ねこまんま
硝水
第1話
またあんたか。
玄関先で足を揃えて座る三毛猫に入れ入れと手で合図をする。うゎんとひと鳴きした彼女は敷居を跨いでこちらへ来た。
食べ物を貰えないのです。
ああ、あすこの亭主はそういうやつだよ。ものをねだる猫が一番かわいいとて。
くれもしない人へねだるほど、私も馬鹿ではないですのに。
俺にはねだったことがあっただろうか。
あら、あなたは言葉がわかるもの。亭主にお代を出すよう言っているかしら。
いいよ、金なんか。持っていても仕方ない。
人なのに、お金を欲しがらないなんて変わってますのね。
あんた、俺がどうして言葉がわかるか考えたことはないのか。
うゎんとひと鳴きした俺はくるりと三和土の上に降り立ち、驚く彼女を見てケラケラ笑う。集会で見た顔だろう。
ねこまんま 硝水 @yata3desu
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