第2話
私と幽霊である彼との出会いは今から1ヶ月ほど前まで遡る。
その日の夕方に私は友達2人とある『噂』について話していた。
「ねぇ知ってる? 飯坂橋の噂 」
「知ってる知ってる『出る』って話でしょ」
友達の由香の話に英梨も乗っかる。私は知らなかったのだけどずいぶんと有名な噂のようだ。
なんでも夕暮れ時にその橋で幽霊の目撃例が多々あるとか。襲われるとかではなくほんとうに会うだけのようだ。
あまり興味の持てない私は適当に相槌をうっていたのだけど突然に私へと話が向けられる。
「そういえば明莉って飯坂橋が通学路だったよね? なんかあったりしないの?」
「えっそうだけど…何もないよ。私は霊感とか全くないし」
「えーっ」
この話に興味が持てない理由として私がその橋をいつも利用していることも挙げられる。
実際に通っている私が一度もそんな体験がないのだからガセじゃないかと思うのだ。
私の答えに対する落ち込みようが半端ない。その様子をみてある疑問が浮かんだ。
「なんか凄く気にしてるみたいだけど、怪談とかそんなに好きだったの?」
彼女達とは幼馴染みの関係だけどそんな話は聞いたことがない。
「いやそこまで好きじゃないよ」
返ってきたのは私の予想通りの答え。だったら何故と聞き返してみれば待ってましたとばかりに理由を教えてくれた。
「なんとその幽霊はすっごい美形のおにーさんらしいのです」
「えっそれだけ?」
思わず本音が溢れた、勿体ぶったわりには小もない理由すぎないだろうか。
「明莉ちゃん、反応薄すぎだよ。美男子だよ、しかも滅多にお目にかかれない程らしいよ。女子として無反応ってどうなの?」
私の反応が不満だったらしくゆかが頬を膨らませると苦情を言ってくる。
「そんな事を言われても…」
ほんとうに興味がない。そんな風に思っていたら黙って聞いていた英梨が仲裁に入ってきた。
「はいそこまで、諦めなよ由香。なんたって明莉は学園中から『氷姫』って呼ばれてるほどなのよ? 男なんかに興味が持てないのよ」
「そっか。確かにそうじゃないともう誰かと付き合ってるはずだもんね」
ただその言葉は私にとって認められるようなものではない。だけど由香はそれで納得してしまったようだ。
「氷姫」それは私の学園におけるアダ名だ。その名前の由来は私にとっては全く嬉しくないものなのだ。
自慢するつもりはないけど私は昔から凄くモテる。何度かモデルのスカウトも受けていた。この学園に入ってからも告白を何度も受けているのだけど私はその全てを断ってきた。
男嫌いとか同性愛というわけではなくただ単にこれと思う相手がいなかったからだ。これを誰かに言うと少女マンガの読みすぎとか言われたり僻まれたりするので誰にも言えないけど・・・。
ともかく、告白を全て断ったことと断る際の言い方(勘違いなどされないように簡潔にはっきり言ってきたのせい)である男子から「明かりではなく氷だ」と言われたのを切っ掛けに「氷姫」と呼ばれるようになってしまったのだ。
「ちょっとその呼び方はやめてよ」
「ごめんごめん。私らはちゃんと分かってるよあかりが実は少女マンガ大好きな乙女だってことは」
「うんうん、でも分かっててもお似合いだと思っちゃうの」
私の苦情にも笑って返されてしまう。こうなると分かっていても否定は言わずにいられない。何故なら私は全く納得なんてしてないのだから。
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