第5話 出て行った母親

 ユナが小学5年生になり夏休みとなった。


 ハナは中学2年生になり、一緒に登校しなくなって2年目になるが、

相変わらずユナは、膝を抱えて道路の端に座ってハナの帰りを待っていた。


 いつしか道路で「ただいま」「おかえり」を言う仲になり、

その後はハナの部屋で、夕食時まで勉強をして過ごすことが多くなった。

 ハナはユナに、わからないところを丁寧に教えてあげていた。


 11歳のユナは、身長はそれほど高くなかったが、

胸が他の子よりも大きめになって目立ってきて、ブラジャーを着けるようになった。

 母親が行きつけの店で下着を一緒に買うので、小学生らしくない、

母親のブラジャーと同じようなレース柄で濃い色のものを着けているのだった。

 ユナの胸が日に日に大きくなってきたことは、誰の目から見ても明らかだった。


          ◇ ◇ ◇


 その年の冬、ユナの母親がついに2度目の離婚を決めた。

 母親は自分一人で生きてゆくと言って、離婚届に判を押してテーブルに置き、

家を出たきり音信不通となった。


 外面が良く、物腰の柔らかい養父が、

信用のおける人物だと判断した児童相談所は、親権は養父にあると認めた。

     

          ◇ ◇ ◇


 ハナは中学3年生、ユナは小学6年生になった。

 ハナは学業成績が優秀で、クラスで3位以内には入っていた。


 将来はユナと2人で暮らしたい。

 仕事をしてお金をたくさん稼ぎたい。

 一生お金に困らない生活をさせてあげたい。


 ハナはこの時から、ユナとの同棲を現実的に計画し始めた。

 偏差値の高い高校に入学し、大学に進学し、

 高収入が得られる安定した職種に就けば、

 ユナを、生涯、幸せにすることができる。

 毎日、ユナに触れ、天使のように可愛い笑顔を見たかった。

 ハナはユナを、真剣に愛し始めていた。

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