第10話
世界に二人だけしかいないのではないのだろうかという錯覚。
そんな永遠とも感じるような時間は――――――ただ唐突に打ち切られてしまう。
「きゃあ---------------------っ!」
どこからともなく聞こえてきた悲鳴、それは女の子の声のようだった。
声の聞こえてきた方角へと視線が向かう。橋の下を流れる水の向う先―――そこは町の一角に作られた自然公園。憩いの場ともいえる大きな公園。この飯坂橋じたいが公園の一角でもあるのだ。
『この反応は――――何故嫌な予感ばかりが当たるな…おそらく例の殺人鬼だよ』
忌々しげにレイが呟く。何故レイがそれを分かるかはわからない。ただその確信したような物言いを見る限りまずそうなのだろう。時刻はすでに夕暮れ時に差し掛かっている。
辺りに人の気配は全くなく、この公園は広くもしかすればその声を聞いたのは私たちだけかもしれない。この先に殺人鬼がいるそう思うと怖くて足が震えそうになる、私に戦う力なんてない。言ったところで足手まといにしかならないかもしれない。でも助けを求めていたであろうその悲鳴を無視することは私には出来なかった。
思い出されるのは先ほどの親友の言葉、『何かあったら叫ぶのよ、絶対駆けつけるから』それを思い出した私は走り出す。助けを求めているのだろうその少女の元へと。
『やはりこうなるか…だろうとは思っていたよ。君もまた優しすぎる、誰かを見捨てて自分だけが助かろうなんて思うわけもない。やはり君は『彼女』なんだな―――――私は何を言っていた? ちょっと待て一人で行くな。私はそっちに行くのが――――』
「待ってなんかいられないわ!私は先に行く!」
レイが何を言っているかなんて考えている暇はなかった。言葉を返して全速力で走っていく。
『全く私の話を聞いてはくれないか…やはり制限される――私が行くまでは無事でいてくれよ』
彼のその言葉の意味を理解しないままに。
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