、これで大体相手のこともわかってきた。

 立ち回るのはあたし一人でもいいかもだから。


「でも」


「あたし、ノワを危険な目に合わせたくないの」


 もしバレたら。また問答無用で襲われるかもしれない。

 あたしが守ればいいんだけど万が一ということもある。

 それはいや。


「うーん、それなら、僕、猫の姿に戻ろうか? あの姿になれば流石にあいつらも僕だって思わないよね?」


 え?


「ノワ、猫の姿になれるの?」


「うん。実はさっき試着室にいる間に試してみた。昨夜は初めてだったし無意識のうちだったから時間もかかったし苦しかったけど、今なら割と簡単に変化できるみたい」


 ああそれなら。

 それなら猫の姿になった上であたしのふところに入ってれば大丈夫? かなぁ?


 流石に相手の魔力紋を常に感じながら過ごしている人はいないはず。

 そんなことしてたら気が休まらないし。

 まさか黒猫子猫の姿のノワを見て、ノワール王子かもしれないなんて思う人は確かにいないよね?


 言うが早いか子猫の姿に変化するノワ。


「あは。あたし、子猫のノワも大好きだから嬉しいわ」


 そういうとあたしはノワの頭を撫でまわし、思いっきりハグをした。



⭐︎⭐︎⭐︎



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