やがて彼女も『私』となる

虎太郎

第1話プロローグ

「そこの君!ちょっとお茶なんてどう?」


「いえ、結構です」


学校からの帰り道、繁華街近くを通りかかったところで若い男性が声をかけてくる。


どうやらナンパをされているみたい。


全く興味が無いので即座に断って横を通り過ぎようとする。その時に横目でキッと一睨みすることを忘れない。大抵の相手はこれで諦めてくれるのだけど。


「そんな事言わずにちょっとで良いから!」


今回の相手は中々しつこい。無視して足早に去ろうとしている私の手をとろうとまでしてくる。


「やめてください! しつこいですよ」


仕方なく足をとめると相手に向き直って文句を言ってやる。この時に初めて相手の顔をみた、中々の美形だ。


だからといって誘いを受けるつもりは全くないけど。


「そんな、お茶くらい良いじゃない」


「嫌だと言ってるじゃないですか」


笑顔を浮かべながら尚もを誘ってくる男性。そんな彼に私は何故か違和感を感じた。


これは既視感?


初めて会う相手なのに何故、そこまで考えたところでピンときた。


「…もしかしてレイ?」


「―――っ。なんのことかな?」


どうやら当たりのようだ。知らばくれようとしたようだけど、確かにあった間を私は見逃さない。


ジト目で私が見つめていると苦笑いになっていた彼はその場で首をガクッと落として動かなくなってしまった。


どうやら意識が朦朧しているみたい。普通なら慌てるところだけどその理由も私は知っている。とりあえず私の予想は当たっていたようだ。固まった彼を無視して歩きだす。


『ふむ、ずいぶんとつまらない反応じゃないかあかりよ』


 歩き出した私の名前を呼ぶ声がするした。いつの間にか私の横に現れたのは20代後半ほどの外人男性。ブロンドの髪に甘いマスク、俳優と遜色ないほどの美形だ。だがその服装はまるで中世の頃のような服装である。どう見ても普通の人とは思えない。


『無視かね? さすがに礼儀としてそれは失礼だと思うのだがね?』


無視して歩き続ける私に対して彼は散々な事を言ってくれる。今はまだ我慢。


しばらく歩きビル街の隙間を見つけた私はすぐさまその路地裏へ飛び込んだ。


「一体どういうつもりなの!!」


『おう、ようやく反応してくれたね。うれしいよ』


 人目がない場所まで来たところで今までためたイライラをぶつけるように彼を怒鳴りつける。私の文句を聞いても彼はどこ吹く風だ。


なぜ私が人目が付かない場所にくるまで我慢していたかって?


それはすべて目の前にいるこいつに起因する。


『無視するなんてひどいじゃないか?』


「あんな人通りの多い場所で一人で喋っていたらただの変な人じゃない!! 私はそんなの嫌よ!」


 改めて目の前いるこいつをみる。すると何故か彼を通してビルの壁が見えるのだ。よくみれば彼の体はどこも薄く透き通って向こう側の景色が見えている。


そう、こいつは幽霊なのだ。

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