第6話 湧きあがる憤り

 ここのところ、ユナの様子がおかしい。


 ある日、いつものように部屋でユナと勉強をしていると、

ユナが突然、

「お父さんが、…夜ね…エッチなこと…してくるの」

とハナに打ち明けてきた。


 母親が出て行ってしばらくすると、ユナは仕事を辞めた養父に、

毎日のように性の相手をさせられていたのだ。



 ユナの養父は、一見温和で優し気だが、アルコール中毒患者でもあった。

 外に出る都度、いい女を見かければ視姦していた。

 会社勤めをしていた頃は、交通機関の中で、捕まりそうもなければ、

見ず知らずの多数の女性に対して、痴漢行為をして愉しんできた。


 会社勤めを辞めた後は、小学6年生になったユナの全裸の写真や動画を売って、

生活費や酒代に当てていた。

 それだけではなかった。

 12歳のユナのことも、すでに犯していた。


 ユナは、用心深い養父の、

他人には見せないようにしている獣のような性欲によって、

人生に絶望していた。


          ◇ ◇ ◇


 ユナから話を聞き、様子がおかしかった原因がはっきりした。


 ハナは、腹の底から湧きあがる憤りを抑えられない。


 外面が良かったユナの養父は、ハナに道で会った時には笑顔で

「こんにちは」

などと声を掛けてきたが、ハナは美しい切れ長の目で、下から睨んだ。


 ハナは、ユナの養父を殺したいとさえ思った。

 ユナの養父の車に、タイヤがパンクするような仕掛けをしたいと思った。

 しかし、ユナが同乗したら、ユナまで死んでしまう。

 タイヤをパンクさせる作戦は、踏みとどめることにした。


 毎日、ユナの養父が突然消えることを、天の神様に祈った。



 ユボフ家の夕食時、ハナは母親に、

ユナの養父がユナにしていることについて打ち明けた。


 ハナの母親は一瞬絶句したが、

男親、しかも養父と、

幼少期からは想像もつかないほど魅力的になったユナが、

2人きりで夜を過ごすことは安全なのか、と懸念はしていた。


 そのような、恐ろしいことになっていたとは。

 近所の大人として、友達の親として、ユナちゃんを守らなければならない。


 中学3年生と小学6年生の2人の女の子。

 友達同士でどちらかの家に泊ってもおかしくはない年齢である。




 ピンポーン。


 「はい、ああ、ユボフさん、こんばんは。どうなさいました?」

 「これ、実家から届いたんですけど、蜜柑。ちょっと食べ切れなくて。

主人も私もハナも少食なもので。それで、おすそわけに」

 と、蜜柑が大量に入った紙袋を、ユナの養父に手渡した。


 「娘がユナちゃんのこと、大好きなんですよ。一緒に居ると、

とても楽しいって言うんです。ユナちゃんが泊まりに来てくれると、

娘が喜ぶんですけど。斜向かいですし。

もしよかったら、時々娘さんに泊まりに来て欲しいんですけど」

 「えっ?…逆にいいんですか?いやぁ、お世話になりますぅ。良かったな、ユナ」


 夜、自分を犯す時とはまるで別人になったこの人は、一体誰なんだろう。

 ユナは、黙っていた。


 この日以降、ユナはハナの家に時々泊まれるようになった。


          ◇ ◇ ◇


 ユナが泊まりに来る都度、可愛い寝顔と可愛い寝息に、ハナはほっこりした。

 ハナはユナと結ばれたい衝動も起きたが、こらえた。

 こらえていると、いつしか寝落ちしてしまうのだった。


 ユナは、養父にされるがままの性行為に、慣れてきてもいた。

 (もしも、同じようなことを、ハナちゃんがしてきたとしたら…)

 ハナにしてもらいたい気分になって、わざと喘いでみたりしたこともあった。

 (ハナちゃんは、エッチなことは、何もしてこないな)

 ユナにとって、ハナとのこの時間は、唯一、心から安らげるときであった。


          ◇ ◇ ◇


 ユナは自宅で寝る日は、相変わらず、全裸の写真撮影、自慰の動画撮影、

養父との性行為の動画撮影をされ続けた。

 写真はインターネット上で高く売れた。

 動画もアダルトビデオの会社に高く売れた。

 養父は、性行為により、日々の寂しさを紛らしていた。

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