帝国崩壊の時②
「上陸次第、盾で身を守れ!!」
戦闘をきって上陸するのは、盾兵だった。
自身の体を十分に守れる程の大きさの盾を前面に押し立てて浜辺に降り立つ。
「上陸させるなぁぁっ!!」
激しい砲撃に晒されながら、駆けつけてきた帝国兵たちが盾兵に取り付くが、
「開けぇッ!!」
盾兵が盾を斜めにずらし僅かに隙間を作ると、後続の歩兵が隙間から槍を突き出す。
取り付いた帝国兵は躱すすべなく槍の餌食となった。
「怯むなぁ!!ここで食い止めねば我らの敗北ぞ!!」
仲間が切り血を噴き上げて倒れて行く中、それでも帝都を守るべく帝国兵たちは眦を決して盾を取り払おうと必死に食らいつく。
「開けェッ!!」
迎え撃つアルフォンス兵は作業のごとく槍を突き出し帝国兵を屠っていくが、気迫に押し負けたのか或いは不運なのか数箇所で盾兵が盾を奪われてしまった。
その綻び目掛けて帝国兵が剣を振るい、盾兵を斬り伏せる。
「閉じさせるなぁッ!!」
せっかくこじ開けた穴を失うまいと帝国兵は執拗に攻撃を行うが、変わりの盾兵がその隙間を直ちに埋めることで損害の拡大を免れたのだった。
弛緩のない組織だった戦闘によりアルフォンス兵は、着実に前進していく。
「騎兵隊続け!!」
ヴェルナールは上陸した軽騎兵五百騎を纏めると、波打ち際を駆けて敵の側面へと回り込んだ。
「浜から駆逐してやれ」
「「「おうっ」」」
目の前の盾兵に手一杯だった帝国兵たちは、横合いからの突撃に対応出来るはずもなく面白いように狩られていく。
「退けぇぇっ!!」
これにはたまらず帝国軍は撤退を決断し、無数の血溜まりと屍を残して蜘蛛の子散らすように逃げ散った。
「緒戦は完封か」
砲撃による後方支援の存在に感謝しつつヴェルナールは、満足そうに言ったのだった。
◆❖◇◇❖◆
「忌まわしきプロテスタリーの連中に総本山の地は踏ませるな!!」
眩しいほどに煌めく白銀の甲冑に身を包んだ騎兵が、法皇聖座のサンタ・マリア大聖堂の前に集結していた。
次期法皇たるコルネリウスの言葉に騎士たちは一斉に石突を地面に打ち、音を立てた。
最大の支持者であり支持勢力であるティベリウスを、ひいてはカロリング帝国を失うまいとコルネリウスも必死だった。
「これは我らが国を、我らがカトリコスの同胞を守るための聖戦だ!!貴様らが命を落とすことになろうとも、その魂はミトラ神とともにある!!臆するな!!異端共を皆殺しにしろ!!」
コルネリウスは声の張り裂けんばかりに叫ぶと広場は騎士たちの歓声に包まれた。
狂信者たちは死をも恐れず、ただ信ずる教えのために槍を繰り出す。
狂気の集団がヴェルナールたちの前に立ちはだかろうとしていた。
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