第3話 危機一髪

 ハナが小学5年生になり、ユナが小学2年生になったある夏の日。


 ユナの母親が逢引きをしている間、ユナはいつものように道路で絵を描いていた。


 ハナは高学年になったので、下校が遅くなったが、

いつもの可愛いユナの姿を道路に確認すると、

もうすでに家に帰ってきたような、

ホッとした気持ちになった。



 すると突然、幅広の紫色のスポーツカーが、猛スピードで道路に突っこんできた。


 ユナが轢かれてしまう!


 「危ない!」

 咄嗟に判断し、長身で細身のハナは全速力でユナめがけて走り、

ユナを抱き締めて、ユナの家の前に転がり、倒れ込んだ。


 紫色のスポーツカーは法定速度を大幅に違反して、

猛スピードでハナのランドセルにタイヤをこすりつけて道路を駆け抜け、左折した。

 


 「大丈夫だった?」

 ハナはすぐに、ユナを気遣った。

 ユナはポーっとして、事態をよく呑み込めていないようだった。


 フワァ、とユナの茶色のボブが揺れた。

 髪の毛、いい匂い…。

 幼い少女特有の髪の匂い。

 色白で、ぷっくりしたほっぺ。

 抱き締めたときの、柔らかい躰。

 ユナの魅力に、ハナの心臓は高鳴った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る