第107話 陽向とトキとミチル(2)
参道の端を歩く三人。足取りは軽くなっていた。三人の中では、随身門の出来事は、緊張と疲れから睡魔に襲われたということになっている。そのおかげなのか、気力、体力は朝以上に
拝殿へと繋がる参道を見渡すと、いたるところでユウナミの神の息吹を感じずにはいられなかった。
実菜穂がこの社で一番に感じたのは、
(ユウナミの神、どのような神様なのだろう。慈愛の神……アサナミの神とは違う雰囲気。ユウナミの神のイメージ。ひょっとして私の想像以上にユウナミの神は)
実菜穂は足下の玉砂利を見ていた目を上げると、目に映った姿に思わず子供じみた高い声を響かせた。
「あーっ!」
実菜穂が声を上げたときには、既に陽向も真奈美もその現れているものを見ていた。実菜穂だけがワンテンポ遅れて気がついた格好である。なんとも、間が抜けているシーンだ。
「陽向さん、あれは?もしかして」
真奈美は目を大きくしながらも冷静に陽向に確認をすると、陽向もウンウンと頷いている。
「陽向ちゃん。あれは狛犬だよね」
実菜穂が「わぁ~」と言う表情で目の前に現れたものを見ていた。
それを見つめる実菜穂は興味深く優しい顔をしていた。
陽向も同じように優しく無邪気な表情で眺めている。その陽向の影は、本当に明るく子供のような目をしていた。透明でまだ何色にも染まらない瞳を鴇色の景色が染めていた。
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