第4話 『地獄の体験』 その1


 『不思議が池』に行ったふたりのゆうれいさんは、幸子さんから、地獄ツアーの話を聞いた。


 『幸子んとこの地獄は、私立わたくしりつの地獄です。昔は、結構怖かったのですが、最近になって、女王さまの、方針が変わり、『楽しいことがある地獄に。』『地獄の亡者にも、人権を』というキャンペーンになっています。だから、土日は、責め苦はお休みで、レストランに行ったり、遊園地で遊んだり、海辺でのんびりしたりできるし、カウンセリングも受けられます。趣味教室もあります。女王さまは、顔が広いのです。たとえば、普段の責め苦のプログラム中には、ピアノ教室があって、たまに、ベートーベンさんや女王さまが、恐怖のレッスンをしたりすることもありますが、これは、もう、すっごく恐ろしいんですが、でも休日のレッスンでは、同じベートーベンさんや女王さまが、とってもやさしくレッスンしてくれるとかもあったり、平兼盛さまによる歌の教室とか、那須与一さまによる弓矢レッスンとか、珍しいのもあります。


 成績が良かったり、女王さまに気に入られたりすると、『真の都』、まあ、平たく言えば、私立の天国ですが、に、入れる可能性もあります。


 『無限寮』という、地獄海に沿って、無限の長さがある寮があります。



 寮は一人部屋です。


 レクリエーションルームや、懺悔ルームもあります。


 あなたがたは、現世でうろついてるところをみると、あまり、楽しい人生ではなかったのかもしれないけど。たしか、すぐに地獄や天国には入れないゆうれいさんのために、ゆうれい学校って、ももさんの社長さんが開いてるって、聞いたことあるけどな。じつは、幸子とこにも、寂しいゆうれいさんのために、アルバイトをあっせんするシステムがあります。』


 『ももさんとは?』


 『死神さん。ただし、女王さまのライバル会社の地獄専属です。そこは、女王さまの地獄に匹敵する、やはり、私立の地獄です。まあ、善きライバルでもあり、この世では業界仲間だけどね。本来は、ババヌッキ社という食品会社よ。いまも続いてるよ。元は火星の会社なんだけどね。』


 『たしかに、それだ、ばばなんとか。とにかく、でかい会社がやってる学校だから、安心しろとは、言われたけど。そこまで来ると、はなしが、でかすぎだなあ。』


 『まね。でも、まあ、悪くはないよ。あそこは、『前衛地獄』って呼ばれるくらいだから。たとえば、宇宙船で太陽まで行って、太陽の中で、焼かれたり、木星のガスの底にある地面まで降りてする責め苦とかね。そこは、すごい圧力らしいよ。うちも、木星に出入口はあるけどね。だいだら王が、お花畑をつくってるのよお。まあ、でも、太陽の熱は、うちの地獄と変わらないらしいよ。あと、休日のパーティーとか、旅行とかは、すごく豪快みたいなんだ。なんせ、食品会社だし、食べるものは、すっごく美味しい。また、太陽系から出る旅行もあるんですって。すごいわね〰️〰️☺️。でもね。』


 『でも……… ぎえ。なんですかい、あねさん。』


 『やり過ぎだろ、って、うちの女王さまは言っています。うちは、もっと、現実的で、選択肢が広いの。』


 幸子さんは、お饅頭もお口も止まらない。



・・・・・・・・・・・・・・



              つづく


 

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『こどくなゆうれいさん』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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