第17話 獣人の少年。
夕飯を頂いた後。
なんだかすごく疲れちゃったあたしは早めにベッドに入る事にした。
ノワはというと。
ティファと一緒に用意した籠にクッションをひいた寝床を気に入ってもらえたようで。
その場所でしばらくクッションをふみふみしていたと思ったらいつの間にか丸くなっていた。
その仕草に微笑ましい気分になりながら、あたしはランタンを消してお布団に潜り込んだ。
夜が更けて。
なんだか顔のところでもふもふの毛玉な感触がして。
気がついたらノワがゴソゴソとあたしのお布団に潜り込もうとしていた。
あたしはそんなノワにすっごく嬉しくなって、その背中を撫で回した。
それでも別に嫌がるわけでもなく、逆に気持ち良さげにゴロゴロ言いながらお布団に潜っていくノワ。
あたしの胸の上によっこら乗った彼は、そのままあたしの上で丸くなった。
しばらくは両手で撫で回してその毛並みの柔らかさを堪能していたあたしだったけど、気がついたらいつの間にか寝入っていたようだ。
時々ふっと、胸の上の重みに気がついて。
寝がりを打つのをやめ、また眠る。
そんな夜。
「う〜、う〜」
そんな苦しそうなうめき声に、あたしは驚いて目を覚ました。
あたしの上に乗っていたはずの毛玉はどうやらあたしの上から落ちてしまった様子。
右手に感じた毛玉の手触り。
って、あれ?
なんだか、大きくない?
お布団も大きく盛り上がっている。
ベッドの隣。
あたしのとなりに何かいる!?
ばっと起き上がりお布団を剥ぐと。
そこには真っ黒な毛に覆われた、獣人の少年がいた。
えーーーー!!!
「う〜、う〜」
とそう苦しそうにしているその子。
はう。
状況的にこの子って、ノワだよね?
子猫のノワ。
でもどうして?
随分と汗をかいてぐっしょり濡れているその子に、あたしは部屋にあったタオルを集めかぶせて拭いてあげる。
身体中が黒い毛に覆われているから素肌は見えないけど、でも。
汗がいっぱい出ているのはわかる。
どうやら新陳代謝が加速している感じ?
急激な成長に、身体が軋んで痛いのかもしれない。
そう思ったあたし、せめて楽にならないかと回復魔法を唱えてみた。
「キュア・オール!」
全ての状態異常を回復させる呪文を唱え、手をかざす。
金色の粒子が彼の小さな体に吸い込まれるように浸透していく。
そして。
苦しそうだったノワの息遣いが治ったところで。
あたしは彼の体をもう一度拭いてあげてから、自分のアイテムボックスのインベントリからノワが着れそうな衣装を選び取り出して、よっこらと着せてあげた。
まあ女性向けのシャツだけど、しょうがないよね?
さあ、どうしようかとしばらく悩んで。
っていうかこの子って、魔獣が人化したって事?
それともまさか。
ベッドの上でそうしてしばらく考えていると、「うーん」と目を擦るノワ少年。
あう、起きたかな?
そう思ったあたしは、
「大丈夫?」
と、そう声をかけてみた。
その声に気がついたのか目を開けあたしを見たノワ少年、目を見開いて驚いて。
「ああ、すみません……」
と、顔を真っ赤にして項垂れてしまった。
って、ええ!?
なんで謝るの?
「どうして、なんであなたが謝るの?」
あたしも思わず大声を出してしまった。
まずい、こんな夜更けに。
そう思ってまず「シール!」と防音のための結界をはる。
騒ぎを聞きつけ宿の人が駆けつけてきても困るし。
あたしの声に恐縮したようにますます項垂れてしまったノワ少年。
っていうか、この子、人の言葉、わかるのね?
でもでも。
さっきまでは完全に子猫だったのに。
あたし、思いっきりこの子の身体中を弄って撫で回しちゃったのに。
ああ、どうしよう。
あたしのせい?
この子がこんなに真っ赤になってるのって。
「はう。ごめんなさい。あたし、あなたのことほんとに子猫だとお思って撫で回しちゃって……」
あうあう。もしかしたら思いっきりダメなことしちゃってた?
どうしよう。
「いえ、すみません。僕の方こそ。さっきまでは意識まで完全に子猫状態だったので……」
そう言うとまた真っ赤な茹蛸みたいになって項垂れるノワ。
っていうかこの子。
顔は、ちゃんと人間っぽくて。
ボブくらいな長さの黒髪に、けも耳、猫耳が生えている。
身体はもともと長毛種な黒猫だっただけあってふさふさな毛で覆われていたからあたし男の子の肝心な裸体は見てないよ? そんな、犯罪になりそうなことは流石にね?
うう。
ショタけも耳だなんて。
はう、もう思いっきり可愛いんですけど!
ああでも、さっきまでは完全に意識が子猫だったって言うってことは……?
「もしかして、あなた、今までのこと全部覚えてるの?」
「ええ、ごめんなさい」
はうあうあう。
って言うことは何?
あたし、この子の目の前で無防備に着替えてたし、なんならショーツ一枚になって身体拭いたりしたし。
って言うか胸に抱いてた時、あたしの胸をふみふみしてたよね子猫の時。
あああああああ。
思い出したら思いっきり恥ずかしくなって。
「あああああああああ」
あたし、両手で顔を覆ってそう叫ぶしかできなかった。
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