第7話
小走りで学校へと急ぐ。その傍ら思い出すのは朝の両親とのやり取り。
「心配してくれるのはありがたいけど…逆に心配しすぎなのよね」
『おいおい何を言ってるんだね?』
ふとこぼれた言葉、誰に聞かせるつもりもなかったのだけどそれに反応をみせる奴がいた、レイだ。
『君を心配してくれて言った言葉だろう。そんな事を言っては罰が当たるぞ』
「ありがたいとは思ってるわよ」
当たり前のようについてきた彼は浮遊したまま私の横を並走している。その顔はいかにも呆れたという顔をしている。
『君を守りたいというご両親の気持ちは分かるだろう?いくら心配しても不安なんだよ。事が起きてからでは遅すぎる。心配の『しすぎ』なんてものは無いんだ。喪った後での悲しみの大きさを考えれば比べるまでもない』
急に声音が大きく変わった事に驚く。なんというか重味の籠った言葉のようでーーー。
「ちょっとどうしたのよレイ?」
『ん…いや何でもない。何を言い出したんだろうな私は』
問い返した私の言葉に答える言葉に先ほどの深刻さは無くなっている。というか自分自身でも戸惑っているような様子だ。
「貴方が言い出した事じゃない、私には解らないわよ。そういえば朝も少しおかしかったわよね。ニュースを見たあと黙り込んだりして」
ふと朝も少し様子が変だった事を思い出す。あの例のニュースをじっと見たあと暫く黙り込んで何か考えるような仕草をみせていたのだ。少し躊躇った後でようやく彼は口を開く。
『黙っていようかと思っていたのだがね。少し胸騒ぎがするんだ、嫌な予感というか…今さらでも遅くない、今日は学校を休んで家にいないか?』
「なに言ってるのよ、もうそろそろ学校じゃない。というか止めてよね。嫌な予感? まさかとは思うけど私が事件に巻き込まれるとでもいうの? へんなフラグを立てないでよ」
まさかという言葉に私は思わず反論してしまう。彼はそれに諦めたように肩をすくませてみせる。
『絶対と言える確信ではないよ。何となくと言った程度のものだから杞憂に終わるかもしれない。いや可能性としてもそちらが高い事だし…君がそういうならもう何も言うまい。…ちなみに君、『フラグ』なんて言い回しをするなんてやはり君も―――』
「あ―――うるさい! そんなことはどうでも良いでしょう!」
思いがけない反撃にあわてて言葉を遮る。たまにチクッとした反撃をしてくる彼は油断ならない。動揺する内心のなかでふと思い浮かんだ事があった。話を反らすためにも丁度良い、これはちょっとしたお願い事だ。
「そうね…もし、万が一の事だけど私が事件に巻き込まれるような事になったなら助けてくれるんでしょ、自称私のボディーガードさん?」
その突然の言葉に面食らったような様子を見せた彼はその後に―――。
『そうか、そうだったな。任せておけ、何と言っても私は君の│
私が初めて見る満面の笑みを浮かべて強く断言してくれたのだった。
ほんの少しほんの少しだけど高鳴ってしまった胸の音に呆れるくらいに戸惑った私は彼の少し変わった言い回しに気づくことは出来ない。
『そうだ、これを君に預けて置こう。誓いの証に…唯一残っている私の遺品だ。私にとってとても大切な品だ無くさないでくれよ』
証にと言われて渡されたのは小さな蒼い石のついたネックレス。
茶化しながらめ渡されたそれに私は全ての気を持ってかれてしまっていたのだ。
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