第99話 赤珊瑚と桃珊瑚の見た思い(17)
「水面の神、認めろ!」
桃瑚売命が、みなもの両肩を掴み、膝を腹部めがけて突き上げる。みなもは、清流の光を羽衣に纏わせると、羽衣は生き物のように桃瑚売命の膝を包み受け止めた。さらに勢いよくみなもを後方に運び出し、桃瑚売命との間合いをひろげた。
「そんな防戦一方では逃げられないわよ。まだ私に一撃も与えられてないのに、何が残っているというの?まだ痛めつけられたいの」
打つ手なしという感じで退いていく、みなもに対して一歩、一歩追い詰めるように桃瑚売命が回り込んでいく。羽衣の防御もできないほどに間合いを詰めたそのとき、みなもの瞳が群青色に輝きを放った。
桃瑚売命は詰め寄る身体を翻すと、迷うことなく退いて大きく間合いをとった。
(何よ?すごく嫌な予感がした。どうしたの?この奥に何か潜んでいる感じ?何をするつもり。異様な気の流れは)
みなもの周りに青いオーラが渦を巻いて集まる。はじめは、水色の明るい色であったが、徐々に青くなり最後には群青色のオーラが渦巻いていた。そのオーラがみなもを取り巻いたかと思うと、天地の区別がつかないほどに白く光輝き、この世界を震わせる呻り声が轟いた。
(まさか、これは……
桃瑚売命が見たのは巨大な龍であった。群青色に光り輝く龍。
その巨大な龍が地の方向から天に真っ直ぐ突き上がると、オーラと同じようにみなもを取り囲み、その巨大な身体をくねらせる。
稲妻のように群青色に輝きを放つ龍は鋭い眼光を桃瑚売命に向けている。
(アサナミの子である
「従神を出そうと、木偶には変わりはないわよ。ならば」
桃瑚売命は、心得たとばかりに地に手を着けると、桃色の珊瑚が次々と姿を現し、それが無数の太刀となり宙に浮かび辺りを覆い尽くしていく。さらに、巨大な太刀を出現させ、みなもの龍神を迎え撃つ体勢をとった。
巨大な龍神が呻りを上げ、この世界が狭いと言わんばかりに身体を揺らしゆったりと泳ぎ、みなもを頭に乗せる。
桃瑚売命が龍神を迎撃するべく、巨大な太刀に飛び乗ると周りに無数の太刀を従え、太刀の艦隊を編成していく。
「従神への対応はすでにできているのよ。水面の神、悪足掻きもここまでね」
太刀の中でも得意とする長巻を手にすると、切っ先をみなもに向ける。
みなもがゆっくりと右手を横に真っ直ぐにのばすと、それに応えて龍神の雄叫びが地を震わせ、雷鳴が鳴り響いた。
二柱の気迫がこの世界を二つに分けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます